ボヘミアの宗教改革

8月20日のプロムスで宗教改革500年祭コンサートを紹介しましたが、ルターの業績はヨーロッパ中に関係があり、26日のプロムスでもチェコの宗教改革500年記念コンサートが行われました。

8月26日 ≪Prom 56≫
作曲者不詳/フス党のコラール「Ktož jsú Boži bojovníci’ (You Who Are Warriors of God」
スメタナ/タボール
スメタナ/ブラニーク
マルティヌー/フィールド・ミサ
     ~休憩~
ドヴォルザーク/フス党序曲
ヤナーチェク/ブロウチェク氏の旅行~フス党の歌
スーク/交響詩「プラハ」
 BBC交響楽団 BBC Symphony Orchestra
 指揮/ヤクブ・フルシャ Jakub Hrůša
 合唱/BBCシンガーズ BBC Singers (men’s voices)
 バリトン/スヴァトプルク・セム Svatopluk Sem

BBC響を振るフルシャについては説明するまでもありません。東京都響の首席客演指揮者で、これまで日本でもチェコの珍しくも優れた作品を次々に紹介してくれました。都響の会員ではない私でも、スークのアスラエル交響曲を聴くために1回券を買って上野に出掛けたこともあります。
先に亡くなったビエロフラーヴェクの愛弟子で、チェコ・フィルのビエロフラーヴェク追悼演奏会もフルシャの指揮でしたね。
今回のプログラム、もしビエロフラーヴェクが健在だったなら真っ先に取り上げたであろう選曲で、冒頭に無伴奏男声合唱によって歌われたフス党の賛美歌をテーマにした作品が纏めて取り上げられました。このコラール、日本語に訳せば「神の戦士たる者ら」でしょうか。如何にも物々しいタイトルです。

前半の最後に演奏されたマルティヌーのミサは、通常のキリスト教会音楽ではなく、題名の様に野外で演奏るために書かれたもの。野外ミサという呼称の他に、書かれた時代と目的を籠めて戦時のミサと呼ばれることもあります。
オーケストレーションが変わっていて、バリトン独唱と男声合唱、弦楽器の無い室内管弦楽で、ピアノとハーモニゥムに9種類の打楽器と言う編成。スメタナが終わった後、随分時間を掛けて舞台をセッティングしていました。その間BBCの放送ではマルティヌーの権威による解説も。
マルティヌーと同じくパリに住んでいたチェコの詩人イジー・ムハの提案で、南フランスで祖国チェコスロヴァキア解放のための闘いに加わるべく軍事教練を受けていた同胞のために書かれたミサ。感動的な作品に接する絶好の機会でしょう。残念ながらスコアは手に入りませんでした。

後半もコラール「You Who Are Warriors of God」を用いた作品が続き、ドヴォルザークとヤナーチェクはフス党そのものを扱った作品。
最後のスーク作品にも上記コラールが随所に登場しますが、詳しい解説はヘフリッヒから出版されている同曲スコアに掲載されているウイリアム・グリム氏の解説を読まれることをお勧めします。
プロムスならではの、知的興味を甚く刺激されるプログラムでした。

 

 

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