ダービーはオーストラリアの日

興奮冷めやらぬダービーのレポートです。6月7日のエプサム競馬場はGⅠが2鞍でしたが、先にダービー Derby (GⅠ、3歳、1マイル4ハロン10ヤード)から行きましょう。馬場はオークス・デイと同じ good 。

事前に枠順で紹介したように16頭立て。やはり2000ギニー3着のオーストラリア Australia が11対8の1番人気に支持されていました。2着のキングマン Kingman は愛2000ギニーで雪辱を果たしたし、10着に終わったザ・グレイ・ギャッツビー The Grey Gatsby もフランスで巻き返したこともあり、今年の2000ギニーはレヴェルが高いという評価に落ち着いてきたこともあるでしょう。
その2000ギニーでは8着ながら去年のレーシング・ポスト・トロフィーを制したキングストン・ヒル Kingston Hill が15対2の2番人気。これも評価が高まっているダンテ・ステークスで1番人気ながら3着に終わったトゥルー・ストーリー True Story が8対1の3番人気で続きます。

逃げたのはアワ・チャンネル Our Channel 、これをピタリとマークするように4頭出しオブライエン厩舎の1頭キングフィッシャー Kingfisher が2番手。恰も本命馬のペースメーカーの様な形になります。オーストラリアは8~9番手の外目に待機し、相手と見られるキングストン・ヒルは先行2頭を見るように3番手と絶好の位置付け。
前2頭がやや離し気味にタテナム・コーナーを回ると、先ずキングストン・ヒルがスパートして先頭に立ちます。それも一瞬、馬なりのままペースを上げたオーストラリアが外から並び掛けると、あとは王者の貫録。気合を入れるためのムチが数発入りましたが、ほとんどキャンターでキングストン・ヒルに1馬身4分の1差を付ける完璧なダービー制覇をやってのけました。3馬身4分の1差が付いた3着には9番人気(20対1)のロムスダル Romsdal が入り、同じく20対1のアロッド Arod が4着、最低人気(100対1)レッド・ガリレオ Red Galileo が5着。
以下、3番人気のトゥルー・ストーリーは7着、その一つ前6着にはサンダウン・トライアルに勝った無敗馬ウエスタン・ヒム Western Hymn 。オブライエン厩舎でムーアが騎乗した4番人気(10対1)の一角ジェフリー・チョーサー Geoffrey Chaucer はレースを諦めた形の最下位で入線しています。

この勝利でエイダン・オブライエン師はダービー3連覇、キャメロット Camelot 、ルーラー・オブ・ザ・ワールド Ruler of the World に続くハットトリックを達成。師は“私が調教した最高の馬”とまで表現を高めて同馬を絶賛しました。
騎乗した息子のジョセフ・オブライエンは、キャメロットに続く2度目のダービー。彼も“私が乗った最高の馬”と口を揃えています。この二人がこれだけのことを言うのですから、オーストラリアの能力はファンが見る以上のものがあるのだと思います。いずれプロフィールを紹介しますが、実況アナが“ダービーを勝つために生まれてきたオーストラリア完勝!”と絶叫したように、父ダービー馬、母オークス馬という完璧なサラブレッドでもあります。
オーナーはクールモアですが、勝負服はクールモアの構成員の一人であるデリック・スミス氏のもの。何と2着キングストン・ヒルは、スミス氏の息子の勝負服で走っており、スミス父子のワン・ツー・フィニッシュでもあったのです。

改めてオーストラリアの戦績を振り返ると、2歳のデビュー戦はカラー競馬場の2着でしたが、直ぐに同じカラーで未勝利を脱出します。3戦目にレパーズタウン競馬場でBCジュヴェナイル・トライアル(GⅢ)に優勝。2歳時は無理をせずシーズンを終えると、3歳デビューがいきなり2000ギニーでの3着。僅か5戦目でのダービー制覇でした。
この圧勝にブックメーカーも敏感に反応、凱旋門賞のオッズは5対1とこの時期にしては極めて高いものが出されています。このまま無事に成長を続ければ、今年の凱旋門賞はオーストラリア中心に展開して行くでしょう。また彼の勝利によって、愈々2000ギニーの評価が高くなってもいます。

次はダービーの二つ前に行われたコロネーション・カップ Coronation Cup (GⅠ、4歳上、1マイル4ハロン10ヤード)。1頭が取り消して7頭立て。8歳になってなお衰えを知らぬシリュス・デ・ゼーグル Cirrus des Aigles が10対11の断然1番人気。同じくフランスから遠征してきたファーブル厩舎のGⅠ馬(去年のパリ大賞典)フリントシャー Flintshire が4対1の2番人気で続きます。

そして結果もその通り。3番人気(13対2)アンビヴァレント Ambivalent の逃げを4番手で追走したシリュス・デ・ゼーグルが、その直後5番手でマークしていたフリントシャーに2馬身差を付ける貫録勝ち。逃げたアンビヴァレントが2馬身4分の1差3着に粘り、人気通りの結果に落ち着きました。
しかしレース直後、勝馬に騎乗していたクリストフ・スミオンが下馬、すわ故障かと心配されましたが、大事には至らなかったようです。スミオンはゴール直後に馬が跛行しているのに気付いて素早く判断した由。簡易な検査が行われて問題なしとされましたが、詳しい検査を経て翌日結果が公表されることになっています。

コリーヌ・バランド=バルブ女史が管理するシリュス・デ・ゼーグルについては繰り返すことも無いでしょう。今期はドバイでジェンティルドンナに敗れた後、フランスに帰ってGⅠを連勝。今回は英国遠征でGⅠ3連勝を果たし、通算のGⅠは6勝目となりました。勝鞍だけなら何と21勝目に当たるのだそうですから驚き。せん馬のため凱旋門賞には出られませんが、次走はアスコットには行かずサン=クルー大賞典に向かう由。それは2着のフリントシャーも同じで、サン=クルーで両雄の再対決が見られそうです。

ところで昨日はフランス、シャンティー競馬場でもG戦が一鞍行われました。ポール・ド・ムーサック賞 Prix Paul de Moussac (GⅢ、3歳牡せん、1600メートル)、good の馬場に僅か5頭立て。

エプサムのダービーから2時間後に施行されたこのレース、7対10の1番人気に支持されたチャーム・スピリット Charm Spirit は、これまたニューマーケットの2000ギニーに遠征して5着に食い込んだ馬です。
人気のチャーム・スピリット、堂々の逃げ切り勝ちで、2着サライ Salai (41対10、2番人気)に4分の3馬身差を付けていました。更に4分の3馬身差3着にも3番人気(43対10)のアーミー・ブレティン Army Bulletin が入って人気通りの結果です。

フレディー・ヘッド厩舎、オリヴィエ・ペリエ騎乗のチャーム・スピリットは、去年のジャン・リュック=ラガルデール賞(GⅠ)の3着馬。今期はジェベル賞(GⅢ)に勝って英国遠征していたもの。彼もまた英2000ギニーの評価を高めるのに貢献した1頭となりました。

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