カタバミ

道端にも庭にも、今どきの季節に最も馴染み深いのがカタバミでしょう。オキサリス Oxalis 属では既にオオキバナカタバミを紹介しましたが、日本古来のカタバミはこれ。チョッとしたコンクリートの割れ目から逞しく茎を伸ばし、地を這って生えていきます。
ハート型の3枚の葉もさることながら、黄色の小花をルーペで観察すると実に美しいものだと感心してしまいますね。

漢字では「方喰」とか「傍食」を当てるのが普通ですが、夕方になると睡眠運動によって葉の片方が欠けて見えるからだとか。
別に「酢漿草」と書く場合もあります。広辞苑はこちらを採用していますが、葉を噛むと酸味がある性質から出た当て字でしょう。学名も同じ趣向で名付けられたのは面白いところ。

私のような虫好きにとってカタバミと言えばヤマトシジミの食草。初夏、カタバミが咲いてヤマトシジミが舞う光景は、都会でも無くてはならない自然の原風景ではないでしょうか。
昔に比べてカタバミは減ってきているようにも感じられますが、カタバミもヤマトシジミもいない都会には住みたくありませんな。

どこにでもあるカタバミですが、良く見ると葉が緑のものと赤いものがあります。赤いものは特にアカカタバミと呼びますが、別種ではなく変異とのこと。
拙宅の周囲ではアカカタバミの方が優勢なように思います。

他にカタバミの仲間で紅紫色の花を付けるムラサキカタバミも野生化しています。南アメリカ原産で、江戸時代に観賞用として入ったものだそうです。

更にムラサキカタバミと似たもので、花の中央が濃い紅色になるものも良く見かけるようになりました。これはイモカタバミと言い、芋のように塊茎によって増えることからの命名。

都会で良く見るカタバミは、古来種のカタバミ(葉の赤いアカカタバミも)、ムラサキカタバミ、厚化粧のイモカタバミ、大型で茎の長いオオキバナカタバミの4種類を覚えておけば皆から一目置かれること間違いなし。

カタバミの学名は Oxalis corniculata オキサリス・コルニクラタ。種名は「小さい角がある」の意味。

序にムラサキカタバミは Oxalis corymbosa オキサリス・コリンボーサ。こちらは「散房花序の」という意味で、純粋に植物学的命名。

イモカタバミは Oxalis articulata オキサリス・アルティクラタ。「関節のある」ということ。

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