エルガー交響曲全集、最終回

プロムスのホスト・オケ、8月第4週はオラモ指揮、極めてオーソドックスなオーケストラ作品プログラムでした。

8月22日 ≪Prom 51≫
シベリウス/歴史的情景第1組曲
サン=サーンス/ピアノ協奏曲第2番
     ~休憩~
エルガー=ペイン/交響曲第3番
 BBC交響楽団 BBC Symphony Orchestra
 指揮/サカリ・オラモ Sakari Oramo
 ピアノ/ハヴィエ・ペリアネス Javier Perianes

冒頭はシベリウスの比較的珍しい作品。今年のプロムスではアニヴァーサリーでもないのにシベリウス作品が頻繁に取り上げられると思っていましたが、これは私の迂闊。実は今年がフィンランドがロシアから独立して100年の記念の年なんですね。道理で。
ということで歴史的情景、この組曲は二つありますが、そもそもロシアの圧政に対して抗議するのがテーマとなっていた作品集で、今年演奏されるのに最もふさわしい曲集と言えるでしょう。
私も以前、インキネンが日フィルの定期で2曲とも(東京で第1組曲、横浜で第2組曲)演奏した際に多少勉強し、その成果をブログに認めておきましたから、詳しいことはそちらをご覧ください。

続いては、やはり今年のプロムスで立て続けに取り上げられているサン=サーンスの有名なピアノ協奏曲の第2番。ソリストはスペインのピアニストで、これがプロムス・デビューだそうです。何度か来日もしているようで、日本では「ハヴィエル」と表記されていますが、BBCのコメンテイターはスペイン語らしく「ハヴィエ」と発音していましたので、こちらを採りました。
オラモ/BBC響とはグリーグの協奏曲も録音していて、息の合った演奏を聴かせます。見事なテクニックと、如何にもスパニッシュらしい明るい音色がサン=サーンスにはピッタリ。
アンコールはファリャの火祭りの踊りでした。

最後は、エルガーがスケッチのまま残した第3交響曲をアンソニー・ペインがオーケストレーションして完成させたもの。今年のプロムスが始まって早々、バレンボイムが二日連続で第1と第2を振りましたから、今回のオラモでエルガー交響曲全集の完成というワケ。
会場にはペインの姿もあったようです。

この日の3曲、必ずしも年中取り上げられる作品ではありませんが、オーケストラ・ファンにとっては安心して聴いていられる音楽と演奏。
この3日間のプロムス中継を聴いていて、私はこれが最も心地良く、素直にオーケストラ作品の素晴らしさを満喫。様々なスタイルの演奏を連日のように聴いていると、自分のクラシック音楽に対する嗜好が保守的であることに気が付きます。

音楽には時に革新的な演奏が必要であることは理解している積りですが、例えばバットのバッハにしても、グラジニテ=ティラのベートーヴェンにしても、私には革新のための革新としか聴こえてきません。私が惹かれるのは、保守的な演奏表現を基本に据え、時折革新的な部分が顔を出すというタイプの作品であり、演奏です。
エルガーの3番で言えば、ペインはエルガーのスケッチを基に、エルガーの作風やオーケストレーションを深く研究し、徹底的に従う。それでも最後の小節で唯一音鳴らされるドラの弱音、ここにペインの独創的なアイディアが見つかりますし、エルガーが得意とした謎かけの精神も受け継がれている。オラモとBBCによって安息の時が刻まれました。

 

 

 

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください