ケンタッキー・ダービーへの道(1)
4月に入りました。今年のケンタッキー・ダービーは5月の第1土曜日、6日が本番ですから、残り5週間となります。4月は第1週から第3週までに各競馬場でダービーとオークスのトライアルが予定されており、4月上旬が2014年生まれのサラブレッドたちにとっては最後の試金石と言えるでしょう。
ダービーのトライアル、その主要なレースは次の6鞍と断言しても良さそう。即ち、
(1)フロリダ・ダービー
(2)ルイジアナ・ダービー
(3)ウッド・メモリアル・ステークス
(4)ブルー・グラス・ステークス
(5)サンタ・アニタ・ダービー
(6)アーカンソー・ダビー
このうち1と2が昨日、4月1日に行われ、2~5までが来週8日に施行されます。6は更に翌週、本番前3週の15日に行われるというのが今年のスケジュール。そこで4月の3週までは、ダービーへの道と題して結果を報告することにしました。その方が後で検索するのも、書いている私も楽だからです。
ということで、第1回は昨日の土曜日にガルフストリーム・パーク競馬場で行われたフロリダ・ダービーがメイン。もちろんこの日はメイン・イヴェントに合わせて複数のG戦が花を添えていますから、レース順に取り上げていきましょう。
最初に行われたG戦は、第4レースのアップルトン・ステークス Appleton S (芝GⅢ、4歳上、8ハロン)。firm の馬場に1頭が取り消して6頭立て。ステークスもG戦も未勝利ながら、前走ガルフストリーム・パーク・ターフ・ハンデ(芝GⅠ)で僅差2着しているオール・インクルーデッド All Included がイーヴンの1番人気。
4番人気(4対1)のサイディング・スプリング Siding Spring が逃げ、オール・インクルーデッドは指定席の最後方で末脚に賭けます。2番人気(5対2)で2番手を進んだデルタ・プリンス Delta Prince が逃げ馬を捉え先頭で直線に向きましたが、大外を回ったオール・インクルーデッドが一気に先頭に立つと、粘るデルタ・プリンスを半馬身差し切って見事人気に応えました。4番手を進んだ3番人気(7対2)のアワ・ウェイ Our Way が、直線で思い切り内ラチ沿いに切れ込んで1馬身差の3着。
トッド・プレッチャー厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のオール・インクルーデッドは、これまで未勝利戦とアローワンス戦で4勝していましたが、これが念願のステークス・G戦初勝利。フランスの大オーナーであるウェルザイマー兄弟の所有馬で、去年のこのレースは8着と大敗し、その後9か月もの休養を経て前々走のアローワンス戦2着で復帰。叩かれて3戦目での勝利となりました。
続く第5レースも芝戦、こちらは牝馬の長距離戦オーキッド・ステークス Orchid S (芝GⅢ、4歳上牝、11ハロン)で、出走馬は僅かに5頭。去年の春にザ・ヴェリー・ワン・ステークス(芝GⅢ)とビウィッチ・ステークス(芝GⅢ)を連勝したオロルダ Olorda が4対5の断然1番人気。今年はそれ以来となるザ・ヴェリー・ワン6着を叩かれて変わり身が期待されます。
2番人気(2対1)のマクエット Maquette が逃げ、オロルダはこれをピタリとマークして2番手を追走。直線で先頭に立った本命馬がそのまま押し切るかに見えましたが、前半は離れた4番手で待機していた最低人気(9対1)のサマーソルト Summersault が直線では2番手に上がると、外から本命馬に並び掛け、最後は4分の3差抑えてのサプライズとなりました。3番手を進んだ3番人気(6対1)のクワイエット・キッテン Quiet Kitten が3馬身差の3着。
マーク・ヘニグ厩舎、パコ・ロペス騎乗のサマーソルトは、これがステークスもG戦も初勝利となる5歳馬。そもそもステークスに出走したのが去年のベルモントでの一般ステークス一度(11着)だけという存在でしたから、人気が無かったのも当然。ここで大本命を破ることを予想できた人はほとんどいないでしょう。
このあと一般ステークスを4鞍挟んで、第10レースとして行われたのがハネー・フォックス・ステークス Honey Fox S (芝GⅡ、4歳上牝、8ハロン)。アップルトンの牝馬版で、1頭が取り消しての6頭立て。去年のこのレースでG戦初制覇を果たし、6月にはジャスト・ア・ゲイム・ステークス(芝GⅠ)を制したセレスタイン Celestine が3対10の断然1番人気。
スタート・ダッシュが良かったのは5番人気(16対1)のミシシッピ・デルタ Mississippi でしたが、クラブハウス・ターンでセレスタインが先頭を奪うと、そのまま堂々の逃げ切り勝ち。2~3番手に控えたミシシッピ・デルタが1馬身4分の1差で2着に盛り返し、4番手を進んだ2番人気(7対2)のリンダ Linda が1馬身差の3着に入りました。
同馬の調教師としては3人目となるクリストフ・クレメント厩舎、ホセ・オルティス騎乗のセレスタインは、これがG戦3勝目となる5歳馬。このレースの連覇は史上3頭目で、セレスタインは去年のBCターフ・スプリントこそ12着大敗でしたが、前走3月4日の一般ステークス(サンド・スプリングス・ステークス)にも勝っており、短距離よりはマイルに適性があると思われます。
