プロムスのシベリウス交響曲全集(4)、オラモの巻
今年が生誕150年のシベリウス、プロムスでは先に3人の指揮者による交響曲全曲演奏会が行われましたが、昨日はその補遺と言うか、もう一つの大作が紹介されました。
8月29日 ≪Prom 58≫
シベリウス/エン・サガ
~休憩~
シベリウス/クレルヴォ交響曲
BBC交響楽団
指揮/サカリ・オラモ
ソプラノ/ヨハンナ・ルサネン=カルタノ Johanna Rusanen-Kartano
バリトン/ワルテリ・トリッカ Waltteri Torikka
合唱/ポリテック・コール、BBCシンフォニー・コーラス(男声合唱)
フィンランドを代表するオラモは、もちろんBBC響の首席指揮者で、この力作を指揮するには最も相応しい人でしょう。
前半のエン・サガと同じくロシアからの独立を願う意志の象徴でもある同曲は、全5楽章。「導入」「クレルヴォの青春」「クレルヴォとその妹」「クレルヴォの出征」「クレルヴォの死」から成り、声楽が入るのは第3・5楽章で、独唱は3楽章のみです。特に第3楽章は、シベリウスの作品の中でも最も特異な存在。
交響曲とは通称で、歌曲集でもあり、レミンカイネン・シリーズのように交響詩の連作でもある、マーラーも顔負けの壮大な作品。シベリウスの作風は、この後その凝縮度を高めていきますが、スタートは案外マーラー風の大きなスケールで書いていたのですね。
確か1974年が日本初演で、当時は地方都市でサラリーマンだった私は会社に嘘をついて休暇を取り、上野に駆け付けたものでした。もちろん渡邉暁雄氏の指揮でしたが、この時は既に日本フィルを離れ、オーケストラは東京都響。流石に言語演奏は難しく、日本語訳で紹介されたと記憶します。
その時点ではスコアが出版されていませんでしたが、後にブライトコプフから手書き印刷のような総譜が出版され、私は迷わず購入しました。今回のプロムス配信では、それを久し振りに書架から引っ張り出して聴きましたが、改めてクレルヴォ・ワールドに酔い痴れることができる名演だったと言えるでしょう。
恐らく今年のプロムスでも最も感動的なコンサートで、歓声も最大級でした。
現在は改訂された見易い印刷譜が出版されているようですが、この生々しい初版スコアの方がシベリウスの情熱が直接伝わってくるようにも感じられます。インキネン、何時か解説付きで取り上げてくれないかな。
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