二期会の「蝶々夫人」

1月20日の深夜、BS2で二期会の「蝶々夫人」が放送されました。全曲ノーカット版。公演そのものは2006年7月15日と17日、私も15日に公演を聴きに行きました。激しい雷雨があり、電車がストップ。演奏開始を少し遅らせていましたっけ。
この日のキャストはほぼ理想的なメンバー、日本オペラ会の水準の高さを誇示したものだったと思います。この名作を見慣れた人も、初めて見た人も目を真っ赤に泣き腫らし、正に上野に涙の雨が降った一日でしたね。
ということで、放送も懐かしく見直しました。
最後のカーテンコール、バタフライを歌った木下美穂子が唯一人舞台に正座し、客席の大喝采を受けるシーンが大写しになっていました。恐らく木下としても感無量だったでしょう。思わず熱いものがこみ上げてきたはずです。
しかし彼女は決して涙を見せませんでした。必死で堪えている様は、歯を食い縛り、アゴが震えていたことで判ります。客席を思い切り泣かせる歌唱と演技のあとで、演じた本人が聴衆に涙を見せることは、ご法度。そう考えての我慢だったと思慮します。
私はここに彼女のプロ魂を見る思いがしました。
つい先日、ヒラリー・クリントンが涙を浮かべたことが話題になっていました。職場での「女の涙」は是か非か、という議論もありました。まぁ、クリントンと木下を同じ条件で比較するのは愚ですが、木下は立派。心の底から大喝采を贈りたい気持ちですね。
つい数年前まで期待の新人の一人に過ぎなかった木下美穂子。その彼女が大股で大舞台の階段を駆け上り、遂に日本のソプラノ界の頂点に立った瞬間。この「蝶々夫人」はその貴重なドキュメントでもあります。
木下は、今や世界のプリマドンナを目指す道に一歩を踏み出したところ。「バタフライ」を歌わせれば、古今東西を通じてザ・ベストに推す人もいるほどです。カラスやテバルディを凌ぐちょーちょーさんなのです。
NHKは、この映像をDVD化すべきでしょう。ハイビジョン収録されているはずです。ブルーレイでもHDVDでもいいから商品化してくださいな。どちらでも、出してくれた方のハードを買いますから・・・。

 

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