芝のBCを目指して

今週のアメリカ競馬はスーパー・サタデーで大変な騒ぎでしたが、日曜日も余波が残っていました。昨日は3つの競馬場で4鞍のG戦、ここからBCというケースは少ないと思いますが、順に紹介して行きましょう。

最初はベルモント・パーク競馬場で行われた2歳の芝戦2鞍。いずれも去年は10月初めに組まれていましたが、若干前倒しのローテーションです。先ずミス・グリロ・ステークス Miss Grillo S (芝GⅢ、2歳牝、8.5ハロン)は、firm の馬場に1頭が取り消して11頭立て。出走馬の中でステークスに勝った馬は唯1頭、それも20対1と評価は高くありませんでしたから、混戦の一言でしょう。そんな中で6対5の1番人気に支持されたのは、サラトガのデビュー戦を3馬身4分の1差で勝ったばかりのタミー・ザ・トルピード Tammy the Torpedo という馬。同じ場父子、別厩舎のグレイウォールズ Greywalls とカプリングでの1番人気です。
本命馬のペースメーカーのような役割となったグレイウォールズが逃げ、タミー・ザ・トルピードは4~5番手辺り。抑えきれない勢いで2番手を追走していた4番人気(7対2)のレディー・イライ Lady Eli が外から前を捉えると、同じく3番手から伸びた10番人気(50対1)のマーガレット・レイ Margaret Reay に3馬身差を付けて快勝。1馬身4分の1差3着に人気のタミー・ザ・トルピードが3着。
チャド・ブラウン厩舎(本命馬と4着に来たパルティザン・ポリティクス Partisan Politics も同厩)、イラッド・オルティス騎乗のレディー・イライも、サラトガの芝コースで新馬勝ちしたばかりの馬。これで2戦2勝となります。

続いては牡馬によるピルグリム・ステークス Pilgrim S (芝GⅢ、2歳、8.5ハロン)。9頭が出走し、前走ウィズ・アンティシペーション・ステークス(芝GⅡ)を含めて2戦2勝のスタータップ・ネイション Startup Nation が1対2の断然1番人気。
6番人気(28対1)のヴィジョン・パーフェクト Vision Perfect が逃げ、スタータップ・ネイションは後方2番手からの追い込み策。直線、懸命に粘るヴィジョン・パーフェクトを捉えたのは、6番手から伸びた2番人気(5対1)のインペリア Imperia 。逃げ馬に1馬身差を付けていました。更に1馬身で4番人気(7対1)のオファリング・プラン Offering Plan が3着に入り、スタータップ・ネイションは追い上げたものの4着まで。
キアラン・マクローリン厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のインペリアは、出走馬中唯一の未勝利馬。それでも2番人気に支持されていたのは、デビュー戦で追い込みながら首差負けだった内容の良さ、ゴドルフィンの馬、母がGⅠ馬という血統の良さから。これで2戦1勝2着1回となり、堂々とBCジュヴェナイル・ターフに挑むことが出来ます。

ベルモントは以上で、G戦には余り縁のないレミントン・パーク競馬場に飛びましょう。去年からGⅢに格上げされたオクラホマ・ダービー Oklahoma Derby (GⅢ、3歳、9ハロン)。この競馬場で行われる唯一のG戦ですね。fast の馬場に14頭が揃い、全馬の最終オッズは不明ですが、相手関係からファウンテン・オブ・ユース・ステークス(GⅡ)勝馬でダービーにも出走(18着)したワイルドキャット・レッド Wildcat Red がイーヴンの1番人気だったようです。
80対1の伏兵ルイース・フラワー Louies Flower の逃げを2番手でマークしたワイルドキャット・レッドでしたが、先ず4番手から徐々に進出してきた45対1のベイ・オブ・ビスケイ Bay of Biscay に、続いて中団から追い込む5対1のトニト・エム Tonito M. にも交わされて3着に終わりました。優勝はトニト・エム、2馬身4分の3差でベイ・オブ・ビスケイが2着、更に2馬身半差で本命馬という着順でした。逃げたルイース・フラワーが4着。
ジェリー・ホーレンドルファー厩舎、ラファエル・ベハラノ騎乗のトニト・エムは、2歳時に現地のGⅠに勝ったプエルト・リコのスター・ホース。ケンタッキー・ダービーを目指してアメリカに転じたものの、ホーレンドルファー師のアドバイスで無理はせず、ここまでジックリ調整してきた素質馬。前走ロス・アラミトス・マイル(一般ステークス)3着を含めて5連敗中でしたが、漸く念願のアメリカG戦初勝利を達成しました。

最後にサンタ・アニタ競馬場のジョン・ヘンリー・ターフ・チャンピオンシップ John Henry Turf Championship (芝GⅡ、3歳上、10ハロン)。創設時はオーク・トゥリー・インヴィテーショナル、続いてクレメント・L・ヒルシュ・メモリアル、そして現在のレース名へと改名されてきた一戦で、1994年に廃止となったジョン・ヘンリー・ハンデと混同しやすいレース名。ヒルシュ・メモリアル時代まではGⅠ戦でしたが、現在のレース名になってからはGⅡに降格されるという複雑な経緯を持つ芝戦でもあります。
firm の馬場に1頭が取り消して9頭立て。前走デル・マー・ハンデ(芝GⅡ)を最後方からの差し切りで圧勝したビッグ・ジョン・ビー Big John B が4対5の1番人気。9頭中6頭がデル・マー・ハンデ出走組ということもあり、ここは勝負付けが付いているという評価でしょうか。
レースは2番人気(6対1)でデル・マー組ではないビッグ・キック Big Kick が逃げ、デル・マー3着だった5番人気(7対1)ブライト・ソート Bright Thought がピタリと2番手に付け、2頭が後続を大きく引き離す展開。人気のビック・ジョン・ビーは最後方から末脚勝負に賭けます。第3コーナーで逃げ馬を捉えたブライト・ソートが先頭で直線に入ると、最後方の本命馬と後方2番手の4番人気(7対1)フィネガンス・ウェイク Finnegans Wake が鋭く追い上げましたが、先手必勝のブライト・ソートがフィネガンス・ウェイクに4分の3馬身差を付ける逆転劇。ビッグ・ジョン・ビーは1馬身半及ばず3着で、些か後ろから行き過ぎた印象です。
本命馬と同じフィリップ・ダマト厩舎、タイラー・ベイズ騎乗のブライト・ソートは、父がハットトリックということで日本にも関係の深い5歳馬。勝鞍は去年3月のサン・ルイ・レイ・ステークス(芝GⅡ)以来ですが、その時は1マイル半の世界記録(2分22秒72)で勝っており、G戦は2勝目となります。7連敗に終止符を打っての快勝。ビッグ・ジョン・ビーは既に前走の勝利でBCターフへの出走権を得ており、ダマト厩舎としては2枚看板でBCを目指すことになりそうです。

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