期待のカラビッツ、ウォルトンを快演

8月も早や第2週に突入し、7日の月曜日はボーンマス響と首席指揮者カラビッツが多彩なプログラムで聴き手を魅了してくれました。

8月7日 ≪Proms 30≫
ベートーヴェン/交響曲第1番
R.シュトラウス/「影のない女」交響的幻想曲
      ~休憩~
プロコフィエフ/カンタータ「彼らは7人」
ウォルトン/ベルシャザールの饗宴
 ボーンマス交響楽団 Bournemouth Symphony Orchestra
 指揮/キリル・カラビッツ Kirill Karabits
 合唱/イギリス・ナショナル・ユース・コール National Youth Choir of Great Britain
 テノール/デヴィッド・バット・フィリップ David Butt Philip
 バリトン/ジェームス・ラザフォード James Rutherford

ウクライナ生まれの指揮者カラビッツは過去にもプロムスで2度ほど聴きましたが、去年の春に実際に読響を振るのを聴き、その才能に舌を巻いた期待の人。プロムスへは確か2年振りの登場だと思いますが、今回はベートーヴェンの古典から英国の合唱大作までの多彩な作品を組み合わせてきました。
当方の思い込みでは、カラビッツと言えばプロコフィエフと連想が繋がりますが、彼のベートーヴェン、というか古典作品は初体験。

正直なところ、最初のベートーヴェンは余り感心しません。アバド流の古楽スタイルのベートーヴェンで、繰り返し完全実行(第3楽章主部の再現も)、ナチュラル金管、バロック・ティンパニ、対向配置など最近流行のスッキリ系で、私は苦手。
続くシュトラウス、つい最近もプロムスでゲルギエフが振ったと記憶しますが、その時はスコアがありませんでした。しかし今回、今ではペトルッチでフル・スコアが簡単に入手でき、パソコン画面上に譜面を広げての鑑賞。時代の進歩を感じた一時でした。

後半はロシアとイギリスのカンタータ作品が2曲。共にメソポタミア文明に関するのテキストに作曲しているという点が共通点。
プロコフィエフは今回がプロムス初演だそうで、テノールのソロと合唱、管弦楽のための作品。演奏時間は短く7分ほどで、人間(テノール)と7体の悪魔がテーマ。古代アッカド寺院の壁に楔形文字で刻まれたカルデアの呪文を基に、バリモントが作詞した「古代の叫び」がテキストです。
如何にもプロコフィエフらしい作品で、カラビッツ(読響)かラザレフ(日フィル)で聴きたいもの。残念ながらスコアは手に入りませんでした。

最後のウォルトンは、リーズ音楽祭でサージェントが初演した作品。日本では尾高忠明氏の尽力で繰り返し演奏され、私も何度か体験しています。もちろん渡邉暁雄/日本フィルの演奏も聴きましたから、この傑作は何度も勉強させてもらいました。
カラビッツも全体を完璧に理解しているようで、見事な演奏を披露。20世紀合唱作品の最高傑作の一つであることを改めて確認できます。

 

 

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