フェスタ2008・神奈川フィル

今日は当たりでしたね。当たりも当たり、大当たり。今夏のオーケストラ・シリーズ、まだ半分も経過していませんが、今年のトップ・オーケストラは神奈川フィルで決まりかも知れません。それほど良かった。
プッチーニ/歌劇「トゥーランドット」ハイライト(演奏会形式)
 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
 指揮/現田茂夫
 カラフ/福井敬(テノール)
 リュー/大隅智佳子(ソプラノ)
 トゥーランドット/岡田昌子(ソプラノ)
 役人/栗原剛(バリトン)
 ティムール/大塚博章(バス・バリトン)
 合唱/神奈川フィル合唱団(音楽監督/近藤政伸)
 ナビゲーター/近藤政伸
 コンサートマスター/石田泰尚
もちろんオペラの良い所取り、1時間チョッとに纏めたバージョンです。粗筋などは神奈川フィルの合唱指導もしている近藤氏のナビゲーションで進められます。昔、よく近藤政伸のテノールを聴いたもんです。
残念ながらカットされた部分も多いのですが、いわゆる主役の名アリアはタップリ聴けましたし、「アリアの夕べ」のように合唱がカットされることもありません。これでも「トゥーランドット」を丸々堪能した気分になるから不思議です。
素晴らしかったのは、演奏の水準です。特に大隅の素晴らしくピュアな声がリューにピッタリだったこと。声量も充分で、期待の若手を発見した気分ですね。Signore, ascolta の出だし、ゾッとしましたよ。
それはトゥーランドットを見事に歌った岡田も同じ。まだ藝大大学院に在籍中だそうですが、声の素晴らしさもさることながら、舞台姿の映えること、正にトゥーランドット姫に最適。将来、声を大切に育てていけば、かなりの大物に育つのではないか、いや、育って欲しいですね。
リューとトゥーランドットの大発見に大御所・福井のカラフもたじたじ、というのが私の印象です。もちろん福井は福井。相変わらず力強く、ヒロイックなカラフを聴かせて大喝采を浴びていました。
大健闘は、現田率いる神奈川フィル。最初はオケを鳴らし過ぎるのでは、という感じもしましたが、それも瞬時のこと。今回の「トゥーランドット」にかけるマエストロとオーケストラの意気込み、気迫がホールにビシビシと伝わってきます。
繰り返しますが、これは単なる有名オペラのサワリ公演じやありません。フェスタを大切な音楽表現の「場」と捉えたオーケストラの、企画の凱歌、気合の勝利でもあります。
ミューザ川崎の素晴らしい音空間が生み出す「声の魔力」、「歌の力」。これに圧倒されなかった人はいなかったでしょう。
6割から7割程度の入りでしたが、今日川崎に足を運んだ人は素晴らしい体験ができましたね。
もちろん合唱団の健闘も称えなければなりません。全員にブラヴィ!!
ところで聴きながらツラツラ考えたんですが、これをシリーズ化したら面白いのじゃないですかね。「ミューザ・オペラ・ハイライト・シリーズ」。
九つのオケが、年1回オペラのハイライト版を競演する。演目が重ならないように、バラエティーに富んだ出し物を調整。歌手もバランスを考え、特に新人発掘に重きを置く。全体の進め方にも各オーケストラが様々な企画を出し、そのアイディアで競う。
歌手と指揮者、オーケストラはもちろん、オペラをハイライト形式に纏めることによって作品を新しい視点で見直す「人材」の発掘にもなる。
聴く方も気楽にオペラ入門できるし、通のファンも新たな発見が楽しめる。演奏する側も聴く側も勉強になり、エンターテインメントとして充分に話題になるようにシリーズとして継続する。
今回の神奈川フィルの企画、チャレンジの成功は、様々な発展の芽を孕んでいるように思いました。
N響や都響は、神奈川フィルを見習わなきゃいけません。

 

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