今日の1枚(32)

ラフマニノフの第2交響曲を聴こうと思いますが、昨日はカット箇所探しに手こずったので、カットの無いプレヴィン盤にしましょう。

①ラフマニノフ/交響曲第2番ホ短調作品27
②ラフマニノフ/ヴォカリーズ作品34-14
③ラフマニノフ/歌劇「アレコ」間奏曲
④ラフマニノフ/歌劇「アレコ」女たちの踊り

いずれもアンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団の演奏。データは、
①1973年1月3・4日
②1975年10月12・13日
③1976年12月9日
④1976年6月21・22日
録音場所は①~③がロンドンのキングスウェイ・ホール、④はやはりロンドンのアビー・ロード・スタジオNo.1 です。
プロデューサーは全て Christopher Bishop 、エンジニアは①が Robert Gooch 、②~④が Christopher Parker 。

このCD盤はEMIの 7243 5 66997 2 という品番。過去の名盤をアーツという技術によってリマスタリングした「Great Recordings of the Century」シリーズの1枚です。
ブックレットは新たに書き直したもので、エドワード・グリーンフィールド Edward Greenfield の執筆。これが面白い。

ラフマニノフの第2交響曲は大幅にカットして演奏・録音することは1973年までは半ば常識でした。作曲者自身も認めていたことです。プレヴィンも最初の録音(RCA)ではカット版を用いていました。
このディスクに収められた演奏はノーカットの完全演奏ですが、ここに至るのには経緯があったそうです。
プレヴィンを音楽監督に迎えたロンドン響は、1971年の春にソ連と極東へのツアーを行います。そこでメインに取り上げたのがラフマニノフ。
ライターのグリーンフィールドはこのツアーに同行してレポートを本国に送ったそうですが、第2を各地で繰り返し演奏する中で、指揮者とオーケストラはこの作品はカットせずに演奏すべきだという確信に到達した由。
(極東ツアーは日本、韓国、香港。日本では大阪、名古屋、東京でラフマニノフを演奏しています。何と東京は日比谷公会堂!)

その結果を踏まえての、プレヴィンにとって二度目の録音となるのが当ディスクです。恐らく史上初のノーカット盤。ただし、第1楽章の繰り返しは省略しています。
(ツアーでの首席クラリネットはロバート・ヒル Robert Hill だったそうですが、録音ではジャック・ブライマー Jack Brymer に替わっているとのこと)

②はピアノ伴奏付き歌曲の編曲版。ここでは声楽パートをヴァイオリン(ラフマニノフの指定では16人から20人)で演奏する版。クリントン・F・ニーウェグのアレンジとされていますが、実際にはラフマニノフによる編曲(歌とオーケストラ)を移調しただけのもの。
この録音では20人も使っているようには聴こえません。
前半と後半にある繰り返しは全て実行。

③と④はスコアが無いので詳しいことは触れません。③はハープが豊かに響きますが、左から。④ではトライアングルやタンバリンも登場し、これも左から聴こえてきます。
録音はホールの残響をタップリ取り込んだもので、大ホールの奥か2階中央辺りで聴くイメージ。楽器の定位には拘らず、オーケストラのスケール感を重視した録音。
同じホール、同じオーケストラによるデッカ(先日のドヴォルザーク)とは全く異なる印象。両社の録音に対する姿勢の違いが明瞭に判るサンプル。

スコアを見ながらヘッドフォンで聴くことの多い私にはどちらかというと苦手な録音ですが、大型スピーカーを近所迷惑にならない程度に鳴らすと、そのゴージャスなサウンドはやはり素晴らしいと思います。
録音そのものは好き嫌いが分かれると思いますが、ラフマニノフ演奏のスタンダードを今日あるものに変えたという意味で、存在意義を失わない名盤。

参照楽譜
①カーマス F141
②日本楽譜出版 297(ラフマニノフの3種類の編成が収録されているお奨め版)
③④は無し

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