ピエール・モントゥー指揮ニューヨーク・フィル

ワルター、トスカニーニ、スクロヴァチェフスキを紹介したニューヨーク・フィルの演奏会プログラム集、ブログの方では検索される方も若干はおられるようなので、もう少し続けてみます。
で、今回は私の好きなピエール・モントゥーに登場願いました。例によって、演奏曲順は私の想像です。
     *****
《第1回サマー・シーズン》
1943年6月6日 カーネギーホール
 ワーグナー/歌劇「ローエングリン」前奏曲
 ドビュッシー/夜想曲~雲と祭り
 フランク/交響曲
  指揮/ピエール・モントゥー
1943年6月13日 カーネギーホール
 ウェーバー/歌劇「オイリアンテ」序曲
 シューマン/ピアノ協奏曲
 チャイコフスキー/交響曲第4番
  指揮/ピエール・モントゥー
  ピアノ/アルトゥール・シュナーベル
     (通常シーズン)
1944年11月2・3日 カーネギーホール
 ベートーヴェン/序曲「レオノーレ」第3番
 ブラームス/交響曲第3番
 ドビュッシー/管弦楽のための映像
 レスピーギ/交響詩「ローマの松」
  指揮/ピエール・モントゥー
1944年11月4・5日 カーネギーホール
 ベートーヴェン/「プロメテウスの創造物」序曲
 ブラームス/ピアノ協奏曲第1番
 ドビュッシー/夜想曲~雲と祭り
 スティル/交響詩「オールド・カリフォルニア」
 R.シュトラウス/交響詩「ドン・ファン」
  指揮/ピエール・モントゥー
  ピアノ/レオン・フライシャー
1944年11月9・10日 カーネギーホール
 ウェーバー/「歓呼」序曲
 フランク=オコンネル/英雄的小品
 ベートーヴェン/交響曲第1番
 ミヨー/交響組曲第2番「プロテー」
 ヒンデミット/交響曲「画家マチス」
  指揮/ピエール・モントゥー
1944年11月11・12日 カーネギーホール
 ベルリオーズ/歌劇「ベンベヌート・チェルリーニ」序曲
 シベリウス/ヴァイオリン協奏曲
 ワーグナー/楽劇「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死
 プロコフィエフ=バーンズ/「悪魔的組曲」
 ラヴェル/スペイン狂詩曲
  指揮/ピエール・モントゥー
  ヴァイオリン/マイケル・ローゼンカー
1955年11月17・18日 カーネギーホール
 ウェーバー/歌劇「オイリアンテ」序曲
 ブラームス/交響曲第3番
 ブルッフ/ヴァイオリン協奏曲第1番
 ドビュッシー/交響詩「海」
  指揮/ピエール・モントゥー
  ヴァイオリン/ミッシャ・エルマン
1955年11月19日 カーネギーホール
 ブラームス/交響曲第3番
 シューマン/ピアノ協奏曲
 ドビュッシー/交響詩「海」
  指揮/ピエール・モントゥー
  ピアノ/アンリ・デーリング
1955年11月20日 カーネギーホール
 ベートーヴェン/「コリオラン」序曲
 ブラームス/交響曲第3番
 メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲
 ドビュッシー/交響詩「海」
  指揮/ピエール・モントゥー
  ヴァイオリン/ミッシャ・エルマン
1955年11月24・25日 カーネギーホール
 ベルリオーズ/歌劇「ベンベヌート・チェルリーニ」序曲
 ショパン/ピアノ協奏曲第2番
 ベルリオーズ/劇的交響曲「ロメオとジュリエット」前奏曲、愛の情景、マブ女王のスケルツォ、ロメオ一人、キャプレット邸の祭り
  指揮/ピエール・モントゥー
  ピアノ/アレクサンドル・ブライロフスキー
1955年11月26日 カーネギーホール
 バッハ/組曲第3番
 モーツァルト/ピアノ協奏曲第24番ハ短調K491
 ダンディ/フランス山人の歌による交響曲
 ベルリオーズ/劇的交響曲「ロメオとジュリエット」ロメオ一人、キャプレット邸の祭り
  指揮/ピエール・モントゥー
  ピアノ/ロベール・カサドシュ
1955年11月27日 カーネギーホール
 ベートーヴェン/「エグモント」序曲
 モーツァルト/ピアノ協奏曲第24番ハ短調K491
 ダンディ/フランス山人の歌による交響曲
 ベルリオーズ/劇的交響曲「ロメオとジュリエット」ロメオ一人、キャプレット邸の祭り
  指揮/ピエール・モントゥー

  ピアノ/ロベール・カサドシュ

 

