ウィーン国立歌劇場公演「カヴァレリア・ルスティカーナ」「道化師」(オンライン)
簡単に紹介します。
御存知のように、ウィーン国立歌劇場は9月に再開したものの、新型コロナウイルス感染が再拡大したことに伴い、オーストリアのクルツ首相が二度目のロックダウン実施を発表。11月3日から1か月間、オペラハウスやコンサートホールが閉鎖されることになりました。
これを受け、ウィーン国立歌劇場も11月2日の公演を最後に再び閉鎖されます。今シーズンは実験的に行われてきたライブストリーミングですが、当初は11月4日の「エフゲニ・オネーギン」がライブ配信される予定でしたが、これも急遽変更。前回のロックダウンの際に行われてきたアーカイブ配信が復活することになりました。
ということで、直接ウィーン国立歌劇場のホームページにアクセスすると、当面1週間ほどの予定が発表されています。アーカイブ再開の第一弾は、現地では4日の夜7時から放映されているブリテンの真夏の夜の夢。日本時間では昨日(11月5日)の午前3時から見ることが出来ました。去年10月にライブストリーミングされたもののアーカイブです。今回の配信は視聴期間が24時間。
これに続く第2弾として、今朝の午前3時から以下の舞台が配信されていますから、どうしてもご覧になりたい方はウィーン国立歌劇場のウェブサイトに登録し、明日の朝3時までに視聴してください。
2020年11月2日の公演
マスカーニ/歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」
サントゥッツァ/エヴァ=マリア・ウェストブレック Eva-Maria Westbroek
トゥリッドゥ/ブライアン・ヤークテ Brian Jagde
アルフィオ/アンブロージオ・マエストリ Ambrosio Maestri
ルチア/ゾルヤーナ・クシュプラー Zoryana Kushpler
ローラ/イザベル・シニョレット Isabel Signoret
レオンカヴァルロ/歌劇「道化師」
カニオ/ロベルト・アラーニャ Roberto Alagna
ネッダ/アレクサンドラ・クルザック Aleksandra Kurzak
トニオ/アンブロージオ・マエストリ Ambrosio Maestri
ベッポ/アンドレア・ジョヴァンニー二 Andrea Giovannini
シルヴィオ/セルゲイ・カイダロフ Sergey Kaydalov
指揮/マルコ・アルミリアート Marco Armiliato
演出・舞台・衣装/ジャン=ピエール・ポネル Jean-Pierre Ponnelle
これはロックダウンが再開される直前の舞台。この公演を以て1か月間劇場が閉鎖されるという貴重な映像です。開幕前にボグダン・ロシチッチ総裁が舞台に立ち、これまでの経過と今後の決意を語ります。ドイツ語が分からないので多分そうだろう、ということですが、スピーチの合間に度々起こる拍手は劇場への声援と激励に聞こえました。
またこの夜、前半のマスカーニの上演中に例のIS残党によるテロが起こったようで、劇場は「カヴァレリア・ルスティカーナ」までで公演を中止することも考えたようですが、結局最後まで上演し、退席には聴衆の安全を考慮し、様子を見ながら慎重に対処したとのこと。報道によれば、深夜遅くまで劇場に足止めされた人々も多く、オーケストラの楽員が舞台上でハイドンの「皇帝」を演奏したと聞いています。そうした緊迫した様子は配信されていませんが、二重の意味で特別なドキュメントになっていることをお伝えしておきましょう。
舞台はご覧になってください。今期のウィーンはプレミエ公演が多い一方で、古典的な名舞台、伝説的な演出が復古されるのも話題で、ライブで配信されたクプファー演出のエレクトラ、来年上演される予定のポネル演出のフィガロなどが話題になっています(いました)。この日のカヴ&パグもその一つで、オールド・ファンには涙が出るほど懐かしいポネルの演出です。じっくり味わいましょう、と言ってもたった1日ですが。
事前にロシチッチ総裁も触れていましたが、「道化師」の最後でアラーニャ演ずるカニオが最後に発する台詞、「La Commedia e finita!」(喜劇は終わった)が何とも象徴的。このままウィーン国立歌劇場が終了してしまわないことを祈りましょう。
この公演が終わり、テロの余韻も冷めないままウィーン・フィルは機上の人となり、特別に運行されたウィーン→福岡貸し切り便で今は日本の土を踏んでいます。オーストリアのクルツ首相が我が国の菅義偉首相に親書を以て実現を要請したウィーン・フィルの日本ツアー。様々な意見があるのは当然ですが、ここは暖かく勇気ある音楽家たちを歓迎しようではありませんか。
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