キャメロット2冠!

ダービーが終わりました。

今年はエリザベス女王のダイヤモンド・ジュビリーを祝う年。特別に設けられた4連休の初日に当たる土曜日、快晴のエプサム競馬場で第233回ダービー Derby (GⅠ、3歳、1マイル4ハロン10ヤード)が行われました。
ロイヤル・ブルーに身を包んだ女王陛下も満面に笑みを湛えて臨席され、競馬の祭典が始まります。
日本ダービーで「君が代」を歌ったのは福井敬氏でしたが、エプサムで「 God save the Queen 」 を披露したのは、キャサリン・ジェンキンス Katherine Jenkins さん。スタンドに手を振って歓声に応えます。

レースについては深入り不要でしょう。8対13の1番人気に支持された2000ギニー馬キャメロット Camerot が、見事期待に応えて圧勝。2冠を達成しました。

馬場は good to firm 。今年はフランスからの挑戦は無く、参加することに意義ありという馬も遠慮、僅かに9頭立ての舞台となりました。多頭数では避けられない道中の不利やアクシデントもほとんど無く、馬の能力が十二分に発揮されたダービーと言えるでしょう。

レースはオブライエン厩舎の2頭出しの1頭、アストロロジー Astrology が先手を奪って流れを作ります。ライアン・ムーアが騎乗、13対2の3番人気に推される存在で、単なる本命馬のペースメーカーではありません。本来の脚質である先行力で逃げ切る作戦です。
2番人気(9対2)ボンファイア Bonfire は中団、本命馬を任されたジョセフ・オブライエンは後から2番手で待機。馬群はスムースにタテナム・コーナーをカーヴし、直線へ。
2番手を追走したソート・ワージー Thought Worthy がアストロロジーに並び掛けますが、アストロロジーはズルズル後退する器ではありません。交わされるどころか逆にリードを広げて内ラチ一杯に逃げ込みを図ります。

しかし終始後方を進んだキャメロット、直線に入ると外からグイグイと加速し、アストロロジーに体を合わせるように並び掛けると、後はゴールまで一直線。2着以下に5馬身差を付ける圧勝でした。ゴール寸前でダンカン騎乗の無敗馬メイン・シークエンス Main Sequence (9対1、4番人気)が追い上げ、粘るアストロロジーを短頭差捉えてオブライエン厩舎のワン・ツーを阻止。4着は更に6馬身差が開いてソート・ワージー、更に2馬身でミックダーム Mickdaam の順。2番人気ボンファイアは距離が長かったか、6着に終りました。
ゴールしたジョセフ・オブライエンは冷静そのもの。2着を5馬身も離していながらガッツ・ポーズ一つするわけで無し。去年のデルザングレの派手なアクションとは正反対の反応でした。民族性の違いでしょうか。個人的には、競馬では冷静な態度の方が遥かに好ましいと思います。

キャメロットは解説するまでもなく、2歳時にレーシング・ポスト・トロフィーを圧勝。今期初戦の2000ギニーを後方から差し切って先ず1冠。そして無敗のまま2冠を達成してダービー馬に。未だ4戦という、日本では考えられないようなキャリアです。
今年の英国クラシックを総なめしたエイダン・オブライエン師にとっては、3度目のダービー制覇。2001年ガリレオ Galileo 、2002年ハイ・シャパラル High Chaparral と2連覇した後、今回のキャメロットまで10年を待たなければなりませんでした。それがダービーなのだ、と言えるでしょうか。

初制覇、19歳でダービー・ジョッキーとなったジョセフの競馬センスは驚嘆もの。人気の重圧を背負って、全てを直線だけに賭けた胆力は並みのものではないでしょう。
流石に感極まったオブライエン夫人、“I can’t believe. It’s Amazing ! ” と最初の感動を表現した後、先週末にレスター・ピゴットに会い、ジョセフへのアドバイス「決して慌てるな」を息子に伝えていたことを告白しています。チームワークの勝利でもありました。
キャメロットの父モンジュー Montjeu は残念ながら今年他界。2005年モティヴェイター Motivator 、2007年オーソライズド Authorized 、そして去年のプール・モア Poui Moi と4頭のダービー馬の父となりました。何という種馬でしょうか。

こうなれば「三冠」に期待がかかりますね。三冠馬は、1970年のニジンスキー以来出ていません。近年は長距離戦が嫌われることもあって挑戦する馬そのものが出現しない傾向がありますが、クールモア陣営はこれに乗り気な様子。総裁ジョン・マニエ氏も、「三冠は義務」とまで発言しています。
もちろん全ては馬次第ですが、ダイヤモンド・ジュビリーの2012年、ヒョッとしたら42年振りの三冠馬誕生が見られるかもしれません。

この日のエプサム、もう一鞍GⅠ戦が組まれています。ダービーの二つ前に行われたコロネーション・カップ Coronation Cup (GⅠ、4歳上、1マイル4ハロン10ヤード)。

