東京シティフィル・第214回定期

14日の金曜日、東京オペラシティコンサートホールで行われた、東京シティ・フィルハーモニックの定期演奏会を聴いてきました。次のもの。

ブゾーニ/喜劇序曲 作品38
ヒンデミット/ウェーバーの主題による交響的変容
~休憩~
コルンゴルト/交響曲 嬰へ長調 作品40
指揮/ヴェルナー・アンドレアス・アルベルト
コンサートマスター/戸澤哲夫

東京シティフィルもたまにしか聴きません。気持ちとしてはもっと支援したいオケなのですが、財布は一つ。時々、プログラムを選んで聴く程度です。申し訳ない。
で、今回選んだのは、当然ながらコルンゴルトですよ。これ聴かずに何を聴くんですか、エッ。

ご存知の通り、コルンゴルトは今年が没後50年。つい先日が命日だったんですが、どこもその作品を取り上げる気配なし。見つけた唯一の機会がこれ、しかも最もナマで聴きたい交響曲。シティフィルの快挙です。
それにしてもお客さん、少ないですねぇ。ホント可哀相。東京のクラシック・ファンて、何に関心あるの? 相も変わらず商業主義に乗って人気先行のアーチスト、いわゆるミーハー受けする音楽だけなんでしょ。もーいいです。そんな客は来なくたって、鼾やフライング拍手などされるよりずっとマシですからねぇ~、だ。

さて期待のコルンゴルト、素晴らしいシンフォニーですね。何ともカッコイイ。1時間近くかかる、正真正銘の4楽章から成る本格的交響曲です。しかし皮肉なことに、そのことがコルンゴルト無視の世評の原因になってしまったのですね。
19世紀後半に生を受け、20世紀前半に活躍しながら2度の世界大戦に翻弄され、音楽そのもの以外の要因で評価を定められ、不遇のうちに生涯を終えた作曲家が実に多いのです。
マーラー、リヒャルト・シュトラウス、シェーンベルク、ベルクなどは正当に評価されているかもしれません。それも最近のことですけどね。
ハンス・ロット、ツェムリンスキー、シュレーカー、レーガー、フランツ・シュミット、プフィッツナー、ヒンデミット、シュールホフ等々が、その犠牲者たち。その一人がコルンゴルトです。

このコンサートに着目したのは、私自身もごく最近のこと。アカデミアで交響曲のスコアを見つけ、衝動買いしたのが始まりです。スコアを見ているうちに音が聴きたくなった。
店頭で見つけたのがシャンドスのコルンゴルト・シリーズの1枚。エドワード・ダウンズ指揮のもの。聴いてみると、どうして素晴らしいじゃありませんか。そこでシティフィルに電話し、取れたチケットが1階19列のど真ん中という両席、しかもプラチナでシルバー割引。ギリギリになつても理想的な席が手に入るシティフィル、気持ちは複雑ですが、感謝してます。

全曲約1時間、あっという間でした。退屈なんかする箇所ありません。何かが始まる、という期待に満ちた第1楽章。ホルンの活躍するトリオ部が感情を高ぶらせる第2楽章スケルツォ、長大にして悲劇的、かつスケールの大きい第3楽章アダージョ、華やかながら構成的にも見事なフィナーレ。
“映画音楽みたい”という感想にも理はありますが、アンドレ・プレヴィンの至言、“コルンゴルトがハリウッドのようだったのではなく、多くの映画音楽が、コルンゴルトのようになりはじめていた”ということなのです。
かつての音楽批評家の論調は、今や見直す時が来ています。これ、私の確信。

指揮したアルベルトは初めて聴く、見る人。指揮棒を持たず、しっかりスコアを置いて指揮します。1935年にドイツのヴァインハイムで生まれたと言いますから、70を二つほど出た人。
指揮はカラヤンに師事したそうですが、まるで派手なところはありません。むしろ不器用な印象ですが、音楽そのものは真に誠実で、シティフィルには合っていると思いました。
1983年から1990年までクイーンズランド交響楽団(オーストラリア)の音楽監督を務めていたそうで、CDも同オケとコルンゴルト、ヒンデミット、プフィッツナー、ジークフリート・ワーグナーの各管弦楽全集を録音している由。この日のプログラムは、いわばスペシャリストの一押しなのでしょう。実にポイントを外さない、ドッシリした解釈です。

シティフィルも大健闘。少ない聴衆からも熱心な喝采が贈られていました。
最初のブゾーニは、解説(舩木篤也)によれば、一晩でモーツァルトのように書き上げた作品とか。特定の喜劇につけた音楽ではなく、純粋なコンサート・ピースだそうです。
実はこの曲、はるか昔にスコアを手に入れて持っているのですが、音で聴いたのは全くの初めて。帰ってから改めて楽譜を引っ張り出してきました。コンサート・オープナーとしてもこういう作品を紹介してくれ、この指揮者には感謝するばかりですね。

ヒンデミットは有名な作品。あれ、と思うほど普段とは違う響きが彼方此方で聴こえました。指揮者の表現力故なのか、オケのバランス故なのかは不明。前者だと思いますが・・・。
この日も車で帰宅しましたが、駐車場はガラガラ。車組は我々の他に1組あっただけです。前日のN響とは、あまりにも違う。

 

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