びわ湖ホールプロデュースオペラ「ローエングリン」(オンライン)

3月6日と7日、滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールの大ホールで開催されたワーグナー歌劇「ローエングリン」が有料でライブ配信されたので、簡単に触れておきましょう。

びわ湖ホールの公演は、丁度去年の今頃に上演された同じワーグナーの「神々の黄昏」がライブ配信され、大きな話題になったものでした。未だ正体が不明だった新型コロナウイルスが蔓延し始め、日本でも緊急事態宣言発令に至るころです。開催中止も考えたびわ湖ホールでしたが、最終的には無観客で上演し、それをネット配信する決定が成されたのでした。二日間の公演を無料で配信し、日本におけるネット配信の嚆矢となった事例の一つでもありました。
これがかなりの評判となり、実際に何万人ものファンが視聴したと聴いています。私も両日とも視聴しましたが、正直に言って配信技術としては、例えばウィーン国立歌劇場のライブビューイングに比べて遥かに見劣り聴き劣りのするものでした。もちろん音楽的・芸術的レヴェルの話じゃありません。

その記憶もあり、今回のローエングリンは有料、しかもライブのみでアーカイブ配信は無いと聞いていたのでパス積りでした。ところが様々な情報が飛び込んできたこともあり、二日間の配信チケットを6千円也で購入し、この土日にパソコン・モニターに張り付いて鑑賞した次第です。
結論を言えば、これは視聴して良かった思いました。二組のキャスト、6千円は高くないという感想。

去年の「神々の黄昏」は本格的な舞台上演ではあったものの、カメラは正面に据えられた1台のみ。歌手の表情のアップなどは無く、ホールの後方で見ているような映像でした。音質もほとんどモノラルで、ダイナミック・レンジも狭く物足りないものでした。確か字幕も無かったと記憶しています。
ところが今回は実際の公演で使用される字幕がそのままモニター画面でも見ることが出来、カメラも複数あって、歌手たちの表情がアップで確認することも出来ました。音質も文句ないステレオで、第2幕に登場するオルガンも迫力ある音質で聴くことが出来ました。特に二日目の放映では音量が大きめに配信され、より実際にホールで聴いている感覚に近くなっていました。もちろん更なるグレードアップを期待したいところですが、この一年での進歩は目覚ましいもの、と言って良いでしょう。

今回のローエングリンは、去年とは違って観客が入る公演。拍手はもちろん、公演後のスタンディング・オヴェーションの様子も良く分かり、上演の感動もしっかり伝わってきます。
演出はありますが、舞台上演というより演奏会形式公演に近いもの。オーケストラはピットには入らず、舞台奥に合唱団の舞台、オケと客席の間に歌手たちが歌うステージが設定され、オーケストラを囲むように舞台が設置されていました。当然ながら、コロナ感染防止対策を考慮しての舞台だったと想像できます。歌手たちも極力距離を取っての歌唱に徹していました。個人的には、変に深読みしたり読み替える演出を見せられるより、ある程度を聴き手の想像に委ねる今回の手法の方が好ましいとさえ思いました。

二日間のキャストを紹介しておきましょう。主役6人は以下の通り。王の伝令役の大西宇宙は両日共の出演です。
なお二日目の公演では、予定されていたエルザ役の横山恵子が体調不良のため木下美穂子に交替した旨が場内アナウンスされていました。

3月6日公演
ハインリヒ国王/妻屋秀和
ローエングリン/福井敬
エルザ・フォン・ブラバント/森谷真理
フリードリッヒ・フォン・テルラムント/小森輝彦
オルトルート/谷口睦美
王の伝令/大西宇宙

3月7日公演
ハインリヒ国王/斉木健詞
ローエングリン/小原啓楼
エルザ・フォン・ブラバント/木下美穂子
フリードリッヒ・フォン・テルラムント/黒田博
オルトルート/八木寿子
王の伝令/大西宇宙

その他はびわ湖ホール声楽アンサンブルのメンバーが両日とも歌い、合唱は全員マスク着用での歌唱。

両日共通
ブラバントの貴族Ⅰ/谷口耕平
ブラバントの貴族Ⅱ/蔦谷明夫
ブラバントの貴族Ⅲ/市川敏雅
ブラバントの貴族Ⅳ/平欣史
小姓/熊谷綾乃、脇坂法子、上木愛李、船越亜弥
合唱/びわ湖ホール声楽アンサンブル
管弦楽/京都市交響楽団
指揮/沼尻竜典
コンサートマスター/石田泰尚
ステージング/粟國淳
照明/原中治美
美術構成/横田あつみ
音響/小野隆浩
舞台監督/菅原多敢弘

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