蓼科でエクを聴く

一昨日の日曜日のこと。蓼科の山荘でクァルテット・エクセルシオを聴いてきました。
エッ、何それ? と思われるでしょうねぇ~。
簡単なチラシの文句を引用すると、「チェルトの森 アフタヌーン・コンサート」~蓼科の隠れ山荘で聴く“弦楽四重奏”の響き
素敵な山荘でワインと本格的な弦楽四重奏の演奏をともに楽しむ贅沢な時間を過ごしてみませんか! という添え書きもあります。
私共がこれを知ったのは、エクのNPO法人設立総会でのこと。活動計画の中で紹介されましたし、総会後の懇親会で西野(第1ヴァイオリン)ママから詳しく紹介され、ご母堂を通じて申し込んでおきました。
蓼科にある山荘「むさし庵」は、某大手建設会社が区画整理した別荘地区にあるため、一切の広告宣伝活動は禁止されています。
従って情報誌等には掲載されず、知る人ぞ知る。恐らく「むさし庵」関係者とエク・プロジェクト諸氏意外には知られざる催しだったでしょう。
クァルテット・エクセルシオのホームページには紹介されていましたから、これで知るという手段もありましたがね。↓
http://www.quartet-excelsior.jp/
で、むさし庵。もちろん私共も初めての体験です。
中央道を飛ばして南諏訪で下車。ナビを頼りに「目的地周辺」までは、渋滞にもよりますが、4時間弱でしょうか。
周辺までは問題ないのですが、別荘地区内の道路は複雑に入り組んでおり、目的の山荘を「発見」するのには骨が折れます。何しろ会場への案内掲示もご法度のため、自分で勝手に探さなければいけません。
所番地を頼りにウロウロしていると、何処かから弦楽器の音が・・・。
折り良く西野ママと遭遇、駐車スペースを紹介してもらって辿り着きました。
演奏会の開始までには1時間以上の余裕があったので、山荘の内部を見学させて頂きます。↓
http://www.musashian.com/
お話では、豪雪地帯の福井の古民家など4棟を解体し、その材を用い、新たに設計した庵を宮大工が8年がかりで建築したとか。釘を使わずに木材を組み上げた構造。
梁などの巨木はもちろん、家具調度の類も古のものをそのまま利用しており、建築や家具に興味のある方には必見の物件でしょう。
開幕前の時間を利用して、内部の写真をタップリと撮らせて頂きました。(その様子はいずれ家内がプログで紹介するでしょう。関心がありましたら、ブログを自分で探して見て下さいな)
床はミシリともしない創り、音響的にも最高の空間です。弦楽四重奏を楽しむには理想的な条件と申せましょうか。
当初30席で計画したものが、口コミで噂が伝わり、最終的には40席。お値段も少し割安になっての開催です。
三々五々集まってきた人たちは、多くが別荘界隈に住まわれている方。仕事をリタイヤされて別荘生活を送っているのでは、と思しき年配の上品な善男善女です。中にチラホラ、私共のように東京から馳せ参じた酔狂者も、という構成。
プログラムは、
モーツァルト/アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク
ラヴェル/弦楽四重奏曲
     ~休憩(10分ほど)~
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第9番「ラズモフスキー」第3番
定刻、チェロの大友氏一人が登場して着席。そのまま弓を構えます。チューニングでも始めるのかな、と思っていると、ロビー全体に弦の柔らかい音が。
そう、ボッケリーニの「マドリッドの帰営ラッパ」の一節に乗って、いや弾きながら女性3人組が静々と登場、という趣向です。これは受けましたねぇ~、いつものエクとは一味違うぞ。
演奏そのものは、チラシにある通り本格的な弦楽四重奏。
別荘地でのコンサートなら、四重奏の名曲抜粋に映画音楽や民謡を挟んで楽しんでもらう、というのが一般的かもしれません。
しかしプログラムを見ても判るように、エクは本気でした。本気も本気、東京のホールでの演奏では味わえない眼前演奏の迫力と緊張感。
これを山荘の素晴らしい音響が豊かに包み込んで、正に建物自体が楽器と化すのでした。
「鳴りに鳴り 揺らぎに揺らぐ ラズモフスキイ」
エクの背景は蓼科の緑。それまでパラついていた雨が止んで薄日が射してきたようで、モーツァルトが始まると周囲のエゾゼミも合奏に加わる五重奏。
流石に圧巻のベートーヴェンでは蝉も沈黙、ジッとラズモフスキーに聴き入っていたようです。
個人的にはラヴェルが印象深いもの。この作品は同じテーマが各楽章に登場する循環形式が用いられていますが、この環境で聴くと、四つの楽章があたかも定点の春夏秋冬を描いているように感じられるのでした。
第1楽章は穏やかな春。第2楽章はピチカートが乱舞する諧謔の夏。秋の第3楽章では虫や鳥が啼く。そして5拍子の厳しい第4楽章は厳冬の雪と氷、そこに主題が回帰する時、春の兆しが頬を優しく撫でる。
コンサート終了後、この感想を4人に伝えたら、思わず拍手されてしまいましたワ。
当然ながらアンコールも披露され、山田耕筰の「からたちの花」。これがまた実に感動的な逸品で、メロディーを奏でる第1ヴァイオリンが心なしかウルウルしているような雰囲気。
初めての試みは大成功でした。エクの“本格的な弦楽四重奏をもっと身近に、たくさんの方に聴いてもらいたい” という活動に新たなページを加えたのは確実でしょう。
終了後は会場を隣の食堂に移し、ワインと美味なる摘みを肴に音楽談義。
我々は宿泊地の霧が峰に移動するため5時で会場を辞しましたが、まだ宴はたけなわ状態でしたね。
これは定期的な催しにすべきでしょ、という提案。むさし庵の皆さんもエク関係者も同意されていました。
このコンサートを勝手に「第1回エク蓼科音楽祭」とでも名付けておきましょうか。
偶然にも翌日、霧が峰の車山方で遭遇した参加グループの皆さんもエクの素晴らしさを賞賛。是非来年もお会いしましょう、ということで盛り上がりました。
いよいよエクの蓼科征服が始まります。
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