フェスタ2008・東京シティフィル
平日夜のコンサートですが正味1時間10分、休憩はありません。定時に退社して川崎に向かいます。
ホールに着いても人影疎ら、今日は入らんなぁ、という印象です。実際に客席は2割程度の入り。P席は最前列しか埋まっていません。
プーランク/演奏会用組曲「模範的な動物たち」(台本/矢崎彦太郎)
プーランク/「小象ババールの物語」(台本/ジャン・ドゥ・ブルノフ、訳/矢崎彦太郎)
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
指揮/矢崎彦太郎
朗読/中井美穂
コンサートマスター/戸澤哲夫
フェスタサマーミューザの東京シティフィルは、常任の飯守泰次郎と首席客演の矢崎彦太郎が交互に振っているようですね。今年は矢崎の担当。得意とするフランスものからプーランクの朗読付き作品2曲という、なかなか洒落たプログラムです。
今年のプロでは最も聴きたかったものの一つですが、一般的にはほとんど注目されてないみたいですね。う~ん、世間の人たちの関心は良く判らん。
さすがに取り上げられる機会が少ない作品。ほとんど曲目解説らしきものが掲載されていない総合プログラム誌でも、これだけは丁寧な解説が書かれていました。マエストロ矢崎の力作。この部分だけは永久保存版でしょう。
特に「模範的な動物たち」は貴重。これはナチ占領下のパリで初演されたバレエ作品を管弦楽組曲に編み直したもので、組曲版はスコアで確認できるのですが、オリジナルのバレエがどんな内容だったか、今回の矢崎メモで初めて知ることが出来ました。
組曲版は、「夜明け」「恋するライオン」「中年男と二人の愛人」「死ときこり」「二羽の雄鶏」「昼の食事」からなっています。原作というか、ベースになっているものはラ・フォンテーヌの寓話集。
組曲にするにあたり、プーランクは2番目と3番目の寓話をカットしています。今回、それが何であるかが判りましたよ。それは、2番目が「熊と二人の友」、3番目は「蝉と蟻」の由。「夜明け」と「昼の食事」は、夫々前奏と後奏に当たるんですね。
組曲版はかなり大掛かりなオーケストラを使います。大雑把に言えば3管編成。本来は朗読は入らないのですが、今回はマエストロ自身が書き下ろした台本を中井美穂のリードで楽しむ趣向。これにより寓話の内容が誰でも判りますし、実に丁寧な良い仕事、と感心しました。それは演奏にも表れていましたね。
この作品、物語を音で描くようなものではなく、夫々の寓話のエッセンスを音楽で表現したもののように聴こえました。
ドイツ軍占領下のパリで書かれたこと、「寓話」とは人間を動物に置き換えた教訓話であることなどを考え合わせると、この作品は表面的には描かれていない「訓話」も含んでいるのではないでしょうか。
そう考えると、タイトルの Les animaux modeles は「模範的」とか「典型的」というより、ズバリ「モデルとして描かれた」という訳のほうが良いんじゃないか、とも思いました。
機会を見つけてラ・フォンテーヌの寓話集を読んでみましょう。
演奏のコンセプトは後半の「ババール」も同じ、チェスター版のスコアには台本の全てが書いてあるわけではなく、長い台詞は途中がカットされています。
今回の矢崎訳版の朗読によって、私は初めて全貌を日本語で聞くことが出来ました。矢崎彦太郎氏を改めて称えたいと思います。ブラヴォ!
中井の朗読も含め、演奏は極めて真面目なもの。スコアに書かれている指示、例えば冒頭に“台本作者、作曲家の名前をキチンと告げなければいけない”という文言にも忠実であったばかりか、“管弦楽編曲はジャン・フランセ”という一言も付け加えていました。(ある解説でオーケストレーションはイベール、という誤植を見て愕然としたこともあります)
時にもう少し軽妙洒脱な個所があっても良いかな、と感ずる部分もありましたが、それも不満にはならず、真摯な姿勢と感じられたのは正にこのオケ、指揮者の特質だろうと思慮します。
唯一最後に中山が“これでお終い”と、やや吹き出し気味に宣言して客席からも笑いが漏れたのが、ご愛嬌でしたね。この一言だって、プーランクの譜面には“Fin”という台詞が書いてあるんですから、正統と言えるのです。
数少ない聴衆の中に飯守泰次郎氏の姿を見つけたのは嬉しいこと。いつもとは限りませんが、矢崎の回には飯守が、飯守の回には矢崎が聴きに来ている。こういうオケ、東京ではここだけじゃないでしょうか。
2割ですか。
オケとプログラムからして売れないだろうとは思ってましたが。
2割とは。半分くらいは入るかな、と思ってました。
フェスタですからね、定期ならともかく。
では、また。
恐らくコメントさせていただくのは初めてだと思いますが、いつも楽しく拝見させていただいております。
私もこの演奏会に行きました。肩の力を抜いて楽しめるすばらしい演奏会でしたね。
ちなみに、中井さんが「おしまい」と言った際に客席から笑いがこぼれたのは、当ブログに綴ったような理由によるものです。もしご覧いただければ幸いに存じます。
それでは、これからもどうぞ宜しくお願いいたします。
prelude 様
初めまして。プログ拝見させて頂きました。「おしまい」の事情、そうだったんですね。リハーサルは聞かなかったので・・・。
実は、客席の飯守泰次郎が隣の方と親しくお話されている様子でしたので、お知り合いの方かな、と思っていました。マエストロはいろいろな機会でお話を伺いましたが、ホントに気さくな方です。指揮振りも正に人柄が出ていると思いますね。
今後もよろしく。