強者弱者(26)
紅葉脂の如し
東京の紅葉見頃なり、日光に後るゝと約一ヶ月、紅葉は朝日によく、夕日によく、また雨によし。晩秋の気冷かにして、雲鉛の如く、雨煙に似たる時甲武山手の車窓により、黒土の麦畑を距てゝ望む武蔵野の紅葉、宛として脂の如きを見る。
十一日、此日炉開きとて、茶人皆地炉を開く、旧暦の十月十日に当る。此頃夜来の雨暁に至りて名残なく晴れ、鳥の声霧ふかき空に冴えたるもうれし。
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「炉開き」というのは茶家の行事で、冬になって炉を使い始めることです。当然俳句の季語にもなっていて、冬。
何でも旧暦の10月朔日(ついたち)か、中旬の亥の日がこれに当たるそうですね。
この文章では11月11日が旧暦の10月10日に当る、と書かれていますが、例えば今年の例で言うと旧暦10月10日は11月26日になります。ですから今年の炉開きは11月26日。
何故ずれているのかは良く判りません。
「地炉」(ぢろ)というのは床に切った囲炉裏のこと。
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