ブラビンス指揮のBBC響

8月最初のプロムスは、名フィルの常任指揮者として日本の音楽ファンにも近しいマエストロ、マーティン・ブラビンスがBBC響を振るプログラム。英国作品集でもあり、今年のテーマ「第一次世界大戦勃発100年」記念の一環でもあります。

8月1日 ≪Prom 20≫
ガーニー Gurney/War Elegy
サリー・ビーミッシュ Sally Beamish/The Singing
     ~休憩~
ウォルトン/交響曲第1番
 BBC交響楽団
 指揮/マーティン・ブラビンス Martyn Brabbins
 アコーディオン/ジェームス・クラッブ James Crabb

最初に演奏されたアイヴァー・ガーニー Ivor Gurney (1890-1937)は、日本ではほとんど知られていない英国の作曲家。作品は第一次大戦で亡くなった人々への哀歌ですが、作曲者自身も戦争に従軍し、フランスで毒ガスを吸って帰国。47歳で死去しましたが、毒ガスの後遺症から回復することは無かったそうです。一時は自殺も仄めかしていたそうな。
正に今年のプロムスを象徴する作品で、演奏時間は12分ほど。ショパンの葬送行進曲に似たメロディーが登場します。その経緯を知って聴くと、胸に迫ってくるものが感じられました。

次のサリー・ビーミッシュは、1956年生まれの女性作曲家。プロフィールを一々書くよりもこちらを見た方が適切。 

http://www.sallybeamish.com/

今回のプロムスではヴァイオリン協奏曲がロンドン初演される予定でしたが、運悪く独奏する筈だったヴァイオリニストのアンソニー・マーウッドが急病で降板。直前になって曲目が変更されるというアクシデントがありました。
替って取り上げられた The Singing は、アコーディオン協奏曲という珍しいジャンルの作品。急な交代劇に応えられたのは、指揮者もソリストも世界初演のメンバーだったから。作品についてはビーミッシュ自身の解説を読むことが出来ます。

http://www.sallybeamish.com/pid/417/info.html

内容はスコットランド民謡に基づいたもので、全体は3楽章から成り、夫々6・10・6分の22分ほど。第2楽章と第3楽章はアタッカで続けて演奏されます。特に第2楽章は民謡風なアコーディオンのソロで始まり、決して難しい内容ではありません。
急遽呼ばれた独奏者は、オーストラリアのアコーディオン奏者。流石に新作の初演を任されるだけに、驚異的な技巧が聴きもの。アンコールにはラモー作曲の「ミューズたちのの会話」(クラヴサン曲集第3組曲第8曲)が演奏されましたが、アコーディオンからこれだけ多彩な音楽が曳き出されるのに一驚。

最後のウォルトンも、今年のプロムスで多数取り上げられる作曲家。先にヒンデミット変奏曲が演奏されましたが、ウォルトンの代表作を纏めて聴ける良いチャンスです。
第1交響曲は、全曲演奏に先立って最初の3楽章がロンドン響によって紹介されましたが、全曲を初演したのがBBC交響楽団でした。その意味でも最も権威ある演奏と言えるでしょう。

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