ウィーン国立歌劇場公演「カルメン」(無観客オンライン)
コロナ感染が収まらないウィーン、当初2月第1週でロックダウンが解除される予定でしたが延期、当面新たな発表があるまではウィーン国立歌劇場の再開も延期されてしまいました。恐らく3月一杯は閉鎖が続くだろうと言われています。
従って無観客上演の無料ライブストリーミングが行われていますが、既にお知らせしたように「フィガロの結婚」と「カルメン」は出演者にコロナウイルス陽性者が見つかり、共に延期。フィガロは先日無事に復活上演されましたが、予定されていた「カルメン」も現地時間21日に上演の運びと相成りました。
こちらはカルメン役のラチヴェリシュヴィリとドン・ホセを歌う予定だったチャールズ・カストロノーヴォが感染、ラチヴェリシュヴィリは回復して復帰しましたが、カストロノーヴォは退院したものの暫く休養が必要とのことで、昨日の上演ではピョートル・べチャワが代役を務めています。以下のキャスト。
カルメン/アニタ・ラチヴェリシュヴィリ Anita Rachvelishvili
ドン・ホセ/ピョートル・べチャワ Piotr Beczala
エスカミーリョ/アーウィン・シュロット Erwin Schrott
ミカエラ/ヴェラ=ロッテ・ベッカー Vera-Lotte Boecker
フラスキータ/スラヴカ・ザメツニコヴァ Slavka Zamecnikova
メルセデス/シルヴィア・ヴェレシュ Szilvia Voros
ズニガ/ペーター・ケルナー Peter Kellner
モラレス/マルティン・へスラー Martin Haessler
レメンダート/カルロス・オスナ Carlos Osuna
ダンカイロ/ミハエル・アリヴォニー Michael Arivony
指揮/アンドレス・オロスコ=エストラーダ Andres Orozco-Estrada
演出/カリスト・ビエイト Calixo Bieito
舞台稽古/カリスト・ビエイト Calixo Bieito、ジョアン・アントン・レチ Joan Anton Rechi
舞台/アルフォンス・フローレス Alfons Flores
衣装/メルセ・パロマ Merce Paloma
照明/アルベルト・ロドリゲス・ヴェガ Alberto Rodriguez Vega
この公演は本来なら2月7日に上演される予定でしたが、上記の経緯により2週間延期となったもの。逆に言えば、新型コロナウイルスはたとえ感染しても若い人なら数週間で回復するということでもありましょう。それなら普通のインフルエンザと同じじゃないでしょうか。ま、ケースにもよるのでしょうが、世界的にこの病に付いては対策の見直しをすべきじゃないか、とも考えているところです。
コロナに付いてはその位にして、カルメン。今回はビエイトの新演出が話題でした。加えて指揮者オロスコ=エストラーダが国立歌劇場へのデビューともなることも聴き所の一つでしょう。
ということで一通り見終わりましたが、どうもこの演出、個人的には感心しません。いわゆる現代への読み替え演出。
そもそも舞台装置と言えるものは第1幕の公衆電話ボックスと国旗掲揚の柱のみ。カルメンが登場するのはこの電話ボックスからです。第2幕から最後の第4幕までは舞台に何もなく、第2幕で1台、第3幕では5台の自動車が曳き出されてくるだけ。セビリアの煙草工場も闘牛場も出てきません。僅かにスペインを想起させるのは、電話ボックスの文字とスペイン国旗だけという有様です。
途中で気が付いたのですが、なるほどウィーン国立歌劇場はチケット収入も無く、財政的には大赤字必死でしょう。そんな中での舞台上演は節約を余儀なくされるわけで、苦肉の策での演出かとも思いました。チョッと気の毒。
それにしても各幕とも間奏曲の間から小芝居が演じられていて、それがオペラの本筋とは余り関係なさそうなのは疑問。中でも第3幕の間奏曲での男性ヌードはいただけませんね。こんなものライブ配信して良いのだろうか。確かに歌手陣は立派ですが、これなら演奏会形式の方が良かったのでは、とさえ思ってしまいました。
ドン・ホセのピンチヒッターを務めたべチャワは流石で、今回の無観客上演シリーズではマスネのウェルテル(これは未だ配信されていないはず)、ばらの騎士のテノール歌手、そして今回のドン・ホセと、べチャワ・ファンには堪らない公演が続いています。
今回のビエイト演出、もし平時でも同じなら真っ先にブーイングしたいという感想でした。いずれ再放送もあるでしょうから、興味ある方はどうぞ。私は一度で充分です。
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