へクソカズラ

今日も蔓植物です。
素人考えですが、蔓を絡ませて成長する植物は、他の植物や垣根などに取り付いて春から夏に成長し、夏の終りから秋にかけて花を付けるものが多いような気がします。
朝晩に虫の音が目立つようになっていた此の頃、そうした蔓植物の花が目に付くようになってきました。
へクソカズラもその一つ。
これは先ず名前で損をしている植物ですね。
へクソカズラ、漢字で書くと「屁糞蔓」とも「屁臭蔓」とも。屁糞というのは、もちろんこの植物がいやな臭いを持っているからですが、花の匂を嗅いでも何も感じません。
あくまでも葉や果実を揉んだり潰したりした時に漂うもの。
嘘だと思ったら、自らの手を汚して葉を揉み扱いてご覧なさい。その名前に納得するはずです。
しかしヘクソカズラの花は実に美しいものです。外が白色で、中央は真っ赤な焔の色。
こういう取り合わせの花は珍しいのじゃないでしょうか。
この色に着目して、「ヤイトバナ」や「サオトメカズラ」という別名もあります。
ヤイトバナ(灸花)は、お灸の跡に似ているからだし、サオトメカズラ(早乙女蔓)は早乙女が被る笠に見立てたもの。
へクソカズラより遥かに気が利いた命名だと思いますがね。
残念ながら万葉集では「クソカズラ」で詠まれています。
「ふじのきに 延ひおおどれる くそかずら 絶ゆることなく 宮仕へせむ」
果実は悪臭がありながら、しもやけの薬として古くから利用されてきました。
現代では「しもやけ」そのものが姿を消しつつあるようです。
学名は Paederia scandens パエデリア・スカンデンス。種名スカンデンスは「よじのぼる」という意味で、正にヘクソカズラの生態に着目したもの。
また虫の目でヘクソカズラに注目すると、ホシホウジャクという蛾がこの葉を食します。実際にホシホウジャクがヘクソカズラに産卵する光景を目撃したことがあって、その時文献に当って調べた記憶があります。
ホシホウジャクは都会でも普通に見られる蛾で、例えば今時ならアベリアをホバリングしながら吸蜜する姿に出遭えるはず。日中に活動する蛾。
同じ様にアベリアに集まるオオスカシバ(虫が嫌いな人は、必ず蜂と間違えますね)とは、微妙に時間帯をずらせているようで、昆虫の知恵に感動する一例。
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