クラシック・レース本番前に

昨日は日本全国、いや世界中が5月1日でした。5月1日と言えばメーデーというのは些か野暮かな。歳がばれる。
フランスでは“May Day”とは言わずに“Fete du Travail”、労働者の祭典と呼んでます。当然ながら国の祭日。昨今の経済恐慌でお祭り騒ぎにはならないでしょうが、この日はサン=クルー競馬場で二つのパターン・レースが行われるのが最近の伝統でもありますね。
その第1弾、クレオパトラ賞(GⅢ、3歳牝、2100メートル)は勿論エジプトの女王の名を冠したレース。1952年創設のオークス・トライアルとしての意味を持っています。
トライアルと言いながら、クレオパトラ女王となってオークスも制したのは1976年のポーニーズ Pawneese だけ。現実にはあまりオークスの参考にはなりません。
今年は7頭が顔を揃え、前走のロンシャンで2着に4馬身差で圧勝したボード・ミーティング Board Meeting が1番人気(7対10)に支持されました。
レースはエクサレント・ガール Excelent Girl の逃げで始まり、直線で本命馬が抜け出すかに見えた瞬間、逃げ馬が左に寄れてボード・ミーティングの進路が狭くなってしまいます。
3番手を進んだフライング・クラウド Flying Cloud が上手く内を衝いて抜け出し、粘り込むエクサレント・ガールに1馬身差を付けて優勝。
ボード・ミーティングは首差及ばず3着で入線しました。
このレースは審議になり、結局2着と3着の着順を入れ替えることで確定しました。
優勝したフライング・クラウドは先月ロンシャンでデビュー勝ちしたばかり。これで2戦2勝と、クラシック候補に浮上してきました。
オーナーは彼のシェイク・モハメド殿下。調教師はアンドレ・ファーブル。ファーブル師はこれが今シーズン最初のパターン・レース制覇となります。
騎乗したのはマキシム・グイヨン Maxime Guyon くん、彼にとってはパターン・レース初優勝という記念すべき一日となりました。
ファーブル師はクレオパトラ賞を得意にしていて、これが何と10勝目。フライング・クラウドは英オークスを目指す意向であることが公表されています。
もう一つの5月1日の目玉はミュゲ賞(GⅡ、4歳上、1600メートル)。フランス通ならニンマリするところでしょうね。
5月1日は「労働者の祭典」であると同時に、「すずらんの日」でもあります。“Fete du Muguet”。そう、「ミュゲ」とはフランス語で「すずらん」のこと。英語なら Lily of the Valley 、谷間の姫百合ですな。
フランスでは、5月1日は恋人にすずらんを贈る日であり、贈られた人は幸せになるという。メーデーより余程気が利いていると思いませんか。
正に「すずらん賞」に相当するミュゲ賞、現在の条件に落ち着いたのは1967年のことで、1972年からGⅢに、1995年からはGⅡへと格上げされてきました。古馬マイラー戦線の重要なステップ・レースです。
今年は7頭が出走。クレオパトラ賞と良く似た結果になっています。
去年のこのレースの覇者で、先月も同じコースと同じ距離のエドモン・ブラン賞に勝った(3月30日の日記参照)グリ・ド・グリ Gris de Gris が6対4で1番人気。
その本命馬が2着に終わった、という所がクレオパトラと同じですね。
勝ったのは、これもクレオパトラ同様3番手から内を衝いて伸びたヴェルティジヌー Vertigineux 。
終わって見れば昨秋のパース賞(これもサン=クルーだ)と同じ結果。
レースは古豪ラシンガー Racinger が出遅れ。にも拘らず強引にハナを奪って逃げましたが、直線で一杯。一旦は本命馬が先頭に立ったのですが、直ぐにヴェルティジヌーが抜け出すという展開。
1着と2着の着差は4分の3馬身、3着には2馬身半差でドイツから参戦したプレシャス・ボーイ Precious Boy が続いています。
勝馬の調教師はデュフレーシュ女史 Carole Dufreche 、騎手フィリップ・ソゴーブ Philippe Sogorb はヴェルティジヌーの父ノンブル・プレミエ Nombre Premier に騎乗してシェーヌ賞(GⅢ)に勝った経験もあるヴェテランです。
どちらもフランスのローカル競馬で活躍しているコンビ。中央場所でGⅠ制覇の可能性も膨らんできたようです。

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