ロイヤル・アスコット2008・初日

初日の結果が入ってきました。長くなるでしょうが、パターン・レースのみ、レースが行われた順に報告しましょう。まず4つのレースを列記しておきます。
①クィーン・アン・ステークス(GⅠ、4歳上、1マイル)
②キングズ・スタンド・ステークス(GⅠ、3歳上、5ハロン)
③セント・ジェームス・パレス・ステークス(GⅠ、3歳、1マイル)
④コヴェントリー・ステークス(GⅡ、2歳、6ハロン)
クィーン・アン
11頭立て。ロイヤル・アスコットのオープニング、伝統のレースです。ここ10年1番人気は9回負けているという、本命馬の墓場みたいな感じですね。
先週まではロッキンジ・ステークスを征したクラカドールの本命が動かないところだったのですが、調教中に重大な骨折を発症。今シーズンはもちろん、今後の競走生命すら危ぶまれる事態になってしまいました。ゴドルフィン陣営の失望はさぞや、でしょう。
ということで大混戦。結局押し出されるように1番人気に上がったのは、去年の英愛両国の1000ギニーを征したフィンシール・べオでした。
これにフランスからイスパハンでワンツーしたサージュ・ブールとダージナが遠征、ロッキンジで3着から6着までに入ったタリク、チェザーレ、アラビアン・グリーム、ハラダサンも加わり、各馬差がなく人気を集めていました。
ジンクスの通りというか、フィンシール・べオ Finsceal Beo は3着に敗れ、混戦を征したのはオブライエン厩舎の新顔・ハラダサン Haradasun 。主戦・ジョニー・ムルタ騎乗でした。2着ダージナ Darjina とは頭差の接戦、3着フィンシール・べオは2着とは4分の3馬身差。
ハラダサン、日本人の我々にはつい「原田さん」を連想してしまいますが、今年初めにオーストラリアからアイルランドのオブライエン厩舎に移籍した馬です。北半球初戦が先日のロッキンジだったのですが、あれはペースが遅すぎて引っ掛ってしまい、実力を出し切れていませんでした。そもそもはオーストラリアでGⅠを2勝した実力馬。一時1番人気にも上がったほどでしたが、最終的には5対1だったとか。
アスコットのスペシャリスト、チェザーレ Cesare が勝負所でダージナに被される不利があったようで、4着に惜敗しています。

http://jp.youtube.com/watch?v=y4udEpsYm1A

キングズ・スタンド
15頭が登録していましたが、2頭取消して13頭立て。今年からGⅠに格上げされたレースです。パターン・レース・システムが導入された当初はGⅠでしたが、その後GⅡに格下げされていたレースで、本来のステイタスを取り戻した格好。
真に国際的な顔ぶれが揃いました。通常のヨーロッパ勢に加え、オーストラリア(マグナス、テイクオーヴァー・ターゲット)、南アフリカ(ナショナル・カラー)、スペイン(エキアーノ)からも参戦。勝ったのはその賓客、スペインから来たエキアーノ Equiano ですから驚き。22対1というサプライズでした。
2着は半馬身差でオーストラリアのテイクオーヴァー・ターゲット Takeover Target 、3着は首差で1番人気のフリーティング・スピリット Fleeting Spirit という結果になっています。
去年のアベイ・ド・ロンシャンに勝ったベンバウン Benbaun は7着、去年2歳でナンソープを制したキングスゲート・ネイティヴ Kingsgate Native が10着。名前が面白いマツノスケ Matsunosuke がどん尻の13着です。
勝ったエキアーノにはドラマがありましたねぇ。何しろ馬主さんも調教師もロイヤル・アスコットは初体験。初出走で初勝利という記録があるのかないのか・・・。
調教師のサンチェス Mauricio Delcher Sanchez さん、馬を英国で走らせるのも初めてだったんだそうです。一方の馬主・アチェソン(一応、こう読んでおきます) James Acheson さんは農業を営んでいる方だそうで、たった2週間前にエキアーノを買ったばかりだとか。平場の競馬そのものが初体験だったみたい。よっぽど運が良いんでしょうねぇ。
運の良い人には良いことが続くもので、何年か前にも購入したばかりの障害馬がショー・ジャンプの大レースに勝った経験もある由。こういう人にあやかりたいです、ホント。
エキアーノはこのレースの後バリー・ヒルズ調教師の管理下に入る予定で、サンチェス師にとっては良い想い出になったことでしょうねぇ。
2着のテイクオーヴァー・ターゲットを管理しているジョー・ジャニアク Joe Janiak という方も異例な経歴の持主で、調教師に転身する前はタクシードライバーだった人。事実は小説より奇なり。
更に言えば、エキアーノの前走はシャンティーのグロ=シェーヌ賞。ここで土曜日(ゴールデン・ジュビリー)に出走予定のマルシャン・ドールの2着に入ったのですが、このとき騎乗したオリヴィエ・ペリエは同馬の才能を確信したようで、厩舎からは追い込みタイプと指摘されていたエキアーノを、前で競馬させたことも勝因となっています。ペリエ騎手にとってもロイヤル・アスコットは12勝目、前回のウイジャ・ボード(プリンス・オブ・ウェールズ)以来、2年振りの勝鞍です。
http://jp.youtube.com/watch?v=y92XYbp0wtE

