2020「平和の夕べ」コンサート(オンライン)

クラシック音楽ファンならずとも、毎年行われているこのコンサートはご存知でしょう。今年も原爆投下当日に合わせ、8月5日と6日の二日間に亘って広島文化学園HBGホールで開催されました。
確か当初の予定ではベートーヴェン生誕250年記念の意味も込めて「第9交響曲」が演奏される筈だったと記憶していますが、例のコロナ禍により密を伴う音楽は演奏できず、以下のプログラムに変更されています。

幸いというか、日本でも急速に演奏会のライブ配信が進歩し、2020年の平和の夕べコンサートは、二日目の公演がユーチューブ・広響チャンネルで配信されました。誰でも無料で視聴できますから、この機会に是非貴重なコンサートの記録をご覧ください。

ペンデレツキ/シャコンヌ(ポーランド・レクイエムより)
藤倉大/ピアノ協奏曲第4番「Akiko’s Piano」(広響委嘱・世界初演)
     ~休憩~
ベートーヴェン/カヴァティーナ(弦楽四重奏曲第13番より弦楽合奏版)
マーラー/亡き子を偲ぶ歌
J.S.バッハ(齋藤秀雄編曲)/シャコンヌ(パルティータ第2番より)
 管弦楽/広島交響楽団
 指揮/下野竜也
 ピアノ/萩原麻未
 メゾ・ソプラノ/藤村実穂子
 コンサートマスター/佐久間聡一

番組は2時間半にも及びますが、演奏前の30分では今回のハイライトでもある藤倉作品が生まれるに当たってのドキュメントが放送されます。これを見れば、「Akiko’s Piano」が一体何なのか深く理解できますので、冒頭からご覧になることをお勧めします。
本来なら来日して新作の世界初演を弾く予定だったマルタ・アルゲリッチからのメッセージもありますし、生前にこのピアノを弾いたピーター・ゼルキンの演奏も僅かではありますが見ることが出来ます。

この日初演された藤倉のピアノ協奏曲に付いては、2019年1月18日に第584回読響定期で第3ピアノ協奏曲「インパルス」が日本初演された際の拙レポートでも触れたことがあります。初演されるかなり前から音楽界では話題になっていた作品。
その時にも触れましたが、藤倉のピアノ協奏曲は何れも終わり方に特徴があり、今回の第4ピアノ協奏曲はこれまでの3曲以上に衝撃的でした。時間が無い方は、この新作初演だけでも見て頂きたいと思います。一般に知られている「被爆ピアノ」を使用することが演奏の条件になりそうですから、何処でも何時でも演奏できる作品ではないでしょう。ご自身の眼と耳で体験してください。

藤倉作品はほとんどが有料楽譜サイト nkoda で閲覧できますし、上記第3ピアノ協奏曲も2019年1月の時点では未掲載でしたが、現在はスコアもパート譜も実見することが可能。今回の第4番も近日中にはスコアが配信されるものと思われます。
6日の演奏が終わったのが日本時間の夜7時半。ロンドン在住の藤倉氏もモニターを通して拍手に参加され、ロンドン時間では8時間の時差、藤倉邸の時計は午前11時半を指していましたね。このリアルさは配信時代ならではのことと言えるでしょう。

その他の作品は、如何にも下野ならではの選曲。シャコンヌに始まってシャコンヌで終わるプログラム構成。前半と後半は共に弦楽合奏曲で始まり、共に祈りの音楽という共通項。日本が誇るメゾ藤村が歌うマーラーの歌曲は、原爆の犠牲者である河本明子さんにも繋がります。冒頭のペンデレツキ作品は、全18曲の中で13番目に位置するもの。今年亡くなったペンデレツキも広島平和の夕べコンサートに出演されており、追悼の意味も込められています。
アンコールはプーランクの歌曲「平和への祈り」(シャルル・ドルレアン作詞)を下野自身が編曲したオーケストラ版で。アンコールも含めて祈りを捧げる一晩となりました。

動画のURLを張り付けても良いのですが、永遠に視聴できるとは思えませんので、皆様自身でユーチューブの「広響チャンネル」を検索してください。そして出来ればチャンネル登録も。
更にコンサートのプログラム全ページがダウンロードできますから、作品の解説や広響の活動などはそちらを参考にされてください。

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