今日の1枚(89)

フルトヴェングラー指揮によるオペラ全曲、第2弾はワーグナー/楽劇「ワルキューレ」です。東芝EMIの TOCE-3764/66 の3枚組。
1954年9月28日から10月6日にかけてウィーンのムジークフェラインザールで収録されたモノラル録音で、フルトヴェングラー最後の正規スタジオ録音です。
最後のものだけあって、録音としては最高水準の出来栄え。フルトヴェングラーの録音を一つだけ選べと言われれば、「ワルキューレ」を挙げるでしょう。
英EMIはフルトヴェングラーによる「ニーベルンゲンの指輪」4部作の全曲録音を予定していましたが、巨匠の死によって実現したのは「ワルキューレ」だけ。因縁の名録音です。
歌唱はもちろんドイツ語。対訳は付いていません。
今日は第1幕ですが、この幕で登場する歌手は3人だけです。即ち、
ジークムント/ルートヴィヒ・ズートハウス(テノール)
ジークリンデ/レオニー・リザネック(ソプラノ)
フンディング/ゴットロープ・フリック(バス)
ズートハウスは1906年12月12日生まれのドイツのテノール。録音の時は47歳。当盤のブックレットでは1957年からウィーン国立歌劇場とも契約と書かれていますが、これは間違い。正しくはウィーンでは1948年から歌い始め、1971年まで出演していました。
特にトリスタンとジークムントを十八番にし、フルトヴェングラーが絶賛したテノールです(フルトヴェングラーのトリスタンでも主役を務めています)。1971年9月7日にベルリンで死去。
リザネックは1926年11月14日生まれのオーストリアのソプラノ。録音の時はまだ27歳の若手でした。ウィーンでは正にこの1954年から歌い始め、1992年までの凡そ40年間所属していました。
戦後のバイロイト音楽祭の開幕の時にジークリンデを歌っている適役。特に高音の豊かさと強さに定評がありました。1998年3月7日にウィーンで死去。
フリックは前回の「フィデリオ」のロッコ役で紹介しました。ワーグナーの諸役ではフンディングの他、ハーゲン、グルネマンツ、ダーラント、ポーグナー、ファゾルトなどどれもピッタリ(彼のオペラ・デビューはオランダ人のダーラント)。
最初に書いた通り、フルトヴェングラーの最優秀録音。キャストも素晴らしく、現在でも正規録音のワーグナーでも屈指のディスクでしょう。
第1幕は1枚目のCDに切れ目なく収録されていて気持ち良く聴けます。全3場からなりますが、第2場はトラック4から、第3場はトラック8から選択して聴くことができます。全体は66分。
参照楽譜
オイレンブルク No.908

 

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