 

セント・ジェームス・パレス
9頭の登録のうちリオ・デ・ラ・プラタが取消し、8頭立て。初日の呼び物、3歳最強マイラー決定戦となりました。
前評判通り、というか実績通り圧倒的1番人気に支持されたヘンリーザナヴィゲイターが格の違いを見せつけたようです。ムルタ騎手は直線入口で前が塞がり一瞬ヒャッとする場面もあったようですが、隙間を見つけてからの抜け出す脚はケタ違い。追いすがるレイヴンズ・パスに4分の3馬身差をつけて余裕の優勝です。3着には更に2馬身半差、トゥワイス・オーヴァーが健闘しています。
フランス2000ギニー馬ファルコは5着、英愛両ギニー3着のスタッブス・アートは6着に終わりました。
ヘンリーザナヴィゲイターの勝ちタイムはトラック・レコードだったそうで、真のチャンピオン。良馬場でのスピード、瞬発力は歴代名マイラーと比較しても遜色ないものでしょう。オブライエン師が手がけた最強マイラーの称号が与えられるかも知れません。

http://jp.youtube.com/watch?v=-ZamUad652k

コヴェントリー
18頭立て。2歳馬にとってイギリス最初のパターン・レースです。この時期はまだまだ早熟な馬が有利ですが、去年はなんたってヘンリーザナヴィゲイターが勝ったレースですから、注目度もアップした感じ。
1番人気はニューバリーで9馬身差の圧勝劇を演じたオリザヴァ Orizaba でしたが、勝ったのは5対1の人気、これが3戦目のアート・コニサー Art Connoisseur 。この馬の名前、意味は「絵画鑑定家」なんでしょから、フランス語風に「アール・コノソワー」と読むべきかも。後で実況中継のビデオでも見て確認しますが、とりあえず英語風にアート・コニサーとしておきます。調教師はマイケル・ベルさんですからね。勝利騎手はジェイミー・スペンサーくん。
無敗のアート・コニサー、前走はニューマーケットのクレイヴァン・ミーティングでしたが、厩舎筋ではその勝ちっぷりから相当な器と判断し、次走をロイヤル・アスコットまで待機させたようです。
父はラッキー・ストーリー Lucky Story 。クリス・エス Kris S を介してダービー馬ロベルトに辿り着く父系ですから、距離は伸びた方が良いと思われます。次は7ハロン(多分ドーヴィルのモルニー賞)に挑戦、1マイルを視野に入れてくるでしょう。早くも来年の2000ギニーに16対1のオッズを付けたブックメーカーも現れました。
コヴェントリー・ステークス、2着は2馬身4分の1でボルガー調教師のインテンス・フォーカス Intense Focus 、3着はハナ差でロード・シャナキル Lord Shanakill という馬が入っています。人気のオリザヴァは5着、評価を下げたことにはならないでしょう。

http://jp.youtube.com/watch?v=aglsbKX8ARc

以上、初日の結果。

 

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