オペラ版「ファウストの劫罰」

メット・ライヴ・ビューイング2008-2008の第3弾、「ファウストの劫罰」を見てきました。いつものように川崎ラゾーナ内の109シネマズ川崎。

前日に日本フィルで生演奏を聴いてきた耳には、録音された音楽は辛いものがあります。いくらサラウンドによる高音質と謳っても、根本的にナマとは別世界ですから。
従って演奏云々は出来るだけ触れないようにしますので、その積りでお読み下さい。

主なキャスト等は、

ベルリオーズ/「ファウストの劫罰」(新演出)
 マルグリット/スーザン・グラハム
 ファウスト/マルチェッロ・ジョルダー二
 メフィストフェレス/ジョン・レリエ
 ブランデル/パトリック・カールフィッツィ
 指揮/ジェームス・レヴァイン
 演出/ロベール・ルパージュ

クラシック音楽ファンなら良くご存知でしょうが、「ファウストの劫罰」はオペラじゃありません。劇的物語というタイトルですから、本来はコンサート形式で聴くものでしょう。それでも内容は「劇」ですから、オペラ形式で上演する機会も結構あります。
従って、先ずそこが評価の分かれ目になるでしょうね。もちろん「新演出」とありますから、ルパージュの演出も見所です。
シーズン・プログラムの冒頭、総裁のピーター・ゲルプさんが、“中でもルパージュの演出は物語性とビジュアルの表現に欠かせないと思いました”と書いているくらいですから、期待は高まります。

結論から言うと、私には疑問の残る舞台だったと言わざるを得ません。

ルパージュ演出は、確かに現代最先端のビジュアル表現をフルに活用しています。歌手の動きによってスクリーンの映像が次々に変わるところなど、どんな仕掛けなのかと目が眩むよう。
ファウストがメフィストフェレスとの契約書にサインする場面など、メフィストフェレスが移動するにつれて、スクリーンの樹々が枯れていくところなんかね。

しかしですね、これが返って目障りになり肝心の音楽に集中できない、という不満を抱いてしまいました。少なくとも私は。

それに舞台装置といっても案外単純なもので、梯子くらいしか使ってません。大部分はスクリーンに映し出される映像で賄っちゃう。コスト削減の一環か、と穿った見方も出てきそうですな。

結局ベルリオーズの音楽は、ドラマとしての構成より、ストーリーの部分部分を断片的に作曲して繋いだものですから、オペラ仕立てにするのにはそもそも無理がある、というのが私の意見。
コンサート形式でベルリオーズの音楽そのものをジックリ聴き、ドラマ性は聴き手の想像に任せる。そういう方が聴き易い、と思うのです。

ま、それでも最後の地獄落ちの場面などは魅せますね。全体として第1幕より第2幕(作品の第1部と第2部を第1幕に、第3部と第4部を第2幕という再構成)の方が成功していたようです。

御大レヴァインさん、ラコッツィ行進曲など聴いていると歳を取ったなぁ、と思いますね。どういう意味かは想像にお任せします。
歌手では、メフィストフェレス役が如何にも悪魔ッ、て感じで良かったかな。羽の生えた帽子がイイ。

幕間の案内役はトーマス・ハンプソン。インタヴューの相手はファウトとメフィストフェレスで、マルグリットのグラハム姐御は自ら歌う前にお喋り。こんなことしてて大丈夫なんかぁ、と、こちらが心配になってしまいます。
演出家はロサンジェルスで自分の作品に出演中とか、ドキュメント風の紹介でした。

 

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