ギュンター・グロイスベック・リサイタル@ウィーン国立歌劇場

先ほどアップした「ボリス・ゴドゥノフ」の中でも触れた通り、ウィーン国立歌劇場が現地6月8日の月曜日に再開されました。もちろんコロナ・ウイルスが消滅したわけではないので、開場と言っても限定的。オペラ公演は未だ開催できず、当面(6月一杯)は客席を100人に限定し、歌手によるリサイタルが中心です。
このリサイタル・室内楽シリーズは全て無料でライブ・ストリーミングされとのことで、日本ではオッタヴァ・テレビを介して公演によっては数日間視聴することが可能。できるだけ多くの方が、この貴重且つ記念碑的なコンサートを体験されることを希望するものです。

当ブログでは、アーカイヴによるオペラ配信は「音楽番組」カテゴリーで、現地と同時間に配信されるリサイタル等はネット参加するコンサートと見做し、「演奏会」ジャンルで紹介していこうと思います。再開コンサートはほぼ連日のような開催されるので、とても全部に付き合う自信はありません。可能な限りのレポートと致しましょう。

ということで第一弾、実際にはどのようなスタイルで開かれるのか興味津々でオッタヴァ・テレビからウィーンに飛びました。コンサートは現地の夕方5時半に開場となったようで、これまでのライブストリーミング同様演奏前の30分間は国立歌劇場のプロモーション・ビデオが映し出されていました。
開演時間になるとカメラはホールの映像に変わり、客席は疎らながらチケットを入手できたラッキーなファンが間を空けて座っています。1階席だけが解放されているようでしたが、3階ボックス席にはマイヤー総裁の姿も捉えられていました。恐らく大半はマスク着用で来場したのでしょうが、演奏中はほとんどの人がマスクを外して聴き入っています。

この日は地元オーストリアの誇りであるバス歌手、1976年生まれのギュンター・グロイスベック登場。ピアノ伴奏はロシアの方でしょうか、ゴルビツカヤという女性です。
いつものオーケストラ・ピットに蓋が被せられるように床面が設置され、ここを舞台にしてのリサイタル。中央にはベーゼンドルファーが鎮座しているのが如何にもウィーン。

予定時間を5分ほど過ぎ、先ずグロイスベックが単独で登場し、挨拶。残念ながら日本語訳は付かないので、内容は想像するしかありません。ドイツ語が堪能な方、後で何が語られたのか教えてね。
このリサイタルは、間にウーヴェ・エリック・ラウフェンベルグ Uwe Eric Laufenberg という方のドイツ語による詩の朗読を挟みながら進められるスタイル。恐らく流行病などを読み込んだ詩でもあるのでしょうか、ゲーテ、シラー、ブレヒトなどの作品が選ばれていたようです。

歌われた曲順を列記すると、以下の通り。

シューベルト/プロメテウス D674
シューベルト/人間性の限界 D716
シューベルト/ガニュメート D544
シューベルト/メムノン D541
シューベルト/勝利 D805
シューベルト/ドナウ川の上で D553
シューベルト/流れのほとりで D539
シューベルト/舟びと D536
レーヴェ/時計 作品123-3
レーヴェ/聖フランシスコ 作品75-3
レーヴェ/オーディンの海の騎行 作品118
シューベルト/罪を清められたオレスト D699
シューベルト/冥府への旅 D526
シューベルト/双子座に寄せる船乗りの歌 D360
シューベルト/ゴンドラの漕ぎ手 D808
マーラー/子供の魔法の角笛~第12曲「少年鼓手」
マーラー/子供の魔法の角笛~第2曲「原光」
 歌/ギュンター・グロイスベック Gunther Groissbock
 ピアノ/アレクサンドラ・ゴルビツカヤ Alexandra Goloubitskaia

シューベルトではゲーテ作詞から3曲、メイホーファー作詞から5曲が歌われ、レーヴェを挟んで再びシューベルトはメイホーファー作詞から4曲。最後はマーラーの2曲で締められます。
当初公表されていたプログラムではレーヴェの後に休憩が入ることになっていましたが、実際には休憩無しの2時間タップリ、一気に聴き通すリサイタルでした。

冒頭、プロメテウスのピアノ伴奏が鳴り響くと、ベーゼンドルファーならではの深々とした和音が胸に染み込みます。ネット中継とは言いながら、やはり生演奏は格別。
どの歌にも揺すぶられましたが、特にレーヴェの作品118には大いなる勇気を呼び覚まされた思い。最後に歌われたマーラーの「原光」には目頭が熱くなってしまいました。この歌を聴いて泣かない人とは友達になりたくない、ということか。
マーラーが終わると、さすがにグロイスベックもゴルビツカヤも、目頭をハンカチで、手で拭う様子にまたしても貰い泣き。いやぁ~、音楽って良いなぁ~。

当然アンコールもありました。それも本来なら今年のバイロイト音楽祭で歌うことになっていたヴォータンの感動的な場面、楽劇「ワルキューレ」ヴォータンの告別と魔の炎の音楽。この時期、この歌は涙無しに聴く事は出来ません。それもシクシクじゃなく、オイオイでしょう。
100人の客席からも大喝采と感謝の拍手。予定には無かったかもしれないシューマンのロマンスとバラード第2集から「二人の擲弾兵」も歌われます。全員のスタンディング・オヴェーションがグロイスベックとゴルビツカヤに感謝の喝采を贈りました。

このあとのリサイタル・シリーズ、13日トマーシュ・コニェチュニー、17日カミラ・ニールンド、20日ミヒャエル・シャーデ、22日フアン・ディエゴ・フローレス、27日クラッシミラ・ストヤノヴァと続きます。
100人で聴く名歌手たちの心の歌。これをネット中継で、しかも無料で楽しめる贅沢を味合わない手はないでしょう。

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