巨匠ビエロフラーヴェク
23日のプロムスはホスト・オケ、BBC交響楽団による演奏会。桂冠指揮者で前任の音楽監督ビエロフラーヴェク登場です。
7月23日 ≪Prom 7≫
タヴァナー/Gnosis (BBC委嘱 世界初演)
バルトーク/ヴァイオリン協奏曲第2番
~休憩~
ショスタコーヴィチ/交響曲第10番
BBC交響楽団
指揮/イルジー・ビエロフラーヴェク Jiri Belohlavek
ヴァイオリン/イザベル・ファウスト Isabelle Faust
メゾ・ソプラノ/セーラ・コナリー Sarah Connolly
アルト・フルート/マイケル・コックス Michael Cox
最初に演奏されたのは、去年の11月12日に死去した英国を代表する作曲家ジョン・タヴァナーの新作。BBCの委嘱で作曲されましたが、その初演を待たずにタヴァナーが亡くなってしまったという曰くつきの新作です。
言わばタヴァナーの遺作ですが、今年のプロムスでは他にもう1曲の最後の作品が取り上げられます。それは8月4日にタリス・スコラーズが歌うレクイエム・フラグメンツという合唱作で、タヴァナーは他にもラスト・ナイトでも取り上げられることになっていますね。
タヴァナーについては公式ホームページを参照あれ。
23日に初演された「ノーシス」は、ギリシャ語で「知覚」とか「知識」の意味。15分程度の作品で、メゾ、アルトフレート、弦とティンパニのために書かれました。初演で歌うコナリーに献呈されています。
コナリーと言えば先年グラインドボーンで歌ったヘンデルの「ジュリオ・チェーザレ」のタイトル・ロールが素晴らしく、私もすっかり虜になってDVDを買ってしまいました。
作品はマーラー讃でもあり、曲の最後にモーツァルトのピアノ協奏曲17番K453の終楽章のテーマが唐突に引用されてビックリします。既にチェスター・ミュージックから出版が予定されていますので、いずれ譜面で確認することが出来るでしょう↓
http://www.musicsalesclassical.com/composer/work/1567/49451
2曲目はバルトークがファシズムの脅威の元で作曲したヴァイオリン協奏曲。今年のプロムスのテーマにも叶った一品です。
独奏するドイツの女流ヴァイオリニストのファウストは、バルトークで一躍有名になった人。そのデビュー録音となったバルトークのソナタ集はハルモニア・ムンディ盤で、ナクソスのNMLで自由に聴けるのが有難い所。バルトークの協奏曲も2曲とも録音していて、これもNMLで試聴可能ですネ。
ビエロフラーヴェクの素晴らしい伴奏もあって、集中力と緊張感に満ちた名演だったと思います。
アンコールはバッハの無伴奏パルティータ第2番からサラバンド。ストラディヴァリウス1740年製の「スリーピング・ビューティー」の音色を楽しむというより、彼女の精神性の強さを共有する時間。
最後はビエロフラーヴェクの指揮を100パーセント楽しむ交響曲。彼はN響にも何度か客演しましたが、私には若い頃から日フィルを度々指揮した巨匠として懐かしい存在。そのマエストロ・サロンにも何度も登場し、飾らない人柄に魅了されたものです。
未だ駆け出しの頃はホテルに泊まる余裕も無く、大好物の福神漬けを毎日食べていたというエピソードには笑いました。BBC首席に就任する前は暇で、自宅にある池の鯉にエサをあげてから出勤(当時はプラハ・フィルハーモニアを組織していた)するのだとか、現在の彼からは想像できないほど身近に感ずるマエストロ。
スコアの読み方についての教示もありましたが、私は今でも参考にさせて貰っています。
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