アンドレ・ファーブル師、4度目の仏ダービー

昨日の日曜日、府中競馬場でドゥラメンテが2冠を達成した同じ日、フランスのシャンティー競馬場でも仏ダービーが行われました。正式なレース名はジョッケ=クラブ賞 Prix Jockey Club (GⅠ、3歳牡牝、2100メートル)。この日はG戦が5鞍組まれ、ダービーは第4レース、三つ目のG戦として行われましたが、最初にクラシック・レポートから始めましょう。

既に枠順で全出走馬を取り上げましたが、取り消しも無く14頭が参戦してきました。馬場は good to soft 、日本なら重馬場感覚でしょうが、馬にとっては最高のコンディションだったと思われます。
注目の1番人気は、大外から二つ目の13番枠を引いたニュー・ベイ New Bay でした。16対5、前走仏2000ギニー2着が高評価を受けたのでしょう。続いてはカラクタール Karaktar の33対10、ノアイユ賞の勝馬でアガ・カーンの所有ですね。無敗でラ・フォース賞を制したシルヴァーウェイヴ Silverwave が3番人気(43対10)で続き、3強対決の様相。

11番人気(40対1)の伏兵カフーアンヌ Kahouanne が逃げましたが、思い切って後方2番手に控えたニュー・ベイが残り100メートルで先頭に立つと、中団の外から追い込む仏2000ギニーの本命で6着に敗れていたハイランド・リール Highland Reel に1馬身半差を付けて快勝、外枠を克服すると共に1番人気に応えました。更に1馬身4分の3差でギッシュウ賞馬で5番人気(79対10)のウォー・ディスパッチ War Dispatch が3着に入り、カラクタールは8着、シルヴァーウェイヴも9着に終わっています。
新しいスター、ニュー・ベイは、アンドレ・ファーブル師の管理馬で、師は1997年パントル・セレーブル Peintre Celebre 、2010年ロぺ・デ・ヴェーガ Lope De Vega 、2013年のインテロ Intello に続き4度目の仏ダービー制覇となりました。騎乗したのは、何と去年フランス障害界でチャンピオン・ジョッキーに輝いた弱冠21歳のヴィンセント・シェミノー君。パリ大障害と仏ダービーという極めて珍しい2冠のタイトルを獲得しています。オーナーのハーリッド・アブダッラー氏は、意外にもこれが仏ダービー初制覇。

東京優駿が終了した直後、ヨーロッパのブックメーカーは直ぐに反応してドゥラメンテの凱旋門賞オッズを10対1に挙げてトレーヴ Treve の2番人気にリストアップしましたが、仏ダービーの結果を受け、ニュー・ベイには8対1のオッズを提示。この時点で2番人気ニュー・ベイ、3番人気ドゥラメンテとなっています。
ハーリット・アブダッラー氏は既に凱旋門賞を4勝(ダンシング・ブレーヴ、レインボウ・クェスト、レイル・リンク、ワークフォース)しており、1マイル半の距離にも不安の無いニュー・ベイで5度目の凱旋門を目指すことになるでしょう。
一方、名誉挽回で2着に入ったハイランド・リールは、久々にジョセフ・オブライエンが腕を見せた1頭。こちらは愛ダービー、エクリプス・ステークス等を視野に入れ始めたようです。グレンイーグルス Gleneagles のダービー参戦に可能性を残したオブライエン師、先のその先を見据えているようでした。

以上でダービーを終え、残る4鞍はレース順に見ていきましょう。短報という内容になるかも知れませんが・・・。

最初は第1レースのグロ=シェーヌ賞 Prix du Gros-Chene (GⅡ、3歳上、1000メートル)。11頭が出走し、英国からの遠征馬で前走デューク・オブ・ヨーク・ステークスは逃げて5着に終わったムスミール Muthmir が8対5の1番人気。やはり短距離は英国馬という評価でしょう。
4頭がハナを争う速い流れ、中団に付けたムスミールと、後方から外を追い込んだ2番人気(9対2)のキャットコール Catcall が並んだ所がゴール。長い写真判定となりましたが、結局ムスミールがキャットコールを短頭差抑えて人気通りの決着となりました。1馬身4分の1差で7番人気(201対10)のスピリット・クォーツ Spirit Quarts が3着。

