負けてもタグルーダ
ヨーク競馬場のイボア開催、昨日は二日目で2鞍のG戦が行われました。雨は降らなかったものの馬場は good を維持、何とかスピードを重視する馬にも克服できる状態でした。
二日目のG戦は何れも牝馬が主役で、最初は2歳馬によるラウザー・ステークス Lowther S (GⅡ、2歳牝、6ハロン)。1頭が取り消して9頭立て。ロイヤル・アスコットで輝いた馬たちが参戦してレヴェルの高い一戦。
クィーン・メアリー・ステークス(GⅡ)に勝ったアンセム・アレクサンダー Anthem Alexander とアルバニー・ステークス(GⅢ)を制したカーソリー・グランス Cursory Glance の対決が注目されましたが、15対8の1番人気に支持されたのはクィーン・メアリーでは2着だったティッギー・ウィッギー Tiggy Wiggy 。そのあと前走ニューバリーのスーパー・スプリント(一般戦)で2着以下を6馬身もブッ千切ったスピードが評価されていました。
アンセム・アレクサンダーが5対2で2番人気、カーソリー・グランスは11対4の3番人気で続きます。言わば3強対決。
実際レースもその通りで、今回が6ハロン初挑戦だったティッギー・ウィッギーが前走のスピードを証明し、今回も見事逃げ切って期待に応えています。1馬身半差でカーソリー・グランスが2着、更に半馬身差でアンセム・アレクサンダー3着と人気通りの結末。勝時計1分8秒90はコース・レコードを更新していたのですから文句のつけようもありません。
リチャード・ハノン厩舎、リチャード・ヒューズ騎乗のティッギ―・ウィッギーは、これで7戦5勝2着2回。当初は翌日のナンソープ・ステークスで古馬に挑戦するプランも浮上していたほどですから、来年の1000ギニーには目もくれずに短距離路線を邁進することになるでしょう。やはりGⅠのタイトルだけは手に入れたいところで、チーヴリー・パーク・ステークスからアベイ・ド・ロンシャン賞というローテーションでしょうか。
さてもう一鞍は無敗の3歳牝馬タグルーダ Taghrooda か゜登場するヨークシャー・オークス Yorkshire Oaks (GⅠ、3歳上牝、1マイル4ハロン)。当初は3歳限定戦でしたが、現在は古馬にも開放されており、今年は3歳馬4頭に古馬3頭という7頭立て。
去年のオークス馬タレント Talent 、同じく2着で去年のこのレースで2着しているヴィーナス・ド・ミロ Venus de Milo も出走してきましたが、1対5と圧倒的な1番人気に支持されたのは、もちろん今年のオークス馬で既にキングジョージでも古馬も牡馬も破っているタグルーダ。勝てるかより、如何に勝つかが見所でしょう。
レースは、今年のオークスも愛オークスも3着で3番人気(14対1)のヴォリューム Volume の逃げで始まりましたが、最後方に付けていた2頭、大本命タグルーダと2番人気(8対1)のタピストリー Tapestry の一騎打ち。タサデイ Tasaday を交わし、ヴィーナス・ド・ミロも捉えて先頭に立ったタグルーダでしたが、満を持していたライアン・ムーア騎乗のタピストリーが残り1ハロンで並び掛けると、あと50ヤードで遂にタグルーダに半馬身差を付ける逆転劇です。
この2頭が3着タサデイ以下に7馬身もの大差を付けていたのですから、如何に2頭が強かったかということでもありました。この叩き合いでムーア騎手はムチ過剰使用のため4日間の騎乗停止処分を受けています。
タグルーダに初黒星を付けたタピストリーは、エイダン・オブライエン厩舎の管理馬で、ジョセフが体重の関係からムーアに替っていたもの(ジョセフはヴィーナス・ド・ミロ騎乗)。本来オブライエン厩舎の3歳牝馬では最も期待されていた馬でしたが、1000ギニーは17頭立ての最下位と惨敗。オブライエン師は未熟だった同馬を出走させたことが自分の誤りだと認めていました。
そのあとアスコットのコロネーション・ステークスが12頭立ての6着、そして前走愛オークスでは、レース前のアクシデントから焦れ込んだ上に致命的な鞍ヅレ(落馬しなかったのが不思議な位だったとか)を生じたにも拘らずブレスレット Bracelet の2着と、確実に成長してきた存在です。
オブライエン師によれば、タピストリーが本領を発揮できるのはあくまでも良馬場が条件。フランス(凱旋門賞)に向かうにしても、アメリカ(ブリーダーズ・カップ)を目指すにしても、馬場状態を判断してのことになるようです。取り敢えず凱旋門賞には10対1のオッズが出されました。
一方、敗れたタグルーダ陣営は敗因を上げていません。ハナガン騎手は完璧な騎乗だったし、展開も理想的。ただ勝った相手が強かったの一言に尽きます。もちろん敗戦は残念ですが、凱旋門賞に向かう路線は予定通りとのこと。オッズは8対1と少し下がったものの、中心の一角であることに変りはありません。
いずれにしても今年は牡・牝共に3歳馬のレヴェルが高いようです。凱旋門賞は何が勝つにしても3歳馬、という予感を覚えるヨークの結果でした。
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