ウィーン国立歌劇場公演「椿姫」(無観客オンライン)

現地時間の3月7日、ウィーン国立歌劇場から新しいプロダクションによるヴェルディ「椿姫」が無料で配信されました。本来ならロックダウンが解除され、観客も戻ってくるはずでしたが、感染拡大が収まらないため規制は3月一杯まで延長。この椿姫も無観客での上演となった次第です。

パリ国立オペラとの共同制作ということで、予想されたことではありますが、映画監督でもあるストーン演出は思い切り時代を現代に移し替えたもの。キャストは以下の通りです。

ヴィオレッタ・ヴァレリー/プレティ・イェンデ Pretty Yende
アルフレード・ジェルモン/フアン・ディエゴ・フローレス Juan Diego Florez
ジョルジョ・ジェルモン/イゴール・ゴロヴァテンコ Igor Golovatenko
フローラ・ベルヴォア/マーガレット・プランマー Margaret Plummer
アンニーナ/ドンナ・エレン Donna Ellen
ガストーネ子爵/ロバート・バートネック Robert Bartneck
ドゥフォール男爵/アッティラ・モンクス Attila Monkus
ドビニー侯爵/エリック・ヴァン・ヘイニンゲン Erik Van Heyningen
グランヴィル医師/イリヤ・カザコフ Ilja Kazakov
ジュゼッペ/トーマス・ケーバー Thomas Koeber
フローラの使い/ヴォルフラム・イゴール・デルントル Wolfram Igor Derntle
使者/アレハンドロ・ピツァーロ=エンリケ Alejandro Pizarro-Enriquez
指揮/ジャコモ・サグリパンティ Giacomo Sagripanti
演出/サイモン・ストーン Simon Stone
舞台/ボブ・カズンズ Bob Cousins
衣装/アリス・バビッジ Alice Babidge
照明/ジェームス・フランコム James Francombe
映像/ザック・ハイン Zakk Hein

これまでの無観客ライブストリーミング同様、日本語字幕はありません。椿姫ですからオペラ・ファンには字幕は無用でしょう、私も字幕はオフにして鑑賞しました。
それにしてもウィーン国立歌劇場の配信レヴェルは高い。前日見たびわ湖ホールの映像・音質を遥かに凌駕しており、一歩先に行く配信技術だと改めて感服します。日本も早くこの水準に追い付いてもらいたいものだと思いましたね。

技術には感服しても、どうも演出はいただけません。私が保守的なせいでしようか。
第1幕の前奏曲は舞台に大きく置かれたヴィオレッタの目が開くところから開始され、逆に第3幕間奏曲はその目が閉じられるところからスタートすることで、歌劇としての完結性を際立たせます。

主人公たちのやり取りはスマホが使われ、ほぼ全員がスマホを手に歌う。唯一人ジョルジョ・ジェルモンだけがスマホを持たず、彼が古い考えの人間であることを象徴しているのでしょう。
第1幕のヴィオレッタのアリア「花から花へ」では、ヴィオレッタとアルフレードはSNSを通してのやり取りに替えられているのですから、私のようなロートル世代にはついていけません。

舞台が常に回っており、場面転換は引っ切り無し。背景にはラインやインスタグラムの画面、新聞の見出しと思しきものが映し出されますが、ドイツ語が読める人にはもっと面白く観ることが出来るでしょう。
第2幕第1場、ヴィオレッタとアルフレードは田舎暮らしを始めたようで、アルフレードは収穫したブドウを足で踏みつぶす。ヴィオレッタもトラクターを駆使して干し草を刈る仕事に勤しんでいるのでしょうか。この幕の最後、ヴィオレッタからの別れのメッセージがDHL便で届くのには笑ってしまいました。

第2幕第2場の仮面舞踏会は、合唱団の面々がこれ以上ないような奇抜な仮装で登場。これをコメディーとして見れば存外楽しめるかも。コーラスの人たちも結構楽しんでいるのではないでしょうか。
最後の第3幕は、ヴィオレッタの部屋ではなく病院が舞台。彼女の妄想を表現しているのでしょうか、アルフレードは最初から黙役として登場してきます。最初に往診に来るグランヴィルは、とても医者には見えません。

舞台が回って抽象的な背景となる中、ヴィオレッタ、アルフレード、ジョルジョ、アンニーナ、グランヴィルの5人が歩きながら最後の場面を迎える。
何とも違和感を覚える椿姫でしたが、最後にヴィオレッタが光の中に消えていくシーンは泣かせましたね。ヴェルディの素晴らしさ、音楽の力と言えるでしょう。私のように首を傾げる堅物もいれば、斬新だ、革新的だと快哉を叫ぶ聴き手もおられるでしょう。もちろん歌手たちは今が旬の素晴らしい面々、素晴らしい歌唱が楽しめます。

いずれにしても、新しい舞台が新聞や雑誌の批評を読まずして鑑賞できる。生産者から直接消費者に届けられるオペラということで、時代は変わったなぁ~と、つくづく思いましたね。

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