読売日響・第457回定期演奏会

読売日響2月の定期はマンフレッド・ホーネック登場、定期としては珍しい構成のプログラムでした。
その所為でしょうか前売りも出ていましたし、会場にも空席があって、定期会員にも欠席者が目立っていたようです。

曲目は順に、ムソルグスキーの禿山の一夜、メンデルスゾーンの夏の夜の夢から序曲、夜想曲、結婚行進曲の3曲、シュニトケの「夏の夜の夢、ではなくて」という作品。休憩を挟んでヨハン・シュトラウスの皇帝円舞曲とラヴェルのラ・ヴァルス。

ホーネックは最初から度肝を抜きます。禿山の冒頭も2拍目と4拍目を強調するようなアクセントで聴き手を驚かせるのでした。どんな僅かなパッセージも意味を持って響く。ホルンのゲシュトップとヴィオラのコルレーニョを同時に鳴らす凄みなどはその典型でしょう。普段聴き慣れているルーチンな禿山とは一味も二味も違うのです。

メンデルスゾーンにも面白い仕掛けがありました。コミュニティの聴きどころでも紹介したように、これはチューバでなくオフィクレイドを使うのですが、チューバ奏者はチューバを使いませんでした。
あれがオフィクレイドなのかどうかは判りません。チューバよりは小型で、管もカーブしています。資料などで見るものとは違うようなので、オフィクレイドそのものではないでしょう。ワーグナー・チューバのバスか、ユーフォニウムでしょうか。
ともかく奏者は普通のチューバの他にこの楽器を持ち込み、ムソルグスキーのチューバから持ち替えて使いました。
ここでオフィクレイドモドキは楽器のみ退場。

シュニトケは文句なく面白かったですね。実はCDを聴いていたのですが、その通りです、って当たり前なんですが、普通に聴いて楽しめる作品です。
CDで聴くと最初のヴァイオリン・ソロがいやに遠く聞こえるのですが、ここは第2ヴァイオリンの一番後ろのプルトが弾くのですね。納得。
クライマックスのカタストロフも期待通り仰け反りました。

皇帝円舞曲は、他と違って極めて柔らかい音を出すように弾かれていました。それが何とも言えず「良い雰囲気」を醸し出していくのです。プレイヤーたちの表情にも微笑が見られ、いかにも楽しそう。ホーネック前回来日時のシュトラウスの夕べを思いだしました。
コーダでテンポを一旦緩め、チェロのソロ、ホルン・ソロと受け継がれて最後にフルートがトリルを奏しながら大円団に持っていく所があります。このフルートの素晴らしさ! 今日のソロは倉田優さん。彼女は日頃から良いフルートだなと思っていましたが、合奏の中からスーッと立ち上がってくる凛とした美しさ。改めて読響は素晴らしい人材に恵まれていると思いましたね。こんなフルート、他にいないのじゃないかしら。

最後のラ・ヴァルスは圧巻。ホーネックの指揮も燃えに燃え、オケも猛り狂って応戦する様は正に地獄絵巻、というのは大袈裟ですが、オーケストラの醍醐味をタップリ味わいました。
ただ、この所精緻な室内楽を聴き続けているためか、時々粗っぽさを感じたのは気の所為でしょうか。オーケストラ音楽の「光と翳」を見たような気もします。尤も、それがこのコンサートの狙いだったのでしょう。
この日のコンサートマスターはデヴィッド・ノーラン、フォアシュピーラーは鈴木理恵子という組み合わせでした。

 

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