6頭立ての1番人気(8対11)は、前年の覇者でこれまたオブライエン厩舎のセント・ニコラス・アビー St Nicholas Abbey です。鞍上はもちろんジョセフ・オブライエン。同馬の前走では、余りにも後方からの遅仕掛けでペースメーカーを捉えられなかった騎乗を批判されましたが、今回は文句なし。
完全なペースメーカー役のロビン・フッド Robin Hood の逃げを後方2番手で待機し(またも!)、直線に入ってから一気に追い上げて2着レッド・カドー Red Cadeaux に4馬身半差の楽勝。まるでダービーのリプレイを見ているようでした(ダービーの方が後でしたけどね)。3馬身4分の3差で、2番手で積極的に追走したセント・レジャー馬マスケッド・マーヴェル Masked Marvel が3着。
セント・ニコラス・アベイもまた、モンジュー産駒。オブライエン・デイ、モンジュー・デイのエプサムでした。
同馬はロイヤル・アスコットのプリンス・オブ・ウェールズ・ステークスに向かうでしょうが、最終目標はもちろん凱旋門賞でしょう。キャメロットに三冠の可能性がある以上、凱旋門での両馬の対決は回避されると思われます。

ところで土曜日はヘイドック・パーク競馬場でもG戦が2鞍行われています。
ジョン・オブ・ゴーント・ステークス John of Gaunt S (GⅢ、4歳上、7ハロン)として知られる短距離戦は、1頭取り消して7頭立て。馬場が乾いているため、散水が行われての good to firm の馬場。

10対11の1番人気に支持されたレッド・ジャズ Red Jazz が逃げましたが、最後方を進んだ2番人気(3対1)のパストラル・プレイヤー Pastoral Player が内ラチ沿いから外に出して抜け、2番手から早目先頭のマジェスティック・マイルズ Majestic Myles を1馬身半差捉えて優勝。更に1馬身4分の1差3着にはドンカスター・ロウヴァー Doncaster Rover が入り、レッド・ジャズは4着敗退。

ハギー・モリソン厩舎、ダリル・ホランド騎乗のパストラル・プレイヤーは、ジュライ・カップ覇者パストラル・パスート Pastoral Pursuits 産駒。ロイヤル・アスコットでは豪州の怪物ブラック・キャヴィア Black Caviar に戦いを挑む1頭になるでしょう。

続いてはピナクル・ステークス Pinnacle S (GⅢ、4歳上牝、1マイル3ハロン100ヤード)。2頭取り消しがあり、9頭立てで行われました。

この日はエプサムで観戦されたエリザベス女王の持ち馬セット・トゥー・ミュージック Set to Music が2対1の1番人気に支持されていました。パーク・ヒル・ステークスで2着した上がり馬ですね。

レースはデットーリ騎乗のカウラ― Khawlah が逃げましたが、直線でバテ手後退。替って2番手を進んだシメリング・サーフ Simmering Surf が抜け出しての優勝。女王陛下のセット・トゥ・ミュージックは後ろから3番手を進み、直線で外に持ち出して追い上げましたが4分の3馬身届かず2着。ダイヤモンド・ジュビリーを祝福するまでには至りませんでした。3着は更に半馬身でモリー・マローン Molly Malone 。

6番人気(9対1)で勝ったシメリング・サーフは、去年までウインクワース厩舎に所属していた5歳馬。師の引退によって現在のロジャー・ヴァリアン師が引き継ぎ、ネイル・カランが騎乗していました。

最後にもう一鞍、フランスはロンシャン競馬場で行われたパレ=ロワイアル賞 Prix Palais-Royal (GⅢ、3歳上、1400メートル)を紹介しておきましょう。

馬場は good 。15頭立ての多頭数でしたが、11対5の1番人気に支持されたムーンライト・クラウド Moonlight Cloud が、GⅠ勝ち(モーリス・ド・ギースト賞)のペナルティーも物ともせず、ソー・ロング・マルピック So Long Malpic に2馬身差を付けて圧勝しています。3着はハナ差でイソップス・ファーブル Aesop’s Fables 。
ここには吉田照也氏のノヴァ・ホーク Nova Hawk も出走していましたが、大外枠の不利にも拘わらず5着に入り健闘しています。

中団から瞬発力の違いを見せ付けたムーンライト・クラウドは、フレディー・ヘッド厩舎、ティエリー・ジャルネ騎乗で、これが7か月ぶりのシーズン初戦。ロイヤル・アスコットではダイヤモンド・ジュビリー・ステークスに出走予定で、ブラック・キャヴィアを負かす意気込みです。しかし今年の目標は、あくまでもドーヴィルのモーリス・ド・ギースト賞連覇にあるでしょう。

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1件の返信

  1. まとめtyaiました【キャメロット2冠!】

    ダービーが終わりました。今年はエリザベス女王のダイヤモンド・ジュビリーを祝う年。特別に設けられた4連休の初日に当たる土曜日、快晴のエプサム競馬場で第233回ダービー Derby…

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