新春の里山で音楽聴き始め

音楽聴き始め、と言っても勿論ナマ演奏のことで、音盤や放送では元旦から音楽が溢れていました。そろそろ外の風にもありたい頃で、今年のコンサート第一弾は意外にも都心を離れ、千葉の山里に出掛けます。
夕方から雨が降り出して荒天になるという予報の成人の日、外房線直通の総武線快速に飛び乗って降り立ったのは「土気」駅。向かった先は、ゴーシュ音楽院コンサートシリーズ2018、「オートモノモト」デュオ・コンサートで、以下のプログラム。

ベートーヴェン/チェロ・ソナタ第1番ヘ長調作品5-1
フォーレ/ロマンス
フォーレ/セレナーデ
     ~休憩~
ブリテン/無伴奏チェロ組曲第1番作品72
バルトーク/狂詩曲第1番
 チェロ/大友肇
 ピアノ/野本哲雄

千葉県長柄町に位置するゴーシュ音楽院については以前にも紹介しているはずで、詳しいことは省略。長柄での演奏会も、これまでゴルフ場の特別室で行われる音楽祭、近くのホテルでの演奏会、森の中にあるホールでのコンサートなどに通いました
が、本拠地であるゴーシュ音楽院そのものには未だ足を踏み入れたことが無く、今年は初見参での聴き始めとなった次第。
高齢者のドライヴは危険なので電車で行く旨を伝えたところ、院長(代表)自らが態々土気駅まで迎えに来て頂けるとのことで、有難くご厚意に甘えて駅から20分ほどのドライヴで音楽院着。冬枯れの里山の中に建つ音楽院を初めて仰ぎ見ました。

このコンサートは午前の部、午後の部の2回行われ、もちろんプログラムは同一。私共は午前11時からの会を楽しみました。演奏が行われるのは2階のホールで、1階では地元で自家焙煎珈琲を提供している「福笑屋」と、ヘルシーな玄米弁当を販売している「mam」が出張販売しており、電車で冷え切った体を暖かいコーヒーで癒します。開演30分前に2階へ上がると、北向きに大きな窓があり、正面には畑と、更に先には里山が広がっていました。
折しも飛来したアオサギが音楽院前の畑に降り立ち、共にチェロを聴くかのよう。とても東京では味わえない音楽環境です。茂原からウォーキングを兼ねて来られたという紳士とチェロ談義をするうちに、開演時間。

さて大友・野本コンビによるデュオ、確かその最初のコンサートは同じ長柄町の別の会場で行われたはずで、当ブログ内で検索したところ、これが見つかりました。

千葉の隠れ里でチェロを聴く

この会が成功だったこともあってか、その後二人は会場をゴーシュ音楽院に移し、毎年1月と9月の年2回定例コンサートをスタートさせ、遂にはCDを作成するまでに至りました。

何時からか二人の名前である大友と野本が、アルファベット表記で重ねると回文の様に上から読んでも下から読んでもオートモノモトとなることに着目、ロゴも「OTOMONOMOTO」として今後も活動を続けて行くことになるでしょう。2018年の1月が第何回になるのかは聞いていませんが、今回はいきなりベートーヴェンの大作で始まり、後半も現代に近いブリテンとバルトークという相当にヘヴィーなプログラム。回を重ね、次第に新しい作品もやりたくなる、というのが大友チェロの本音でもあります。

演奏会自体は、初めて聴く方にも配慮して大友氏がソナタって何、というトークからスタートし、作品についても簡単に聴き所を紹介するというスタイル。
個人的に最も興味深かったのはブリテンで、全曲が休みなく続けられる難曲、譜面の都合で演奏者自身では譜捲りが出来ません。暗譜するのも難しいとあって、思い切ってタブレット・タイプで足踏みで譜捲りが出来る装置(正式には何と言う名匠なんでしょう?)を導入、この会が正に使い初めだったのだそうです。ヒヤヒヤ・ドキドキの初挑戦も無事にクリアー、大友氏は汗びっしょりの大熱演となりました。
大熱演は最後のバルトークも同じ。一般的にはヴァイオリンと管弦楽による版で演奏されますが、今回はバルトーク自身がアレンジしたというチェロとピアノによるオリジナル版。オケのパートがピアノに凝縮されている分、ピアニストにとっても超の字がつくほどの難曲。眼前で火花を散らすオートモノモトの迫力に圧倒されました。

2曲続いた大曲の達成感に浸った音楽院、アンコールはベートーヴェンの歌曲「Ich Liebe Dich」をチェロ版で。そして締めは、毎年1月の会では恒例なのだそうで、全員で富士山を合唱。え? どんな曲って、この歌ですよ。ちゃんと歌詞カードがプログラムに挟まれていました。

「あたまを雲の上に出し
四方の山を見おろして
かみなりさまを下に聞く
富士は日本一の山」

「青空高くそびえたち
からだに雪の着物着て
かすみのすそを遠くひく
富士は日本一の山」

丁度2時間のコンサートが終わり、1階スペースでヘルシー弁当を頂き、里山コンサートは午後の部へと引き継がれます。
帰りも院長の車で送っていただきましたが(イチゴの即売所は目を瞑り、幸いイノシシにも遭遇せず)、丁度良く土気駅で午後の部を聴かれるM氏とバトンタッチ。偶然ながら新年の挨拶。行きとは別ルート、京葉線快速と臨海線を乗り継ぎ、ギリギリのところで雨には合わず、無事に帰ってきました。

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