1956年1月19・20日 カーネギーホール
 クレストン/交響曲第2番
 モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調K219
 R.シュトラウス/交響詩「英雄の生涯」
  指揮/ピエール・モントゥー
  ヴァイオリン/ジョン・コリリアーノ
1956年21・22日 カーネギーホール
 ロッシーニ/歌劇「アルジェリアのイタリア女」序曲
 クレストン/交響曲第2番
 ブラームス/ヴァイオリン協奏曲
  指揮/ピエール・モントゥー
  ヴァイオリン/ナタン・ミルシテイン
1959年2月26・27・28日、3月1日 カーネギーホール
 クープラン=ミヨー/「スルターネ妃」序奏とアレグロ
 ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番
 ベルリオーズ/幻想交響曲
  指揮/ピエール・モントゥー
  ピアノ/ルドルフ・ゼルキン
1959年3月5・6・7日 カーネギーホール
 ベルリオーズ/夢とカプリス
 バッハ/ヴァイオリン協奏曲ニ短調
 ラヴェル/クープランの墓
 ラヴェル/スペイン狂詩曲
 ラヴェル/「ダフニスとクロエ」組曲第2番
  指揮/ピエール・モントゥー
  ヴァイオリン/ヨゼフ・シゲティ
1959年5月8日 カーネギーホール
 ダンディ/歌劇「フェルヴァール」前奏曲
 サン=サーンス/ピアノ協奏曲第2番
 ラヴェル/クープランの墓
 ラヴェル/「ダフニスとクロエ」組曲第2番
  指揮/ピエール・モントゥー
  ピアノ/ウィリアム・マッセロス
     *****
どれも興味深いプログラムでしょ。モントゥー/ニューヨーク・フィルという組み合わせも珍しいし、録音が残っているのなら聴いてみたい気がします。
珍しいレパートリーについて簡単に言及しておきましょうか。
1944年11月のスティルの交響詩。スティル William Grant Still (1895-1978) はウッドヴィルに生まれてロサンジェルスで亡くなったアメリカの作曲家。黒人作曲家ですよね。オーケストラでヴァイオリン、チェロ、オーボエ奏者としても活躍した人で、指揮者でもありました。
1920年代にはポール・ホイットマンのバンドで編曲者として活躍、ブロードウェイやラジオでも知られていました。1935年からはCBSにも所属しています。
作曲家としては9つのオペラや5曲の交響曲があります。モントゥーが取り上げた交響詩「オールド・カリフォルニア」は、特殊な打楽器を取り入れた3管編成の10分ほどの作品、譜面は正に「ウィリアム・グラント・スティル・ミュージック」という出版社から出ています。
フランクの英雄的小品は、元来がオルガンのための3つの小品の第3曲。これをオーケストレーションしたオコンネル Charles O’Connell (1900-1962) という人はRCAビクターのディレクターだった人。オルガンはヴィドールに学んだそうですし、指揮者としても活動していました。ディレクターとしての著作もいくつか残しています。
オコンネルは、モントゥーのサンフランシスコ響時代にレコーディング・ディレクターを務めていまして、フランクのオーケストレーションはそれが切っ掛けで出来た編曲。モントゥーは大変に気に入り、シカゴ交響楽団へのデビュー時のプログラムでも取り上げていますし、サンフランシスコ響とのレコーディングも残っています。
ミヨーの「プロテー」というのは、ポール・クローデルの演劇「プロテー」の付随音楽から交響組曲に編んだもの。恐らく第1番というものもあるのでしょうが、第2組曲はデュランから出版されています。3管編成、プロヴァンス太鼓も使うもので、演奏には22分ほどかかります。
モントゥーの正規録音は残されていないと思いますので、音源があれば聴いてみたいもの。
プロコフィエフの「悪魔的組曲」 Suite Diabolique というのは正体不明です。プロコフィエフの作品をバーンズ Byrns という人がオーケストラ用にアレンジしたのだろう、ということは想像できますが、原曲が何なのか、バーンズとは何者なのか、現在のところは不明です。
プロコフィエフのピアノ曲集に作品4というものがあり、4曲からなる最後の4番の題名が「悪魔的暗示」 Suggestion diabolique となっていますから、これかも知れません。バーンズについては手がかりなし。
1956年1月のクレストン。Paul Creston (1906-1985) はニューヨークに生まれてサンディエゴで亡くなったアメリカの作曲家。洗礼名まで記せば、ポール・グットヴェッジオ・ジュゼッペ・クレストンということですから、イタリア系でしょうね。オルガニストでもありました。
第2交響曲は2楽章で構成されている23分ほどの作品。第1楽章が「序奏と歌」、第2楽章は「間奏曲と舞曲」というタイトルが付けられています。以前はシャーマー社のカタログにありましたが、どうも今は絶版のようですね。クレストンの交響曲は全部で5曲残されているようです。
1959年2月のクープラン作品。これはフランソワ・クープランの4声のソナタ「スルタン妃」 La Sultane をミヨーがオーケストラ用にアレンジしたもの。3管編成の作品で、スコアはエルカン=フォーゲルという出版社から出ているようです。こうしたバロック作品を現代の感覚でアレンジした作品は結構多いものですが、昨今のオーケストラ・レパートリーからは完全に外れてしまっています。コンサートを開始するアペリティフとしてはとても洒落ていますし、ましてやモントゥーが振ったとなれば、尚更聴いてみたくなるもの。1959年なら録音が残されているのは間違いないでしょう。幻想やゼルキンとの皇帝も魅力ですが、こういう珠玉の一品こそ復活を希望しているんですがね・・・。

 

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