今日の1枚(68)
今日は虫が巣篭もりから這い出す日ですが、暦どおり暖かい一日です。
読響の名曲にブルックナーの第1交響曲がかかるので、今日はこれを聴こうと思います。いろいろありますが、1枚ものということで手を出したのが、
ブルックナー/交響曲第1番ハ短調(リンツ版)、クラウディオ・アバド指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団。1997年にポリグラムから発売された、POCL-4329(458 059-2) という品番です。
(当CDの表記はリンツ版となっていますが、リンツ稿とした方が正しいでしょう)
これはウィーン・フィルの様々な指揮者との録音をシリーズ化したものの1枚で、データは、
1969年11月20日と12月2日、ウィーンのソフィエンザールでの収録。プロデューサーは John Mordler 、エンジニアは Colin Moorfoot です。
デッカは1960年代にウィーン・フィルによるブルックナー交響曲全集を完成しています。当時は未だブルックナーはオーストリアのローカルな存在でしたから、一人の指揮者に全曲を委ねるのではなく、何人かの指揮者が分担して録音した全集。確かこういうラインナップだったと思います。
1番 クラウディオ・アバド
2番 ホルスト・シュタイン
3番 カール・ベーム
4番 カール・ベーム
5番 ロリン・マゼール
6番 ホルスト・シュタイン
7番 ゲオルグ・ショルティ
8番 ゲオルグ・ショルティ
9番 ズービン・メータ
1番を引き受けたアバドは、当時36歳。若手指揮者3羽烏の1人などと呼ばれていました。
第1交響曲は「リンツ稿」と「ウィーン稿」の2種類があって、オリジナルであるリンツ稿による演奏が一般的。ここでもこれによる演奏です。
アナログのステレオ録音。弦楽器の配置はアメリカ式で、チェロが右端に位置しています。ただ左右が極端に離れていて、バランスとしては不自然。ホルンは右端、トランペットはほぼ中央、トロンボーンがその左というのも変わった配置に思えます。
高音がややキツくて不自然、一方で低音は量感に不足しています。デッカとしては不出来な部類だと思いますが、この当時のマスタリングは現在のような20ビットや24ビットによるものではなく、音の硬さはその辺にも原因がありそう。現在はもっと高レヴェルのマスタリングで出ているのかも知れません。
演奏も勢いは良いものの、取り合えずスコアを音にしただけの感じ。これを聴いてブルックナーの第1をナマで聴いてみたい、という感想にはなりませんね。作品紹介に止まる水準。
第3楽章の繰り返しは普通に実行。
第1楽章のチェロには3箇所に「ソロ」という指示がありますが、アバドは全てチェロの斉奏で演奏しているようです。ハッキリとは聴き取れません。
(①58小節から、②134小節から、③325小節から)
参照楽譜
ブライトコプフ&ヘルテル Nr.3616(リンツ稿、ハース版)
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