3頭立てのGⅠ戦

6月3日、ベルモント・ステークスを翌週に控えたアメリカ競馬。今週のG戦は5つの競馬場で6鞍ですが、GⅠ戦も二鞍行われました。と言ってもその一つは僅か3頭立て。余り盛り上がらないGⅠではありましたが・・・。

例によってニューヨークから行きましょう。三冠レース最終戦前週のベルモント・パーク競馬場は歴史の浅いペナイン・リッジ・ステークス Pennine Ridge S (芝GⅢ、3歳、9ハロン)のみ。firm の芝コースに2頭が取り消しての7頭立て。取り消しと言ってもペン・ナショナルのG戦と掛け持ちしている馬が取り消しただけで、前走アメリカン・ターフ・ステークス(芝GⅡ)2着のグッド・サマリタン Good Samaritan が4対5の1番人気。
2番人気(7対2)のオスカー・パフォーマンス Oscar Performance がダッシュ良く飛び出すと、そのまま内ラチ沿いの経済コースを走り、5番手から追い上げる本命グッド・サマリタンに1馬身半差を付ける堂々の逃げ切り勝ち。最後方から追い込んだ3番人気(7対2)のタイカンデローガ Ticonderoga が頭差の3着に入り、人気上位3頭で決着する順当なレースとなりました。
ブライアン・リンチ厩舎、ホセ・オルティス騎乗のオスカー・パフォーマンスは、去年のBCジュヴェナイル・ターフの覇者。今年はトランシルヴァニア・ステークス(芝GⅢ)5着、前走アメリカン・ターフも10着と掲示板を外して1番人気の座を譲っていましたが、ここはBC勝馬の意地での復活劇でしょう。BC前のピルグリム・ステークス(芝GⅢ)と併せてG戦は3勝目。

次はチャーチル・ダウンズ競馬場に行きましょう。アリスタイデス・ステークス Aristides S (GⅢ、3歳上、6ハロン)は fast の馬場に2頭が取り消して6頭立て。前走同じコースでチャーチル・ダウンズ・ステークス(GⅡ)でG戦初勝利を飾ったリムジン・リベラル Limousine Liberal が3対5の断然1番人気。
2番人気(2対1)ユニオン・ジャクソン Union Jackson の逃げを4番手で進み、徐々に順位を上げた本命馬が先行2頭を外から捉えると、2番手を粘った4番人気(8対1)ウイルボー Wilbo に2馬身半差を付けて人気に応えました。最後方から追い込んだ3番人気(7対1)のザ・トラス・オア・エルス The Truth Or Else が首差の3着。
ベン・コールブルック厩舎、コーリー・ラヌリー騎乗のリムジン・リベラルは、去年のBCスプリントで4着した5歳せん馬。前走に続くG戦2連勝で、今年もBCを目指します。

続いてモンマス・パーク競馬場のイートンタウン・ステークス Eatontown S (芝GⅢ、3歳上牝、8.5ハロン)。去年は6月25日に施行されましたが、今年は3週ほど早目の開催。firm の芝コースに4頭が取り消しての11頭立て。目立った実績のないメンバーから、前走キーンランドのアローワンス戦がアメリカ・デビューでの初勝利だったグラン・ジュテー Grand Jete が3対2の1番人気。
9番人気(37対1)のクワイエット・キッテン Quiet Kitten が逃げましたが、8番手で待機した本命グラン・ジュテーが外から追い上げ、先行2頭をゴール手前で鮮やかに差し切り、6番手から伸びる2番人気(7対2)のライト・イン・パリス Light in Paris に1馬身4分の1差を付ける差し切り勝ちでした。4番手を進んだ3番人気(5対1)のジペッサ Zipessa が4分の3馬身差で3着に入り、多頭数にしては順当な結果です。
チャド・ブラウン厩舎、ジョー・ブラーヴォ騎乗のグラン・ジュテーは、フランスのローカル競馬で1勝しただけの4歳馬。アメリカの水があったのか、これで2戦2勝となり、G戦も初挑戦での初勝利となりました。昨日のオークスをイネイブル Enable で制したジャドモント・スタッド(ハーリッド・アブダッラー殿下が総裁)がオーナー・ブリーダーという名門です。

