おとぎ話のオークス
昨日エプサム・ダウンズで行われたオークス(GⅠ、3歳牝、1マイル4ハロン10ヤード)の結果が入ってきました。英スポーツ誌の見出しは“Fairy-Tale Ending” ですね。まさに「おとぎ話」のようなオークス。
混戦を反映して出走頭数は15頭。最終登録を済ませた全馬が出走し、7対2の1番人気にはミュジドラ・ステークスに勝った無敗のエイヴィエイト Aviate が推されていました。
以下の人気は、アイルランドから遠征してきたボルジャー厩舎のアクダリーナ Akdarena 、1000ギニー7着のルムーシュ Rumoush 、冬場の本命だったタイムピース Timepiece (エイヴィエイトと同じセシル厩舎)と続きます。
レースはアクダリーナの逃げで始まり、マリー・ド・メディチ Marie De Medici とガートルード・ベル Gertrude Bell が並んで2番手を追走する展開。本命エイヴィエイトは3頭並んだ4番手の内で先行馬をマークして進みます。
ラフなレースとなった直線、終始後方を進んだ3頭が抜け出してきました。外へ振りながらムルタ騎乗のリメンバー・ウェン Remember When が先頭に立った瞬間、外からダーカン騎乗の大穴(25対1)ミーズナー Meeznah が並びかけます。
この2頭で決まったと思われた時、文字通り最後尾でチャンスを伺っていたスノー・フェアリー Snow Fairy が隙間を突いて縫うように最内に切れ込み、ゴール寸前でミーズナーを首差捉えて優勝。2馬身遅れて3着にリメンバー・ウェンが流れ込みました。
その後はやや離れ、3着から4馬身でルムーシュ、先行したガートルード・ベルが5着という順。1番人気のエイヴィエイトは直線での不利もあって7着敗退です。
スノー・フェアリーが一気に内を突いたときにルムーシュは明らかに前をカットされましたが、審議にはなりませんでした。勝った馬も負けた馬も、ほとんどが直線でのゴチャゴチャで何らかの不利を蒙っていますから、特に結果を左右するような妨害は無かったと判断されたのでしょう。
勝ったスノー・フェアリーはエド・ダンロップ厩舎の管理馬。ダンロップ師は2004年のウイジャ・ボード Ouija Board に続くオークス2勝目です。
また勝利騎手は3度のチャンピオン・ジョッキーに輝いているライアン・ムーア。不思議なことにムーア騎手にとっては、26歳にしてこれがクラシック・レース初制覇となります。オークスは3度目の騎乗にして初勝利。
それにしてはガッツ・ポーズなど一切なく、クールそのもの。うん、カッコイイぞ。
勝ったスノー・フェアリーは16日前にグッドウッドのリステッド戦(ハイト・オブ・ファッション・ステークス、10ハロン)に勝ったばかり。オーナーはクリスティーナ・パチーノさんという女性で、前走の優勝賞金をそっくり追加登録料(20万ポンド)に使って最後の最後でオークスに間に合わせたのです。
テレビ・ドラマの台詞を引用すれば、正に前走の賞金を「活き金」として使ったわけで、勝馬の名前の通り「おとぎ話のオークス」を実現させました。
管理するダンロップ師、“ナンも言えねぇ。アメイジング!!” と言いつつも、自分はオーナーの意向に従っただけと謙虚。それでも6年前の感動を再現して喜びは隠せないでしょう。
スノー・フェアリーは2歳時から数えてこれが8戦目ですが、騎乗したジョッキーは何と7人目。前走のリステッド戦ではエイハーンが騎乗し、オークスと全く同じように最後方一気の追い込みを決めていました。
実績の割にはオークスで9対1と比較的人気があったのは、このレース内容が注目されていたからでしょうか。
さて金曜日のエプサムは、もう1鞍注目のGⅠ戦が組まれています。コロネーション・カップ(GⅠ、4歳上、1マイル4ハロン10ヤード)。
10頭の登録からクローワンス Clowance が取り消して9頭立て。
5対6と2倍を切る1番人気に支持されたのは、去年のダービー2着でオブライエン厩舎が送り込んできた古馬のエース、フェイム・アンド・グローリー Fame And Glory 。対するは去年のオークス馬サリスカ Sariska が5対2で続きます。
また去年のコロネーション2着でGⅠの常連古豪ユームゼイン Youmzain が8対1で3番人気、去年のパリ大賞典に勝ったカヴァリーマン Cavalryman は9対1の4番人気。
本命のフェイム・アンド・グローリーはスタートで出遅れましたが、同厩のペースメーカーであるディクシー・ミュージック Dixie Music がハナに立つ構えを見せると、ムルタ騎手は直ぐに2番手に付け、ジュークボックス・ジャリー Jukebox Jury と並んで逃げ馬を追走します。
今シーズン4戦目となるフェイム・アンド・グローリーは積極的、直線入り口で早くも先頭に立つと、そのまま一気に押し切ってしまいました。
4番手に控えて進んだサリスカが一旦は追い上げて先頭に並びかけましたが、フェイム・アンド・グローリーは二の脚を使って引き離し、サリスカは1馬身半及ばず2着。3着には1馬身4分の1遅れてハイ・ヒールド High Heeled が好走し、ユームゼイン4着、最後は前が塞がったカヴァリーマンが5着。
エイダン・オブライエン厩舎は、コロネーション・カップはここ6年で4勝という強さ。2005年のイェーツ Yeats 、2007年のスコーピオン Scorpion 、2008年のソルジャー・オブ・フォーチュン Soldier Of Fortune に続く快挙となります。
鞍上のジョニー・ムルタはソルジャー・オブ・フォーチュンに続いて2勝目。
この勝利でフェイム・アンド・グローリーの凱旋門賞のオッズは6対1に上がっています。買うなら今でしょうかね。
この日の第1レースにもパターン・レースが組まれていました。第1回ダービー勝馬の名前を冠したダイオメド・ステークス(GⅢ、3歳上、1マイル114ヤード)。
9頭立ての1番人気(11対4)はペニテント Penitent でしたが、勝ったのは11対1の伏兵ブッシュマン Bushman 。先行して抜け出すという安定したレース内容でした。2着は首差でアレクサンドロス Alexandros が入り、半馬身差3着にマベイト Mabait という結果。
ペニテントは7着に敗退しました。
勝ったブッシュマンはデーヴィッド・シムコック厩舎、ウイリアム・ビューイック騎乗の6歳馬。6歳ながら体が弱くて出走回数の少なかった馬。ここにきて体調も回復し、活躍はこれからでしょう。今シーズンはウインザーでのリステッド戦に続く2連勝です。
調教師、騎手ともダイオメド・ステークスは初制覇。
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