ファーブル師、凱旋門に第3の矢
日曜日もヨーロッパではパターン・レースが行われました。アイルランドとフランスから。
先ずはカラー競馬場のキルボイ・エステート・ステークス Kilboy Estate S (GⅡ、3歳上牝、1マイル1ハロン)。馬場は引き続き good to firm で、8頭が出走してきました。
5対4の1番人気に支持されたのは、前走ロイヤル・アスコットのデューク・オブ・ケンブリッジ・ステークス(GⅡ)で3着したダンク Dank 。注目すべきは、英国のサー・マイケル・スタウト厩舎が送りこんできたという点でしょう。スタウト師がアイルランド遠征に踏み切るのは、ほとんどがGⅠ戦。ここ5年で8頭しか参戦しておらず、この前は2011年の9月のことでした。
この点を考えれば、陣営には余程の自信と熱意があってのことと見做されて当然のことでした。
そして期待通り、主戦ライアン・ムーアを背にしたダンクは3番手に待機、残り1ハロンで仕掛けると、2番手から早目に先頭に立ったアルーフ Aloof を並ぶ間も無く交わし、後方から追い込むオブライエン厩舎のセイ Say を1馬身4分の3差抑えて見事期待に応えました。2馬身4分の1差でカポナータ Caponata が3着。
このレースを英国調教馬が制したのは史上初。スタウトは馬を完璧に仕上げてレースに臨む方針の調教師で、4歳のダンクは未だこれが9戦目。これまでGⅢのタイトルはありましたが、初のGⅡ勝利。
陣営では愈々GⅠにチャレンジということで、アーリントンのビヴァリー・D・ステークスを視野に入れているようです。
続いてフランスのメゾン=ラフィット競馬場に飛びましょう。ここもGⅡ戦が2鞍です。
先ずは2歳初のGⅡとなるロベール・パパン賞 Prix Robert Papin (GⅡ、2歳牡牝、1100メートル)。9頭が出走し、デビューから2連勝中のヴォルダ Vorda が17対10の1番人気に支持されていました。
逃げたのは、イタリアから参戦してきたオマティカーヤ Omaticaya 。デビューから3連勝した後イタリアのGⅢで2着したスピード馬です。後続馬から伸びてきたのは、本命のヴォルダ1頭。未だ余裕を残しながらオマティカーヤに1馬身半差を付ける快勝です。短首差でボア賞(GⅢ)勝馬の2番人気(5対1)ヴェドゥー Vedeux が3着。
イギリスから挑戦したエクストーショニスト Extortionist (9着)、アンビアンス Ambiance (6着)、アンティシペイティッド Anticipated (5着)、レディー・シャンティー Lady Chantilly (8着)はいずれも敗退しました。
勝馬を管理するのはフィリップ・ソゴーブ師、グレゴリー・ブノア騎乗。シャンティーの新馬に勝った後メゾン=ラフィットのリステッド戦に勝利、これで無傷の3連勝となります。去年の勝馬レックレス・アバンダン Reckless Abandon は次走モルニー賞(GⅠ)を制しましたが、ヴォルダ陣営も同じ道を歩む意向です。
続いてユージェーヌ=アダム賞 Prix Eugene Adam (GⅡ、3歳、2000メートル)。9頭が参戦しましたが、5対2の1番人気に支持されたバックフィート Buckwheat は3頭を出走させたアンドレ・ファーブル厩舎の1頭。これが未だ3戦目の新星で、前走未勝利馬ながらシャンティーのリステッド戦を制して注目される1頭です。
しかし、バックフィートは7着と期待を裏切ります。それでも勝ったのは、最後方から鋭く追い込んだ5番人気(102対10)のトリプル・スレット Triple Threat 。2着も追い込み馬で4番人気のピロート Pilote で、2頭の着差は2馬身差でした。この2頭、終わって見れば共にファーブル厩舎の所属で、師のワン・ツー・フィニッシュです。4分の3馬身差で3番人気(3対1)のダルワリ Dalwari (ギッシュ賞勝馬、仏ダービー9着)が3着。2番人気(14対5)で仏ダービー5着のシカルプール Shikarpour は5着でした。
ファーブルの3頭、本命馬にはマクシム・グィヨン、勝馬にはピエール・シャルル・ブードーが騎乗、2着にはオリヴィエ・ペリエが乗っていました。ファーブル師、何とこのレースは14勝目という得意なレースです。勝ったトリプル・スレットは、3歳初戦でラ・フォース賞に勝ち、前走ギッシュ賞はダルワリの3着だった馬。
末脚の鮮やかさから、陣営では凱旋門賞挑戦を決めた模様です。ファーブル厩舎には既にパリ大賞典のフリントシャー Flintshire 、当面はマイル路線を進むものの凱旋門の可能性を捨てていない仏ダービー馬インテロ Intello がおり、トリプル・スレットは言わば師にとって第3の矢とも言える存在です。今日のレースのように、複数頭を出走させた陣営で最も好成績を挙げるのは最も期待していない馬、というケースは多々あるものです。
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