今日の1枚(39)

寒さの底は抜けた感じ。今朝は曇っていたけれど、暖かかった。
ベイヌム・セット、昨日で全てのCDを聴き終えましたが、もう1枚残っています。何とDVD。ベイヌムの動く姿が見られるという・・・。
恐らくベイヌムの指揮姿が収録されている唯一の映像じゃないでしょうか。

ベートーヴェン/交響曲第3番変ホ長調作品55。1957年5月5日にコンセルトへボウで行われた「解放記念日コンサート」です。ライヴをテレビ中継したもの。
このディスクは両面仕様で、片方がNTSC、もう一方がPAL方式となっています。当然ながら日本のテレビ方式はNTSCなので、片面しか視聴できません。
ディスクを起動するとメニュー画面がスタートし、音声に関しては high quality と normal quality とが選択できます。
ただし音質はどちらも似たようなもので、1957年のものとしてはムラが目立ちますし、同時期の音声だけのテープ録音と比べると遥かに劣悪なもの。録音には期待しないように。

それでも映像から得る情報は極めて大きいものがあります。気が付いた事を列挙すると、
日本のオーケストラで普通に見られるようなチューニングはありません。あるいは終わったところから映像が始まるのかも知れませんが、楽員が思い思いに音を出している場面からスタートします。
ベイヌム登場。ジャケット写真などでは黒髪豊かなプロフィールですが、この映像の時点ではかなり脱毛が進んでいて、要するに頭頂部はかなり禿げ上がっているのに吃驚。
その指揮。指揮棒は使わず、比較的小さな腕の動きで指揮します。スコアは見ながらの演奏。決して派手なものではありません。

オーケストラの配置はアメリカ式。チェロが右端に位置しています。
現代とは大きく異なるのが倍管による演奏であること。木管は全て4人づつですし、ホルンは6人います。トランペットはカメラの角度で3人しか映りませんが、恐らく4本使っているものと思われます。
管楽器の配置も変わっています。2列に分かれ、前列は左からフルート、オーボエ、クラリネットの順。後列が左からホルン、ファゴット、トランペット。ティンパニは一番奥の中央です。

第1楽章提示部の繰り返しは省略していますが、他は全て実行しています。
また第1楽章コーダのトランペットはスコア通りではなく、木管と同じメロディーを嚠喨と吹かせます。
第2楽章135小節からの4小節、オリジナルでは第3ホルンだけが吹く箇所は、6本のホルンが堂々と吹く様子が映し出されています。
以上、現代では死滅した感のある倍管による堂々たるベートーヴェン。弦楽器の数は確認できませんが、音量的にも豊かでズシリと響くベートーヴェン演奏のスタイルが確認できるディスクです。
第1楽章と第2楽章の間で、ベイヌムが何かを口にする様子が映っていますが、当時は相当に心臓か弱っていたはずで、あるいは薬を服用したのかも知れません。
映像を消してヘッドフォンにより音だけに集中すると、一部で人の声のようなノイズが低レベルで混入しています。

参照楽譜
ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.9

 

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