新日本フィル・第448回定期演奏会

別に気が触れたわけではありませんが、すみだトリフォニーで新日本フィルの定期を聴いてきました。二日間行われる定期(トリフォニー・シリーズ)の二日目。
私は新日本フィルの定期会員ではありませんし、単発で聴くこともほとんどありません。年に1回程度何かの機会で接するだけですから、普段と比較してどうだったかの感想は持てません。
それでもこの会だけは聴こうと思ったのには理由がありましてね。
ずっと昔、子供の頃のこと。
クラシック音楽を聴き始めた当時は、レコードより楽譜の方がずっと廉かった時代です。レコードは高いので、スコアを買ってきてラジオで音楽を聴いていましたっけ。
あの頃ヤマハに並んでいたベートーヴェンやブラームスのスコアはユニヴァーサル版、いわゆるフィルハーモニア・シリーズのものが圧倒的に多かったものです。ですから今でも私が使っているベートーヴェンとブラームスの交響曲は、全部フィルハーモニア版。
このスコア、裏表紙にカタログが載っていて、西洋クラシックの名曲がズラリと並んでいます。
その中に場違いな感じで掲載されていたのが、“Schmidt/Das Buch mit 7 Siegeln” 。一体これは何であるか? ラジオで放送されないし、レコードも無いみたいだ。ましてやナマの演奏会で頻繁に演奏されるという話も聞かない。レコード雑誌や音楽解説書にも言及が無い。
でも、天下のユニヴァーサルが広告しているんだから、きっと素晴らしい音楽には違いない。
ですから気になる「音楽」であり続けたのです。
それから45年。確か去年の今頃、チラシでこのコンサートを発見した時には、すぐさま手帳に予定を書き込んだものでした。
フランツ・シュミット/オラトリオ「七つの封印を有する書」
 指揮/クリスティアン・アルミンク
 ヨハネ/ヘルベルト・リッペルト
 ソプラノ/増田のり子
 アルト/加納悦子
 テノール/吉田浩之
 バス/クルト・リドル
 オルガン/室住素子
 合唱/栗友会合唱団(合唱指揮/栗山文昭)
 コンサートマスター/西江辰郎
新日本フィルは、定期で演奏する曲目について事前に聴きどころを紹介することを敢えて避ける方針だそうです。自分で勉強しなさい、ということ。
でも流石にこれだけは、アルミンク社長の聴きどころをネットに上げていましたし、当日もプレトークが行われました。
でもね、私の感想では、これだけじゃ不十分です。少なくとも、シュミットとその作品を理解しようという熱意のある人には事前の予習が欠かせません。
私流に何が必要かを列記すると、
①聖書の「黙示録」を読んでおくこと
②スコアに目を通し、出来ればCDを聴いておくこと
③黙示録を題材にした他の作品を聴いておくこと
④シュミットの他の作品を聴いておくこと
でしょうか。アルミンク解説も、プレトークも、当日配られるプログラムも、私にはあまり参考にはなりませんでした。
①は新約聖書の一番最後に登場するもの。かなりいかがわしい内容ですが、これは必須。その意味するところが判らなくてもいいと思います。
②は最初に書いたように、ユニヴァーサルから出ています。多少高いですが、これに目を通しておけばオラトリオの全体像は凡そ掴めます。
録音は無理に聴くことはありません。大体レコードには収まりきらない音楽ですから、聴いても無駄。むしろ聴かない方が良いと思います。
③例えばリャードフの「黙示録断章」。これは黙示録の第10章をそのまま管弦楽化したもの。
更にレスピーギの「教会のステンドグラス」の第2楽章。こちらは美術で扱われたものからのインスピレーションですが、題材は黙示録の第7章と第8章です。
これらを聖書のテキストと見比べながら聴くと、「黙示録」そのものへの関心が高まります。
(私は幸いにも両曲ともナマ演奏で聴く機会がありました)
④一つだけ挙げれば、第4交響曲でしょう。
以上の予習を経た上でシュミットの最後の大作を聴くと、オラトリオの全体も見えてくるし、アルミンクの意図も伝わってくるように思われました。
それより大事なのは、なぜこの曲がシュミットの地元ウィーンでも滅多に演奏されないのか、今後大復活があるのか、も何となく判ってくること。
演奏そのものの評価、感想は差し控えます。ただヨハネ役のリッペルト、シュミットの指示ではヘルデン・テノールとなっていますが、私にはチョッとイメージとは違うように感じられました。
演奏が終わった後のオッソロシク長い沈黙。これにも違和感あり。
大音量で終止するにも拘わらず、アルミンクも終了の姿勢をとらないし、聴衆もコトリとの音も立てない。まるで宗教儀式みたいな胡散臭さが感じられました。
拍手が始まって早々に退散。
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