ウイリアム・ハッガス厩舎、ポール・ハナガン騎乗のムスミールは、字戦は2度目の挑戦で初勝利。4歳まではハンデキャップ・クラスで活躍してきましたが、今後はG戦の常連になりそうな勢い。ロイヤル・アスコットのキングズ・スタンド・ステークス(GⅠ)に6対1のオッズが出されています。なお騎乗したハナガンは、全日ヘイドック・パーク競馬場で一日4勝を達成したばかり。絶好調が続いているようです。

第2レース、この日二つ目のG戦は3歳牝馬の長距離戦、ロヨーモン賞 Prix de Royaumont (GⅢ、3歳牝、2400メートル)。仏オークスというよりは、秋のヴェルメイユから凱旋門へと羽ばたきたい馬の争いでしょうか。9頭が出走し、今期デビューで3戦2勝、2連勝中のカタニーヤ Kataniya が9対5の1番人気。
スタートから主導権を奪ったカタニーヤ、そのまま中団から追い込む8番人気(204対10)シー・カリージ Sea Calisi を首差凌いでの逃げ切り勝ちです。1馬身半差で2番手を追走していた6番人気(14対1)のエーム・ブルー Ame Bleue が3着。

アラン・ド・ロワイアー=デュプレ厩舎、クリストフ・スミオン騎乗のカタニーヤは、名前から判るようにアガ・カーン所有の奥手タイプ。3歳デビュー戦はシャンティーの1900メートルで2着、続くメゾン=ラフィットの2400メートルで初勝利を挙げ、前走ロンシャンのリステッド戦(セーヌ賞、2200メートル)も連勝。クラシック戦線は横目に見て、目標は秋でしょうか。いや仏オークス挑戦、という線もありそうな気配。

第3レースにハンデ戦を挟み、第4レースが冒頭に報告した仏ダービー。その直後に行われたのが、残念仏1000ギニー的な性格のサンドリンガム賞 Prix de Sandringham (GⅡ、3歳牝、1600メートル)です。4頭が出走し、その仏1000ギニーで3着したメキシカン・ゴールド Mexican Gold が3対5の圧倒的1番人気。ファーブル厩舎でアブダッラー所有のコンビで、ダービー優勝の余勢を駆りたいところ。
逃げたのは4番人気(77対10)のラ・ベルマ La Berma 。大本命メキシカン・ゴールドが中団で喘ぐ中、快調に飛ばしたラ・ベルマが逃げ切るかと思われましたが、最後方を進んだ3番人気(13対2)のアンパッサブル Impassable の末脚が爆発、逃げ馬を4分の3差捉える逆転劇でした。半馬身差で2番手を進んだ2番人気(53対10)のナイト・オブ・ライト Night of Light が3着に入り、メキシカン・ゴールドは4着敗退。結果論を言えば、この日のG戦5鞍で本命で、勝てなかった唯一の馬になってしまいました。

続いて行われたこの日最後のG戦は、歴戦の古馬によるシャンティー大賞典 Grand Prix de Chantilly (GⅡ、4歳上、2400メートル)。出走馬は5頭でしたが、最低人気(73対10)のスピリットジム Spiritjim でも単勝8.3倍という混戦の中、去年コンセイユ・ド・パリ(GⅡ)を制しているマナテー Manatee が6対4の1番人気。
3番人気(49対10)のガルディーニ Guardini が逃げ、4番人気(54対10)の英国馬エージェント・マーフィー Agent Murphy が2番手。これをマナテーとスピリットジムが並んで追走し、2番人気(9対5)のプリンス・ジブラルタール Prince Gibraltar が最後方で追い駆ける展開。結果はマナテーがプリンス・ジブラルタールの追い込みを4分の3差抑えて人気に応え、1馬身4分の3差でエージェント・マーフィーが3着でした。

マナテーを管理するアンドレ・ファーブル師は、一つ前のサンドリンガム賞は本命メキシカン・ゴールドで敗れたものの、メインの仏ダービーに続いてG戦ダブル達成。ミケール・バルザロナが騎乗していました。
マナテーは昨シーズをコンセイユ・ド・パリの勝利で終え、前走今期初戦のデドーヴィル賞(GⅢ)は休み明けもあって4着。この馬も、やはり充実する4歳の秋を迎える凱旋門賞での一発に期するのではないでしょうか。

 

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