アヴニール・セルタン、二冠達成

昨日はフランスのクラシック最後となるディアーヌ賞 Prix de Diane (GⅠ、3歳牝、2100メートル)、通称フランス・オークスがシャンティー競馬場で行われました。この日は伝統的にレディース・デイでもあり、帽子のファッションが話題になる日曜日でもあります。
日本やアメリカでは父の日ということになっていますが、フランスではどうなんでしょう? やはりレディース・デイと言った方がフランスらしいかも、ね。
この日のシャンティーは good の馬場。G戦は3鞍でしたが、最初に行われたのがディアーヌ賞です。

枠順でも紹介したように、今年は3強対決のムード。英仏1000ギニー馬の対決でもあり、無敗馬2頭の対決という話題もありました。そんな中でイーヴンの1番人気に支持されたのは、3戦無敗でクレオパトラ賞(GⅢ)を制したアガ・カーン所有のシャムカラ Shamkala 。クラシック馬よりも距離の実績があること、仏オークス7勝模しているアガ・カーンの馬という事実の方に期待感があったのでしょう。
これに次いでは同じく無敗で、地元の仏1000ギニーを制したアヴニール・セルタン Avenir Certain が31対10の2番人気。英国に遠征してニューマーケットの1000ギニーに勝って凱旋したミス・フランス Miss France はやや離され、6対1の3番人気でした。

スタートが良かったのは仏1000ギニー4着で4番人気(10対1)のバウィーナ Bawina でしたが、直ぐにミス・フランスのペースメーカー(厩舎は違えどオーナーが同じ)ローカール・ヒーロー Local Hero がこれを交わしてペースを作ります。ミス・フランスは中団に付け、シャムカラはその直後、アヴニール・セルタンはライヴァルを見るように後方で待機します。
直線、ローカル・ヒーローが役目を終えで後退するとき、内から抜けようとしていたミス・フランスと軽く接触するアクシデント。シャムカラも脚を伸ばしましたが、外を衝いて一気に伸びるアヴニール・セルタンの瞬発力は断然、混戦の2着争いに1馬身差を付けて二冠達成です。写真判定の結果2着には伏兵(34対1、8番人気)アムール・ア・パパ Amour a Papa が食い込み、短首差で7番人気(25対1、仏1000ギニー3着)のエクセランス Xcellence が3着。
シャムカラは更に短頭差の4着に終わり、ミス・フランスは半馬身差で5着。シャムカラには馬場が速過ぎたのが敗因、ミス・フランスは勝負所での接触が響いたと思われます。アクシデントが自身のペースメーカーだったのは皮肉でした。

アヴニール・セルタンを管理するジャン=クロード・ルジェ師は、2009年のスタチェリータ Stacelita 、2012年のヴァリラ Valyra に続き6年間で仏オークスは3勝目。騎乗したグレゴリー・ブノワ騎手はこのレース初勝利です。無敗で2冠を達成、去年のトレーヴ Treve を連想させますが、当然ながらブックメーカーは素早く反応して凱旋門賞に16対1のオッズを出しました。この時点での本命は7対2のトレーヴ。そのトレーヴは今週のロイヤル・アスコットに登場する予定で、勝てばキングジョージ、負ければグレードを落として調整というニュースが伝わっています。
ロジェ師はアヴニール・セルタンの今後については言明を避け、2400メートルの距離適性が明らかになるまでは凱旋門賞挑戦は白紙とのこと。大一番には最も怖い3歳牝馬勢に新たな脅威が生まれたと見るべきでしょう。

続いてはリス賞 Prix du Lys (GⅢ、3歳牡せん、2400メートル)。仏ダービーより長い距離、次のパリ大賞典へのトライアルでしょう。9頭が出走し、1勝馬でG戦初挑戦ながら前走サン=クルーの2400メートルに勝ったグレアリング Glaring が2対1の1番人気。

レースは2番人気(33対10)に支持されたガルディーニ Guardini の逃げ切り勝ち。半馬身差2着には3番人気(43対10)で2戦無敗だったテレテクスト Teletext が2着、首差でノーズ・プライズ Norse Prize が3着に入り、更に首差でグレアリングは4着。勝馬からは1馬身以内に4頭が入る混戦でした。展開次第では着順が入れ替わりそうな結果。
ジャン=ピエール・カルヴァーリョ厩舎、クリストフ・スミオン騎乗のガルディーニは、3歳デビューをドイツのケルン競馬場(2200メートル)で飾り、前走ロンシャンの条件戦(2400メートル)ではアンラッキーな2着だった新星。パリ大賞典の伏兵的な存在でしょうか。

シャンティーの最後はベルトラン・デュ・ブレイユ賞 Prix Bertrand du Breuil (GⅢ、4歳上、1600メートル)。シュマン・デュ・フェル・デュ・ノール賞と言った方が古いファンには馴染があるレースです。
11頭が出走し、去年のエドモン・ブラン賞(GⅢ)勝馬で今年は3着、前走ロンシャンのリステッド戦に勝ったシラス・マリナー Silas Mariner が2対1の1番人気。

英国から遠征した2頭の内の1頭、エンパイア・ストーム Empire Storm が逃げましたが、中団に待機した4番人気(67対10)のピントゥリッキオ Pinturicchio が、ブービー人気(29対1)スポイル・ザ・ファン Spoil the Fun との叩き合いを頭差で制してG戦初勝利。半馬身差で本命シラス・マーナーが最後方から追い込んでの3着でした。
エリー・ルルーシュ厩舎、アンソニー・クラスタス騎乗のピントゥリッキオは、前走ミュゲ賞(GⅡ)で4着した6歳馬。その前のサン=クルーでのリステッド戦には勝って、今期は4戦2勝となりました。

ところで昨日はアイルランドのコーク競馬場でもG戦が一鞍行われました。ミュンスター・オークス Munster Oaks (GⅢ、3歳上牝、1マイル4ハロン)。何やら聞き慣れないレー名ですが、去年まではノーブレス・ステークス Noblesse S として行われてきた一戦。オークスという名前が冠されていますが、3歳限定では無く古馬にも出走権がある「オークス」です。
馬場は good to firm 。7頭が出走し、3歳馬は4頭。6対4の1番人気に支持されたのは、その3歳の1頭で、前走デビューとなったティッペラリーの未勝利戦を5馬身差で圧勝したばかりのエデルミラ Edelmira 。ウェルド師が管理するアイルランド本拠のアガ・カーン所有馬です。

レースは2頭出しオブライエン厩舎の1頭、3番人気(9対2)のダズリングDazzling がペースを作って良く粘りましたが、6番手を進んだ2番人気(5対2)のヴィーナス・ド・ミロ Venus de Milo が内ラチ沿いに抜け出し、ダズリングに1馬身4分の1差を付けて優勝。更に4分の3馬身差でサークリング Circling が3着に入り、5番手を進んだエデルミラは6着敗退に終わりました。
ヴィーナス・ド・ミロは承知のようにエイダン・オブライエン厩舎、ジョセフ・オブライエン騎乗の4歳馬。去年の愛オークスで2着したあとギヴ・サンクス・ステークス(GⅢ)でG戦初勝利。その後もヨークシャー・オークスで2着し、フランス遠征のヴェルメイユ賞はトレーヴの8着。今期はレパーズタウンのリステッド戦(14ハロン)でデビューして8着に終わっていました。ジョセフによれば未だ太目残りということでしたが、これを機に再びGⅠ戦線に駒を進めてくるでしょう。

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