パシフィカ・クァルテット with

昨日は上野・東京文化会館の小ホールで行われたパシフィカ・クァルテットの公演を聴いてきました。チョッと斑模様の感想になります。
私がパシフィカの公演を聴くのは今回が4回目。彼らとしても確か4度目の来日になると思います。曲目等詳細はこれ。
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第6番 作品18-6
スメタナ/弦楽四重奏曲第1番「わが生涯より」
     ~休憩~
ドヴォルザーク/ピアノ五重奏曲 作品81
 パシフィカ・クァルテット
 ピアノ/三浦友理枝(みうら・ゆりえ)
 (アンコールはドヴォルザークの第3楽章、フリアントによるスケルツォ楽章)
私がこれまで聴いた3回は、いずれも第一生命ホール。うち2回は晴海のSQWシリーズでした。最初は確か2004年の9月で、このとき受けた衝撃は、私にとってパシフィカ・ショック。そのときのメインがこの日と同じスメタナでした。
因みにこのときはメンデルスゾーンの2番、カーターの2番、それにスメタナというプログラムで、アンコールはシューマン第1のアダージョとピアソラのタンゴ for 4、というもの。アンコールまで正確に、昨日のことのように覚えているのは、いかに彼らの登場が衝撃であり、「本格的デビュー」と呼ぶのに相応しかったか、ということでしょう。
この初来日の際にエリオット・カーターの弦楽四重奏曲全曲演奏会も企画されていたのですが、シミン(第1ヴァイオリン)の急病のため止む無く中止。
雪辱に燃えたパシフィカは、その年の12月に全て自腹という暴挙で再来日を果たしています。私はささやかなカンパもして、これも聴きました。その晩のカーター全曲は、今でも一部では語り草になっているはずです。
3度目の来日は去年(2007年)の2月、それは既に日記になっていますから、ここでは繰り返しません。
晴海に通っている弦楽四重奏曲オタク若干にとって、パシフィカの名は既に伝説になりつつあります。
で、昨夜のコンサート。前半のメインたるスメタナは、初来日の衝撃そのままに、彼らの特徴である完璧なテクニック、繊細な音楽表現、何処までも柔らかい音、作品のドラマティックな再現、4人の統一が取れた音色とアーティキュレーション等々を駆使して、再び大きな感動を創り出してくれました。
冒頭のベートーヴェンの見事なこと。特にラ・マリンコニアと題された終楽章の深い表現は、ほとんど後期ベートーヴェンを予言する世界。そこからしなやかにアレグレットに流れ込む絶妙な呼吸。一旦アダージョが回帰し、最後のプレスティッシモに入る決然たる間と強烈なスピード感。ここから生まれてくる音楽的ドラマに、緩みが忍び込む隙は一瞬たりとも存在しませんでした。
前半はかく終了し、後半に入ったのですが・・・。
ところでこのコンサート、事前にはこんな案内が流されていました。大手レコード屋さんの広告があります。これ、↓
http://www.hmv.co.jp/news/article/806090075
我が目を疑うようなキャッチコピーが使われていますね。パシフィカ・クァルテットの「本格的日本デビュー」と。この「本格的」って、どういう意味なんでしょうか。晴海のSQWは本格的ではなく、カーター全曲も本格的な演奏じゃなかった、とでも言うのでしょうか。
実はパシフィカ、前回で晴海は「卒業」し、「本格的」なマネジメントが付いた、ということのようです。その音楽事務所がどんな所なのか知りませんが、今回の曲目、ゲスト・ソリストの選択には彼らの意向が働いているのでしょ。
パシフィカは無名である。これだけで、上野の小ホールで採算が取れるレヴェルの集客は期待できない。では、平均的日本人聴衆にアピールするために日本人演奏家を組ませよう、と。
チョッと過激な物言いになるかもしれませんが、これは聴き手を欺く所業ではないでしょうか。共演したソリストに、もちろんパシフィカにも責任はありません。
こういう選択をするマネジメントはあまりにも貧弱。従って、折角のコンサートが尻すぼみになってしまった感は拭えません。むしろ曲順を入れ替えたほうが良かったのでは・・・。
尚、今回のパシフィカ、大阪ではベートーヴェン2曲とリゲティを取り上げ、新潟ではメンデルスゾーンを加え、今日の武蔵野でも「本格的」プログラムが組まれています。
もし私が自由の身なら、何の躊躇いも無く大阪に向かったでしょう。
武蔵野も行ければ行きたいですよ。でもね、6時まで事務所に拘束されている普通のサラリーマンが、三鷹、それも駅から歩いて20分もかかるホールに7時に着席せよ、というのはどだい無理。
「本格的」マネジメントを標榜するなら、もっとファンのことを真剣に考えて欲しい。そう言いたくもなるじゃありませんか。ったくぅ~。
あ、この日の上野、まともなプログラムすら無く、手渡されたのは曲目のリストだけ。そのペラ紙にこんなことが書いてありましたわ。
主催 朝日友の会/日本アーティスト
後援 朝日新聞社
協力 エイベックス・クラシックス

 

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