ウィーン国立歌劇場アーカイヴ(49)

本来なら6月のウィーンはドニゼッティの「ランメルモーアのルチア」に始まり、そのあとはヴェルディの「仮面舞踏会」「ナブッコ」「椿姫」「イル・トロヴァトーレ」「ファルスタッフ」が上演・ライブストリーミングがあってシーズンを締めくくる予定でした。
それを考慮しているのでしょう、現地の9日からアーカイヴ配信もヴェルディ週間に突入し、月末までヴェルディ作品が数多く取り上げられます。加えて、昨日配信された「ボリス・ゴドゥノフ」(昨日のレポートで1日だけと紹介したのは間違えで、2日間、つまり10日の23時まで視聴可能です)からスタートするのがスラヴ・オペラ週間でしょうか。ムソルグスキーでは他に「ホヴァンシチナ」が、ヤナーチェクからは「マクロプーロス事件」「カーチャ・カヴァノヴァ」があり、更にはプロコフィエフの「賭博者」という珍品まで登場しますので、こちらも楽しみです。

これも2日間放映される「アイーダ」は、昨シーズンのライブ・ストリーミング最後を飾ったオペラの中のオペラで、今回配信されるものは2015年3月28日の公演と言いますから、やや古いアーカイヴとなります。演出はその時と同じもの。
その所為もあるのでしょうか、画質は最新の配信に比べるとやや見劣りがしますし、後半(第3幕以降)は字幕が出ないという不具合もありました。尤も「アイーダ」は字幕を必要としないほどに良く知られた作品ですから、却って字幕が無い方が音楽・舞台に集中できて良いという体験も。怪我の功名でしょうかね。

昨年同様、キャストはスター歌手たちがズラリと並んだ豪華なもの。

エジプト国王/ライアン・スピード・グリーン Ryan Speedo Green
アムネリス/ルチアーナ・ディンティーノ Luciana D’Intino
アイーダ/ソンドラ・ラドヴァノフスキー Sondra Radvanovsky
ラダメス/ホルヘ・デ・レオン Jorge de Leon
ラムフィス/ソリン・コリバン Sorin Coliban
アモナスロ/フランコ・ヴァサーロ Franco Vassallo
使者/シャホウ・ジンシュ Jinxu Xiahou
巫女の長/オルガ・べズメルトナ Olga Beszmertna
指揮/フィリップ・オーガン Philippe Auguin
演出/ニコラ・ジョエル Nicolas Joel
舞台美術及び衣裳/カルロ・トマジ Carlo Tommasi
振付/ジャン・ストリプリング Jan Stripling

ジョエルの演出は、エジプトを連想させる舞台装置を並べただけのシンプルなもので、歌と音楽を極力邪魔しないように配慮されているという印象。その分記憶に残らない演出と言えるかもしれません。
それだからこそ主役4人の声の饗宴という、オペラの第一義的な魅力を十分に楽しみたい舞台。各幕、シーンの後でこまめにカーテンコールがあり、その場面で活躍した歌手たちがコールに応えるという見所もあります。

アムネリスのディンティーノ、アモナスロのヴァサーロ、ラダメスのレオンは恥ずかしながら私は初めて知った歌手たちですが、皆主役を張るだけの見事な声の持ち主です。
さすがにアイーダのラドヴァノフスキーは知っていましたが、何処か往年のプリマドンナであるレナータ・テバルディと雰囲気が似ていて、アイーダにはピッタリなキャラクターだと感じましたがどうでしょうか。特に弱音の高声部が圧巻。

次なるヴェルディは6月15日配信の「ナブッコ」で、「ドン・カルロ」は2種類の公演を見ることが出来るようです。

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