ニールセンとアイヴス

今年のプロムスも愈々大詰め、残すところラスト・ナイトを含めて4回を残すのみです。最後から3番目の回は、ニールセンとアイヴスという不思議な組み合わせでした。

9月9日 ≪Prom 72≫
ニールセン/フューネンの春 Springtime on Funen
ニールセン/ヴァイオリン協奏曲
     ~休憩~
ジョセフ・フィルブリック・ウェブスター Joseph Philbrick Webster/In the Sweet By and By
マーチン・ツォイナー Martin Zeuner/Ye Christian Heralds
シメオン・B・マーシュ Simeon B. Marsh/Jesus, Lover of My Soul
ローウェル・メーソン Lowell Mason/Nearer, My God, to Thee
アイヴス/交響曲第4番
 BBC交響楽団
 指揮/アンドリュー・リットン Andrew Litton
 ヴァイオリン/ヘニング・クラッゲルード Henning Kraggerud
 ソプラノ/マリン・クリステンソン Malin Christensson
 テノール/ベン・ジョンソン Ben Johnson
 バス・バリトン/ニール・デイヴィス Neal Davies
 ピアノ/ウイリアム・ヴォルフラム William Wolfram
 合唱/ティッフィン少年合唱団、ティッフィン少女合唱団、BBCシンガーズ
 合唱/クラウチ・エンド・フェスティヴァル・コーラス

この演奏会は、ニールセンに先立って英国国歌が高らかに唱和されました。この日の午後3時半、エリザベス女王が在位歴代最長の63年と216日を迎えたということで、その祝福のセレモニーでした。陛下はスコットランド訪問中で特に記念行事などは行われなかったようですが、ロイヤル・アルバート・ホールのは起立してその偉業を讃えたのでしょう。
この斉唱で使われた管弦楽アレンジは、ゴードン・ジェイカーによるものだった由。

さてプログラムの前半は生誕150年祭のニールセン、これが最後の登場です。2曲目のヴァイオリン協奏曲は極く偶に取り上げられることもありますが、最初の曲はその存在すら知らなかった珍品でしょう。
改めて調べてみると、ソプラノ、テナー、バスと3人のソロ、合唱と管弦楽のためのカンタータで作品42が付けられています。タイトルは「フェーン島の春」とでも訳すのでしょうか、作曲者が若い頃にここで体験した思い出がベースになっているそうな。ニールセン最後(1921)の主要な合唱作品として位置づけられているそうです。
今年のプロムスではデンマーク国立響が紹介した愛の讃歌などに続いてプロムスで演奏される合唱曲で、もちろんプロムス初演でしょう。上記3人のソリストに少年少女合唱団とBBCシンガーズが加わっての演奏。全体は5楽章で、第3楽章には美しいクラリネットのソロが活躍し、第4楽章では子供たちが笑い声を交えて歌います。終楽章のア・カペラで始まる合唱も聴きどころ。

続くヴァイオリン協奏曲は3楽章から成る伝統的な協奏曲スタイルですが、第1楽章と第3楽章に大きなカデンツァ(もちろんスコアに記されている)が置かれています。
今回の新発見は、第2楽章冒頭にオーボエで登場し、ヴァイオリン・ソロが引き継ぐ主題の最初の4音がBACHで出来ていること。つまりバッハへの尊敬が籠められているということで、事前に紹介されたインタヴューの中でクラッゲルードが語っていました。やはりプロムスは最初から聴くものですネ。

後半はアイヴスの第4交響曲がメインですが、この作品では全4楽章に自作の他、アメリカ民謡などからの引用が多数登場します。中でも重要なのが讃美歌で、スコアに記載されているものを挙げただけでもこんな具合。

第1楽章 主よみもとに 遥かに仰ぎ見る 夜を守る友よ
第2楽章 埴生の宿 神と居まして また逢う日まで
第3楽章 北の果てなる あまつみつかいよ
第4楽章 主よみもとに

シンフォニーに先立って演奏された4曲は、全て第2楽章で使われた讃美歌そのもので、クラウチ・エンド・フェスティヴァル・コーラスがオルガンの伴奏で歌いました。
このあとに拍手は無く、直ぐに第4交響曲の演奏。ご存知の様にこれは複数のリズムが同時に進行している演奏困難な作品で、ここでも二人の指揮者(第2指揮者はファーガス・マクロードと紹介されていました)が夫々の役割を分担しながら進みます。

合唱の入る第1楽章と、コラール風の第3楽章はそれほどでもありませんか、第1・4楽章の難解さは尋常なものではありません。特に第4楽章はスコアを見ながら聴いていましたが、最後まで何処を演奏しているのかは判らず仕舞いでした。

 

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