そしてペン・ナショナル競馬場からはペン・マイル Penn Mile (芝GⅡ、3歳、8ハロン)。今年GⅢからGⅡに格上げされた一戦で、ベルモントのペナイン・リッジ・ステークスと二重に登録していた馬もいました。こちらは1頭が取り消して9頭立て。2走前にキーンランドでトランシルヴァニア・ステークス(芝GⅢ)を制し、前走アメリカン・ターフ・ステークス(芝GⅡ)でも3着したビッグ・スコア Big Score が9対5の1番人気。
3番人気(4対1)のタイム・トゥー・トラヴェル Time to Travel が逃げ、ビッグ・スコアは7番手と後方から。各馬一団で直線に入る所、大外から一気に末脚を爆発させたのが、5番手を進んだ2番人気(3対1)のフロストムーン Frostmourne 、更に外を追い込む本命ビッグ・スコアを1馬身4分の1差抑える快勝でした。更に1馬身半差で2番手を粘った4番人気(5対1)のシストロン Cistron が3着。
クリストフ・クレメント厩舎、イラッド・オルティス騎乗のフロストムーンは、去年9月にサラトガで新馬勝ち。2戦目のベルモントでピルグリム・ステークス(芝GⅢ)に挑戦して4着でしたが、10月下旬にはベルモントで芝の一般ステークス(アワッド・ステークス)に勝って2勝目。今期はアケダクトの一般ステークス(ウッドヘヴン・ステークス)2着から始動し、シーズン2戦目でG戦初勝利を飾りました。

土曜日の最後は、サンタ・アニタ競馬場で行われたGⅠ戦2鞍。先に行われたシューメーカー・マイル Shoemaker Mile (芝GⅠ、3歳上、8ハロン)は、今年最初のBC対象レースで、勝馬にはBCマイルの優先出走権が与えられます。firm の馬場に7頭が出走し、G戦7勝、前々走のカナディアン・ターフ・ステークス(芝GⅢ)で2連覇を達成したハート・トゥー・ハート Heart to Heart が5対2の1番人気。
そのハート・トゥー・ハートがスタートから先手を取って逃げ切りを図りましたが、5番手で控えた3番人気(3対1)のバル・ア・バリ Bal a Bali が大外を回って追い込み、7番手待機から更に外を追い上げた2番人気(5対2)のファーハーン Farhaan に4分の差を付ける鮮やかな差し切り勝ちです。逃げたハート・トゥー・ハートはハナ差の3着惜敗。
リチャード・マンデラ厩舎、マイク・スミス騎乗のバル・ア・バリは、前走5月のターフ・クラシック(芝GⅠ)こそ5着でしたが、その前のフランク・E・キルロー・マイル(芝GⅠ)を制して既にGⅠタイトルを獲得していたブラジル出身の7歳牡馬。これでアメリカのG戦は3勝目となりました。

最後にビホールダー・マイル Beholder Mile (GⅠ、3歳上牝、8ハロン)を紹介しましょう。聞き慣れないレース名ですが、去年までヴァニティー・マイル Vanity Mile として施行されていたもの。去年の勝馬ビホールダーに因んで改名されています。馬場は fast 、当初5頭が登録していましたが、2頭が取り消して僅か3頭立て。日本ならレースが成立しない状況ですが、古馬牝馬チャンピオンのステラー・ウインド Srellar Wind が登場するとあって、興行的には成立するのでしょう。もちろん1対2の圧倒的な大本命。
3頭立てでは人気もへったくれもありませんが、相手と見做される2番人気(2対1)のヴェール・ドーリ Vale Dori が逃げる形となり、大本命は半馬身差で外を追走。2頭の差は徐々に詰まって最後のマッチレースとなりましたが、ヴェイル・ドーリの粘りを何とか捻じ伏せたステラー・ウインドが首差で勝って面目を保ちました。2頭は同じ126ポンドを背負っての首差です。4対1の3番人気だったファイネスト・シティー Finest City が3番手を回って4馬身4分の3差の3着。
ジョン・サドラー厩舎、ヴィクター・エスピノザ騎乗のステラー・ウインドについては改めて紹介するまでもないでしょう。5歳となった今期はアップル・ブロッサム・ステークス(GⅠ)を制したのに続き2戦2勝でGⅠも二つ目。通算ではGⅠ戦5勝となり、当然ながら去年は4着だったBCディスタッフに勝って古馬牝馬チャンピオンの座を射止めることが目標でしょう。そらにしては辛勝だった、かな?

 

 

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