ウィーン国立歌劇場公演「ホフマン物語」

今日(9月16日)、月曜日から3日間配信されるウィーン国立歌劇場のホフマン物語を見ました。
今年はオッフェンバックの生誕200年に当たるので、それを寿ぐ意味もある公演。中々に複雑、深みもあるオペラで、一度見ただけでは演出の意味合いまで深く理解するのは難しいかもしれません。

ホフマン/ディミトリー・コルチャック Dmitry Korchak
ミューズ/ニクラウス/ガエレ・アルキス Gaelle Arquez
リンドルフ/コッペリウス/ミラクル博士/ダペルトゥット/ルカ・ピサローニ Luca Pisaroni
アンドレス/コシュニーユ/フランツ/ピティキナッチョ/ミヒャエル・ローレンツ Michael Laurenz
オランピア/アントニア/ジュリエッタ/ステッラ/オルガ・ペレチャッコ Olga Peretyatko
スパランツァーニ/イゴール・オニシュチェンコ Igor Onishchenko
クレスペル/ダン・パウル・ドゥミトゥレスク Dan Paul Dumitrescu
ペーター・シュレミール/クレメンス・ウンターライナー Clemens Unterreiner
ルーテル/アレクサンドル・モイシウク Alexandru Moisiuc
ナタナエル/ルカニョ・モルケ Lukhanyo Moyake
ヘルマン/サミュエル・ハッセルホーン Samuel Hasselhorn
アントニアの母の声/ゾルヤーナ・クシュプラー Zoryana Kushpler
エピローグに登場する3人の女性/オルガ・ペレチャッコ Olga Peretyatko, マルガリータ・グリツコヴァ Margarita Gritskova, ディアナ・ヌルムカメトヴァ Diana Nurmukhametova
指揮/フレデリック・シャスラン Frederic Chaslin
演出/アンドレイ・セルバン Andrei Serban
舞台装置/リチャード・ハドソン Richard Hudson
振付/ニキー・ウォルツ Niky Wolcz

オッタヴァ・テレビの解説では、今回の公演ではホフマンが心を寄せた4人の女性を噂のペレチャッコが一人で歌うというのが最大の見どころとのこと。コロラトゥーラからドラマティックな声域まで幅広く歌うヒロインに注目しましょう。
なおウィーンでは9月5・8・11・15日に公演があり、ライブストリーミングされるのは最終日、15日の舞台です。

当初の発表ではホフマン役は韓国のテナー、ヨセフ・カン Yosep Kang と発表されていましたが、最初からダブル・キャストだったのか、突然の交代劇だったのか、ロシアのコルチャックに替わりました。ペレチャッコとコルチャック、何とも発音し難いロシア人コンビのホフマン物語です。二人は夫々自身のホームページを開設していますから、詳しいことは各自検索してください。

ホフマン物語が一筋縄ではいかないのは、様々な版があること。加えて近年になって新資料や楽譜が再発見され、如何様にも筋書きを組み立て直すことができる点にもあるでしょう。
私はこのオペラにあまり詳しくありませんが、サッと一通り見た限りでは、ホフマンが愛した女性3人による三つの幕にプロローグとエピローグが付くもの。3っつの幕はオランピア、アントニア、ジュリエッタの順で、5幕構成と見ても良いのでしよう。アントニアの次にジュリエッタということで、ドーヴァー廉価版で手に入るシューダンス社のものではなく、アルコア社から出版されているエーザー版を基にした演出と考えて良さそうですね。

ホフマン物語は、版の違いなどに拘らず、オッフェンバックの美し音楽、セルバンの創意に満ちた舞台を素直に楽しみましょう。
話題になっているペレチャッコは、3つの幕の主役だけではなく、プロローグとエピローグでもステッラとして登場します。特にプロローグでは完全な黙役として登場しますから、知らないと見逃してしまうかもしれません。一度通して見た後、最初から見直してみることをお勧めします。

ホフマンのコルチャックは3年ほど前、日本でゲルギエフ指揮のエフゲニ・オネーギンでも歌っていましたから、ファンも多いでしょう。歌手としてだけでなく指揮者としても活躍していて、今後もその才能に注目。
ミューズとニクラウスの二役を歌うアルキスも素晴らしく、この美女にも目が行ってしまいました。アントニアの幕でコミカルなフランツの歌を聴かせるローレンツ、ジュリエッタの幕で「まわれ、まわれ、雲雀を捕らえる鏡の罠よ」を歌うピサローニも存在感充分。

これまで何となく見ていたホフマン物語ですが、ジュリエッタ幕の最後でホフマンがシュレミールを剣で倒す場面がありますね。ここ、オペラの隠れテーマでもあるモーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」でドン・ジョヴァンニが騎士長を刺す場面と同じ。ホフマンが女たらしであることもドン・ジョヴァンニと重なっているということに、今回の公演で初めて気が付きました。

エピローグでは合唱パートを3人の女性が歌い、その一人がステッラ役のペレチャッコでもあります。他の2人はグリツコヴァとヌルムカメトヴァ。既にこのライブ・ストリーミングでも夫々オテロのエミーリア、ドン・カルロの天からの声を任されている二人で、豪華キャストと言えるでしょう。ウィーンの意気込みが感じられます。
全体で4時間を要する長丁場ですが、適宜休みながら、時には繰り返して試聴できるなど、オッタヴァ・テレビならではのライヴ・ストリーミングに感謝しましょう。

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