日本フィル・第247回横浜定期演奏会

これは3日前、5月9日(土)に聴いたコンサートのレポートです。記憶が薄れつつありますからもっと早く書くべきなんですが、時間がある故に時間が無い、というパラドックスに陥っていますね。う~ん。
日本フィルについては某経済誌で特集されたり、国営テレビが経営危機の現状を報道したりと、いろいろ気になるニュースが伝わってきます。
東京にはプロのオーケストラが8団体ありますが、大きなスポンサーの支えが無いのは東京シティフィルと日本フィルだけ。
テレビ報道では、昨今の急激な景気減速で数少ない支持団体も撤退、オーケストラとしても1年先、2年先が全く見えないというレポート。
最近のチラシにも「急告」という囲みで定期会員券の値下げを打ち出しています。
会費を値下げして集客を増やそうという戦略ですが、極めて危険な賭けでもありましょう。
長年日本フィルを聴いてきた小日記としても大いに気になる現状ですが、こちらも爪に火を灯すような暮らしを送っている年金生活、応援できる努力にも自ずと限界があります。
我が音楽道楽を振り返るに、コンサート通いは単に「打算」だけで選択しているのではない、ということに思い至ります。大枚を叩くのだから上手い演奏を聴きたい、有名な団体を聴きたい、評価の高い音楽家を聴きたい、という打算。
私の場合は、演奏会の選択にはむしろそれ以外の要素が大きいようです。
日本フィルを応援するのはそういう信念から、と言うとオーケストラには失礼に当たるかも知れませんが、私のような人間が積極的に支えたいと思うのは御三家のような裕福な団体ではありません。
という変な理屈を付けて、一回券を購入して横浜みなとみらいホールに出掛けました。上記の理由で最も廉価の席、3階の天上桟敷です。曲目はこれ。
武満徹/系図(ファミリー・トゥリー)~若いひとたちのための音楽詩
     ~休憩~
R.シュトラウス/家庭交響曲
 指揮/沼尻竜典
 語り/蓮佛美沙子(けんぶつ・みさこ)
 アコーディオン/大田智美
 コンサートマスター/江口有香
 ゲスト・チェロ・ソロ/上森祥平
横浜定期は集客が良い、と聞いていましたが、3階席は空席が多かったですね。日本フィルの現状を見るようで辛かったのも事実ですが、曲目に馴染みが無い所為か、集客力のない指揮者故なのか、世間の財布の紐がきつくなっているためか・・・。
初めて昇った3階席について言えば、やはりここは音響的に具合が悪い。音量にはそれほど不足感はありませんが、弦の音が物足りないし、音のブレンドも不満。各楽器の音がバラバラに聴こえて来る印象です。天上が低くて音に余裕が無い。
オーケストラの所為、とばかりは言えないと思います。
ということで、演奏の感想についてはほとんど触れられません。ただ東京定期でいつも聴く日本フィルに比べて、今日はアンサンブルの練り込みが若干不足しているように感じられました。作品の難度もあるでしょうが、このオーケストラと指揮者ならもっと出来る筈。
プログラムは沼尻特有の拘ったものですね。「家庭交響曲」と組み合わせるのに、シュトラウスの小振りな作品ではなく、同じ「家族」を扱った東洋の作品。洋の東西で「家族」というものに対する概念がかなり異なる、という面も聴かざるを得ない選曲です。ここに大拍手。
プログラムがこうですから、どうしても聴きどころはその点に集中。
結論を言えば、やはり武満=東洋=草食系、シュトラウス=西洋=肉食系、ということに落ち着きそう。
私的な好みでは、やはり草食系がいいなぁ~。
ただ作品の質としては、どちらも夫々の代表作とは言えないと感じたのも事実。どちらも所謂「名曲」という王道を歩むには役者不足の作品、というのが私の結論でした。
次はラザレフのブラームスですね。もう一度3階で聴いてみましょう。打算じゃなく。

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