ウィーン国立歌劇場公演「ドン・ジョヴァンニ」

オーストリアが新型コロナウイルス感染者の急増を受け、11月22日から完全なロックダウンを行うと発表したのが11月19日。これを受け、ウィーン国立歌劇場は11月22日から無料のストリーミング配信を再スタートさせました。
早速ラインナップを見ると、前監督時代に上演された演目がほとんど。既に配信された公演もあれば、恐らく初めて配信される同じ演出で別キャストの演目がものもある筈です。これまで散々楽しませて貰った小欄としては、いくつか初めて見るものだけをピックアップしようと改めてウィーン国立歌劇場のホームページにアクセスしたところ、以前のID登録で無事に視聴することが出来ました。

今回の配信に付いて当ブログでは繰り返しの紹介は避けてきましたが、配信第2週の最終日、本来なら12月5日(日本時間では12月6日の早朝)に初日を迎えるはずだった「ドン・ジョヴァンニ」の新演出が配信されていますので、ここで取り上げることにしました。キャスト以下は以下の通りです。

モーツァルト/歌劇「ドン・ジョヴァンニ」
ドン・ジョヴァンニ/カイル・ケテルセン Kyle Ketelsen
レポレルロ/フィリップ・スライ Philippe Sly
ドンナ・アンナ/ハンナ=エリザベス・ミュラー Hanna-Elisabeth Muller
ドンナ・エルヴィーラ/ケート・リンジー Kate Lindsey
ドン・オッターヴィオ/スタニスラス・ド・バルベラク Stanislas de Barbeyrac
騎士長/アイン・アンガー Ain Anger
ツェルリーナ/パトリシア・ノルツ Patricia Nolz
マゼット/ペーター・ケルナー Peter Kellner
指揮&チェンバロ/フィリップ・ジョルダン Philippe Jordan
演出/バリー・コスキー Barrie Kosky
舞台装置及び衣装/カトリン・レア・ターグ Katrin Lea Tag
照明/フランク・エヴィン Franck Evin

「ドン・ジョヴァンニ」は、これまではジャン=ルイ・マルティノティ演出の舞台が配信されてきました。当ブログではアーカイヴ42として3公演を纏めて紹介しています。
当然ながら今回の初舞台は、キャストも一新されたもの。オペラ通でもない私は、ドンナ・エルヴィーラのケイト・リンジーと騎士長のアイン・アンガー以外は、映像としても録音としても初めて接する歌手たちではないかと思います。その意味でも極めて新鮮なドン・ジョヴァンニでした。

ロックダウン中ということもあり、当然ながら無観客。上演途中での拍手はありません。しかし、上演のタイムスケジュールは実際の上演と同じ。第1幕と第2幕の間に休憩が入ります。全体で3時間半。
演出の細部には触れませんが、基本的にはシンプルなもので、大掛かりで現実的な舞台装置は使われていません。冒頭でドン・ジョヴァンニと騎士長が争う場面でも武器は登場せず、そこらに転がっている石での決闘。これは第2幕でㇾボレロと入れ替わったドン・ジョヴァンニがマゼットを打ちのめす場面でも同じ。

石と言えば、「ドン・ジョヴァンニ」は別名「石の客」というタイトルでもオペラ化されているほどで、武器以外にも石が小道具として意味を持って使われているように感じました。
小道具がほぼ石だけなの比べて、場面ごとに変わる歌手たちの衣装が見所かも。ドン・ジョヴァンニはもちろん、7人の主役たち(騎士長は除く)が身に着ける衣装が高画質画面に良く映えています。舞台と衣装を担当しているベルリン生まれのターグという方は、ステージ・デザインの国際的コンテストで優勝したこともあるそうで、去年はドイツの批評家たちが選出するオペルンヴェルトのセット・デザイン・オブザ。イヤーを受賞した由。必見の舞台でしょう。

今回の「ドン・ジョヴァンニ」、一日だけの配信なのか数日間視聴できるのかは分かりませんが、気が付いた方、今直ぐに見ておかれることをお勧めします。

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