次の第11レースが、この日メインコースで行われる最初のG戦ガルフストリーム・パーク・オークス Gulfstream Park Oaks (GⅡ、3歳牝、8.5ハロン)。fast の馬場に1頭が取り消して8頭立てとなり、今年デビューで前走新馬勝ちしたばかりのソルティー Salty がイーヴンの1番人気に支持されていました。
2番人気(7対2)のノンナ・ベラ Nonna Bella が逃げましたが、前半7番手からグングン加速したソルティー、2番手を進んだ4番人気(6対1)のジョーダンズ・ヘニー Jordan’ Henny が第4コーナー手前で一旦先頭に立ったのも束の間、大外から一気に前を纏めて交わすと、4番手から伸びる3番人気(7対2)のテキリータ Tequilita に4馬身4分の1差を付ける圧勝劇となりました。1馬身半差でジョーダンズ・ヘニーが3着。
マーク・カッセ厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗のソルティーは、2月4日のデビュー戦が2着、続く3月5日の未勝利戦に勝ち、今回がステークス初挑戦でした。この3戦は全てガルフストリーでのレース。ケンタッキー・オークスへの100ポイントを獲得し、ここでは桁違いの格を見せ付けた印象で、オークスでの好勝負が約束されたと言えそうです。
更に1レース間隔を置いておかれた第13レースのパン・アメリカン・ステークス Pan American S (芝GⅡ、4歳上、12ハロン)は、8頭立て。3倍辺りに4頭が並ぶ混戦の中から3対1の1番人気に支持されたのは、前走W・L・マックナイト・ハンデ(芝GⅢ)を制したタグリーブ Taghleeb でした。
5番人気(5対1)のレポーティング・スター Reporting Star が逃げ、タグリーブは後方6番手に待機。2番手を進んだ6番人気(12対1)のデザインド・フォー・ウォー Designed for War が逃げ馬を捉えて一旦先頭に立ちましたが、後方2番手に控えていた3番人気(3対1)のサドラーズ・ジョイ Sadler’s Joy が外から一気に足を伸ばし、デザインド・フォー・ウォーを頭差差し切っての鮮やかな差し切り勝ち。5番手から追い込んだ4番人気(やはり3対1)のパターソン・クロス Patterson Cross が首差の3着に入り、タグリーブも追い上げたものの1馬身及ばず4着に終わりました。
トーマス・アルベルトラーニ厩舎、ジュリアン・ルパルー騎乗のサドラーズ・ジョイは、前走マックナイト・ハンデでは本命タグリーブに頭差の2着惜敗していた4歳馬。初勝利からアローワンス戦など3連勝して臨んだ前走で好勝負し、4歳になって充実著しい1頭。5月にベルモントで行われるマンノ・ウォー・ステークスでGⅠ奪取を目指します。
そしてこの日のメインが、第14レースのフロリダ・ダービー Florida Derby (GⅠ、3歳、9ハロン)。勝馬にはダービーへの100ポイントが付与されるレースで、1頭が取り消して10頭立て。フロリダ・ダービーのトライアルに当たるファウンテン・オブ・ユース・ステークス(GⅡ)を制したガンナヴェーラ Gunnevera が当然ながらイーヴンの1番人気に支持されていました。大外11番枠発走だけが不安材料。
本命馬の一つ内枠からスタートした4番人気(5対1)のスリー・ルールズ Three Rules が逃げましたが、縦長の展開の中でガンナヴェーラは最後方からの追走。2番手を追走した2番人気(2対1)のオールウェイズ・ドリーミング Always Dreaming が逃げ馬を捉えて先頭で直線に入ると、後は後続を突き放す一方的な競馬。3番手を進んだ3番人気(4対1)のステート・オブ・オナー State of Honor に何と5馬身の大差を付ける圧勝でダービーへの切符を手にしました。ガンナヴェーラは最後で懸命に追い上げましたが、1馬身半差届かず3着まで。末脚には見るものがありましたが、如何せん前半に離され過ぎたのが敗因でしょう。
フロリダ・ダービー4勝目となるトッド・プレッチャー厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のオールウェイズ・ドリーミングは、これがG戦デビューでいきなりのGⅠ勝ち。2歳時はベルモントでデビューして3着、2戦目がサラトガで2着。年が明けてタンパ・ベイで初勝利を挙げ、前走3月のガルフストリームでアローワンス戦を連勝。ステークス初挑戦で大器振りをいかんなく発揮した期待のクラシック候補です。血統的にも半姉にスピナウェイ・ステークス(GⅠ)に勝ったホット・ディクシー・シック Hot Dixie Chick がおり、今回の圧勝から見て混戦の2017ケンタッキー・ダービーを制する資格充分と言えそうです。
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