10月4日のアメリカ競馬(3)ケンタッキー編

昨日のアメリカ競馬、一番厄介なのがキーンランド競馬場でした。何しろ短期開催にG戦が山ほど組まれ、土曜日は一日5鞍の混雑ぶりで、どうしても雑な回想記になってしまいます。

最初はセレクト・ステークス Select S (芝GⅢ、3歳上、5.5ハロン)。去年までウッドフォード・ステークス Woodford S として行われていたレースで、good の芝コースに1頭が取り消して10頭立て。久々の実戦ながら去年ヨーロッパを沸かせたノー・ネイ・ネヴァー No Nay Never が2対1の1番人気。
スタートからスプリング・トゥー・ザ・スカイ Spring to the Sky とハナ争いを演じた本命馬、漸く相手を競り潰して先頭に立つと、外から迫る最低人気(56対1)モンゴル・ブル Mogol Bull を半馬身抑えて優勝。中を割ろうとした3番人気(9対2)シャープ・センセーション Sharp Sensation が首差の3着に入りました。
ウェスリー・ワード厩舎、マイク・スミス騎乗のノー・ネイ・ネヴァーは、去年ここキーンランドのポリトラックでデビュー勝ちした馬。そのあとヨーロッパに遠征して英国のノーフォーク・ステークス(GⅡ)、フランスのモルニー賞(GⅠ)を制してヨーロッパでも馴染のスプリンター。帰国後は今年3月にスウェール・ステークス(GⅡ)で2着して以来の休み明けでしたが、スピードは健在でした。シバの実績には文句無いノー・ネイ・ネヴァーですが、陣営はダートにも問題ないと見ており、どうやらBCではスプリントに挑戦する計画のようです。

続いてはサラブレッド・クラブ・オブ・アメリカ・ステークス Thoroughbred Club of America S (GⅡ、3歳上牝、6ハロン)。こちらは勝馬にBCスプリントの優先出走権が与えられる一戦で、ノー・ネイ・ネヴァーのライヴァルとなる馬が参戦してきます。2頭が取り消して6頭立て、サラトガでプライオレス・ステークス(GⅡ)に勝ったストーンスタティック Stonestatic がイーヴンの1番人気。
2番人気(3対1)のアール・フリー・ロール R Free Roll が逃げ、ストーンスタティックは2番手追走。前半5番手から持ったまま一気に3番手に上がった4番人気(5対1)のレイ・コート Leigh Court が前2頭を外から捉えると、直線は独走。5番人気(6対1)のサザン・ハネー Southern Honey に3馬身差を付ける圧勝でした。ジョッキーも“強いのはこいつだ”と言わんばかりに馬を指さすパフォーマンス。4分の3馬身差でストーンスタティックは3着まで。
ジョシー・キャロール厩舎、ゲーリー・ブーランジェ騎乗のレイ・コートは、カナダを代表するスプリンター。ダートは未だこれが3走目だそうですが、デビュー戦もダートコースでの勝利でした。カナダではステークスに4勝しており、前走は芝コースのシーウェイ・ステークス(カナダGⅢ)。一つ前のノー・ネイ・ネヴァー共々、芝もダートも問題ない1頭としてBCスプリントを目指します。

キーンランド三つ目のG戦は、BC対象では無いもののGⅠのファースト・レディー・ステークス First Lady S (芝GⅠ、3歳上牝、8ハロン)。9頭が出走し、前走ボールストン・スパ・ステークス(芝GⅡ)は6着に敗れたものの、その前にサラトガのド・ラ・ローズ・ステークスに勝っているフィリンビ Filimbi が5対2の1番人気。
レースはイスタンフォード Istanford が逃げ、フィリンビは後方2番手から末脚に賭けます。しかし2番手を追走した2番人気(7対2)のデイアットザスパ Dayatthespa が直線で抜けると、2着以下に1馬身4分の1差を付ける圧勝。熾烈な2着争いには4頭が並び、去年の勝馬で3番人気(5対1)のベター・ラッキー Better Lucky が首差で2着、本命フィリンビも頭差3着まで追い上げていました。
チャド・ブラウン厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のデイアットザスパは、去年のこのレースの2着馬。ベター・ラッキーに雪辱を果たしました。今期は3戦2勝、前走サラトガの一般ステークスに続く2連勝ですが、一昨年(3歳時)同じキーンランドで既にQEⅡチャレンジ・カップも制しており、GⅠは2勝目となります。

次のディクシアナ・ブリーダーズ・フューチュリティー Dixiana Breeders’ Futurity (GⅠ、2歳、8.5ハロン)もBCジュヴェナイルへの優先出走権が掛かる一戦。12頭が揃い、新馬勝ちの内容が抜群だったカーペ・ディアム Carpe Diem が2対1の1番人気。
この新星、評判通りの内容で、逃げる4番人気(7対1)コンケスト・ツナミ Conquest Tsunami を早目に捉えると、直線は独走。7番人気(17対1)のミスター・ズィー Mr. Z に6馬身4分の1差を付ける圧巻の内容でBCへの切符を手にしました。3着の3番人気(4対1)ボールド・コンケスト Bold Conquest までも5馬身4分の3差が付いた圧倒的なパフォーマンスでした。
トッド・プレッチャー厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のカーペ・ディアムは、サラトガの新馬戦(5.5ハロン)を1馬身半差ながら追った所無しの圧勝。BCでもこのパフォーマンスを披露すれば、文句なく2歳チャンピオンに君臨するのではないでしょうか。

そしてこの日最後のG戦が、シャドウェル・ターフ・マイル Shadwell Turf Mile (芝GⅠ、3歳上、8ハロン)。もちろんBCマイルの対象戦で、総賞金100万ドルは、キーンランド史上初めてのことだそうです。8頭が出走し、疝痛の手術後最初のGⅠ戦となる王者ワイズ・ダン Wise Dan が4対5で断然の1番人気。
そのワイズ・ダン、スタートでやや出遅れ、不安が過ります。4番人気(10対1)のシルヴァー・マックス Silver Max が逃げ、向正面では後方3番手まで押し上げたワイズ・ダン、6番手で直線に向き、漸くエンジンが掛かると後は2年連続年度代表馬の貫録、ブービー人気(19対1)グランド・アーチ Grand Arch を外から1馬身差し切って完全復調をアピールしました。首差で4番人気(10対1)のサイヤード Sayaad が3着。
チャールズ・ロプレスティ厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のワイズ・ダン、GⅠはこれが11勝目となり、このレースも2勝目。去年のシャドウェルは雨のためにポリトラック・コースに変わり、シルヴァー・マックスの2着でした。前走サラトガのバーナード・バルーク(芝GⅡ)はハナ差の辛勝でしたが、あれは術後明けの調整途上。今回のGⅠ勝利で、3年連続年度代表馬の座を射止めることが出来るか。

なお、ヴェラスケス騎手はファースト・レディーからシャドウェルまでGⅠ戦3連勝。正にヴェラスケス・デイでもありました。

 

 

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