パシフィカ・クァルテット

昨日は第一生命ホールのクァルテット・ウェンズディ・シリーズから、パシフィカ・クァルテットを聴いてきました。
同シリーズの、今シーズン中でも最大の聴きものでしょう。

私が彼等を聴くのは三度目。前回の来日(2004年9月)では、メンデルスゾーン第2、カーター第2、スメタナ第1というプログラムでドラマティックな演奏を披露したのですが、これに続いて予定されていたカーター全曲演奏会は、第1ヴァイオリンのシミン・ガナートラ(女性です)が急性盲腸のため入院・手術というアクシデントがあり、キャンセルされてしまいました。
しかし彼等のカーターにかける情熱は留まることを知らず、全て自費負担という「暴挙」までして、同年12月にこの全曲演奏会を復活させてしまったのですね。
このときは入場料無料ということで、ホール側もカンパを募ったのですが、私もささやかな寄付をしてカーター全曲を堪能した経緯があります。

驚いたことに、この年のクリスマスには彼等からクリスマスカードを頂きまして、一層感激したのでした。その手書きによるカードは大切に保管しておりますが、忍者姿でおどけたポーズを取った一品で、○十年後には価値が出ること間違いないでしょうな。

さて今回のプログラムはメンデルスゾーン第1、ヤナーチェク第2、ベートーヴェン第13という真っ当にして多彩なプログラムです。
演奏は余計な感想を差し挟む余地がないほど見事なもので、最初の第1音から最後まで、惹き込まれっ放し、アッという間の2時間半でした。これが3500円、シニアなら2500円というのは信じ難いけれど、現実にこれで聴けたんですよ。

メンデルスゾーンは既に前回の来日の時に第2をやりましたし、全曲レコーディングも達成している得意演目です。フィナーレの完璧なテクニックには唖然とする他ありません。洒落た第2楽章カンツォネッタの何と魅力的だったことか。

ヤナーチェクの内緒の手紙も、彼等はレコーディングしたばかり。有無を言わせぬ名演です。
この作品は最近よく出会うもので、先日のエクセルシオ、その前にはパヴェル・ハースと、立て続けに素晴らしい演奏に接してきましたが、三者三様、どれも記憶に残る演奏です。何より作品の素晴らしさが自ずと名演奏を促すのでしょうか。

ここで休憩が入りますが、コンサートがこれで終わったとしても大満足で帰路についたでしょう。
ところが未だベートーヴェンの作品130があるのです。しかもオリジナルのフィナーレである大フーガ版で。
パシフィカは2008年度からベートーヴェン・ツィクルスに挑む予定だそうで、これはその前哨戦。いや、見事でしたね。
この作品のむしろ明るい面に光を当てた演奏と聴きましたが、例のカヴァティーナで聴衆の胸を揺さぶった後、間髪を入れずにフーガに突入。長さを全く感じさせないアンサンブルを満喫させてくれました。
日本でもベートーヴェン全曲演奏会、是非とも実現させて欲しいですね。関係者の皆様、お願いします!

アンコールが一つ。バルトーク第4から第4楽章、例のピチカート楽章です。面白かったぁぁぁぁ~。
完璧なテクニック、繊細な音楽表現、どこまでも柔らかい音色。これが結論かな。

パシフィカ・クァルテットのメンバーは、第1ヴァイオリンがシミン・ガナートラ、第2ヴァイオリンはシッビ・バーンハートソン、ヴィオラはマスミ・パーロスタード、チェロがブランドン・ヴェイモス。若くて実に腕の立つ連中です。
シミンとブランドンは夫婦で、最近女の子が生まれたばかりだそうです。皆名前が変わっていますが、シッビはアイスランド出身だそうです。またマスミは名前からして日本人の血が入っているのでしょうか。詳しいことは知りません。ハンサムで背が高く、背筋をピンと伸ばして歩く姿が印象的です。

彼等はイリノイ大学とシカゴ大学のレジデント・クァルテットで、1年間に8作品の新作を演奏するというコミッションも受けている由。夫々ソリストとしての活動もあるようですね。
昨年、2006年度には有名なエイヴリー・フィッシャー賞を受賞しています。この賞の30年の歴史の中で、弦楽四重奏団が受賞したのは2団体目だそうです。

また2006年4月号のグラモフォン誌の表紙を飾ったことも話題で、同誌では世界のトップを狙う筆頭候補にも挙げたほど。これが縁になったのか、ヴィオラのマスミは、グラモフォンに連載を開始しましたね。ネットでも読むことができます。

日本ではこのあと、名古屋のスタジオ・ルンデ(2月24日)と横浜で小さい会(2月25日)があるだけです。聴き逃した人は試してみては、といっても手遅れのようですが。
今年5月にはオーストリアのホーエネムスで行われるシューベルティアーデに招待(5月20日)されているそうですし、24日と26日にはアムステルダムのコンセルトへボウ・リサイタルホールでも公演があります。
熱心な方はそちらへ。世界で今最も旬なクァルテットをお聴き逃しないように・・・。

 

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