テーマは「死」?

7月27日に行われたプロム16は、BBCウェールズ管のコンサート。今年のプロムスはファースト・ナイトからずっと声を伴う作品が登場し続けてきましたが、2週目を過ぎて漸く純粋に器楽だけの作品による演奏会となりました。

7月27日 ≪Prom 16≫
デュカス/ラ・ペリ(ファンファーレと舞踏詩)
マイケル・バークレー Michael Berkeley/ヴァイオリン協奏曲(BBC委嘱作品、世界初演)
     ~休憩~
プロコフィエフ/バレエ音楽「ロメオとジュリエット」抜粋
 BBCウェールズ国立管弦楽団 BBC National Orchestra of Wales
 指揮/ヤク・ファン・ステーン Jac van Steen
 ヴァイオリン/クロエ・ハンスリップ Chloë Hanslip
 タブラ/ディエゴ・エスピノサ Diego Espinosa

今回の指揮者ステーンは来年1月、新日フィルを指揮する予定になっていますから、同オケの定期会員の方は聴いておいた方が良さそうです。

3曲をザッと眺めると、共通のテーマとして「死」があるような気がします。冒頭のデュカスは金管のファンファーレ付の演奏ですが、バレエ本体の筋書きは不老不死を司るペリの物語ですよね。

続いて演奏されたのがバークレーの新作。リンドベルイ、ペインと立て続けに3っつのBBC委嘱作品が紹介されました。1948年生まれのマイケル・バークレーはレノックス・バークレーの長男で、プロムスで初演された作品も多数あります。
彼の作品は大半がオックスフォード大学出版社から出版されていて、今回の新作も早々と同社のホームページで紹介されています。いずれスコアも市販されるでしょう。

https://global.oup.com/academic/product/violin-concerto-9780193406070?prevSortField=1&start=100&type=listing&prevNumResPerPage=20&lang=en&cc=jp#

このヴァイオリン協奏曲は~D・Rの想い出に~という副題が付けられるそうですが、D・Rとは2年前に亡くなったバークレーの妻、Deborah Rogers のこと。このコンサートが「死」繋がりであることを連想させる理由でもあります。
詳しい作曲の経緯はこの解説を読んでもらうとして、ソロ・ヴァイオリンは普通のヴァイオリンの他に電子ヴァイオリンも演奏します。電子ヴァイオリンはナイジェル・ケネディーの影響、とも書かれていますね。

また、ヴァイオリンの他にタブラ(インドの打楽器)という珍しい楽器がソロで登場しますが、作品の後半には後半は電子ヴァイオリンにタブラ(インドの打楽器)が絡み、恐らく打楽器奏者が“タケトゥー、タケトゥー”と相槌を入れるのが確認できます。ここを聴いていて“また声が出て来るんだ!”と思ったりもします。
最後はティンパニーのクレッシェンドで閉じる20分強の作品。解説にはBACH音型が出る、とあるりましたが、良く聴き取れませんでした。

後半のプロコフィエフは、もちろんシェークスピア没後400年記念作品の一環。抜粋とありましたが、コンサート用にアレンジされた3つの組曲とは全く別の構成で、バレエ全曲版から1時間ほどに纏めたものでしょう。編曲者は不明です。
ロメオとジュリエットですから、もちろん二人の死が結末ですし、今回の版には登場しなかったタイボルトの死も描かれる作品。3曲に死が共通していると聴いても間違いないでしょ。

 

 

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